ドイツも戦車開発を進めた様です!

 ドイツ陸軍は諜報機関から入手したフランス軍の新兵器戦車……その情報が詳細に分かりにつれて段々顔色が悪くなっていた。


「しかし、この戦車というのは使えるのかね?」


 上級将校の1人が戦車について研究している将校に問う。


「率直なことを申しますと特殊な訓練を行った砲兵が居なければ撃破が困難な兵器であると言わざる得ません」


 戦車を研究している将校は諜報機関からの情報や写真及びドイツでも試作された戦車を使って実験したところ、塹壕に対して有効な兵器であることが明らかになった。


「装甲車よりも足回りが非整地でも機敏に動くことができ、機関銃であれば防御できる防御力を備えています。これが何百両と量産されていた場合戦線を打開することも可能となるでしょう」


「それほどなのかね? しかし砲兵によって対抗可能であれば何も問題ないだろう」


「いえ、問題は砲弾を直撃させなければならない点です。動く目標に既存の大砲ですと当てる事は困難であり、水平射撃でも連射が可能かつ着弾修正が迅速にできる大砲が求められます。強いて言うならこちらも戦車を用意した方が効率が良いとまで言えます」


「ほう……同じ場所に立つということかね」


「はい、こちらが戦闘戦車計画になります」


 ドイツはフランスの戦車に対してのカウンターとして駆逐戦車を求めており、要望としてある程度の自走能力を持つこと、敵戦車を撃破できる攻撃力を持つことの2つが求められた。


 ドイツ諜報機関は優秀であり、ルークマーク1が多数の企業で製造されていることを知ると、製造工場の工員に紛れてある程度の性能を調べ上げた。


 そこでルークマーク1が約20mmの装甲で覆われていることを確認すると、将来性を見越して30mmの装甲を撃ち抜ける徹甲弾の開発と対戦車砲の開発が行われた。


 それでできたのが3.7cm対戦車砲である。


 徹甲弾を使うことで500mにて30mmの垂直装甲を貫通できる攻撃力を持ち、軽量のため素早く陣地転換することもできる。


 ただし対戦車砲として開発したために経口が小さく、榴弾を発射できない弱点があり、軟目標に対しての攻撃力は直撃させなければならないため非効率的と言われた。


 ただ軍部はまだ見ぬフランス戦車を撃破できる大砲が手に入った事に満足し、それを迅速に展開することができる戦車の開発が急ピッチで進められた。


 その結果完成したのがLKⅠである。


 日本語にすると軽戦闘車両1型と何の捻りも無い名前であるが、史実ではLKⅡと言われた車両とほぼそっくりであり、防御力は最大10mmであり、馬力も55馬力と低くかったが、装甲を薄くしたことで時速15キロで70キロを走行することができ、軍から要望された2つの基準をクリアし、塹壕を乗り越えたり泥地でも動く機動性を確保していた。


 こうして戦車ができ、実際に実験を繰り返していると、歩兵に随伴して移動トーチカとしての車両も欲しくなったドイツは新たに敵の機関銃の攻撃に耐え、こちらは重機関銃で攻撃できる戦車の開発に踏み切った。


 こうしてLKⅠの完成から遅れること1年……1913年に史実では未開発で終わった幻の戦車オーベルシュレージエン突撃戦車が完成することとなる。


 この戦車は略称でSO突撃戦車と呼ばれることもあるが、本戦車は5人乗りかつ見た目だけなら後年のⅢ号戦車と酷似しており、Ⅲ号戦車よりも速度が遅かったり、機関銃の配置が前後にあったりと違いはあるものの、20年前倒しで将来を考えると正解の戦車の設計に行き着いた。


 ただ車両を大型化したことにより大きなエンジンが載せられるがそれでも150馬力と20トンある車両を動かすには貧弱であり、装甲厚も14mmと決して砲弾の直撃を防げるような物では無かったが、機関銃で倒すには困難な車両であった。


 ルークマーク1の設計から様々な角度で研究して行き着いたドイツ帝国の力を象徴する車両であり、史実ナチスドイツがドイツ帝国時代の国力の蓄積を振り絞る事で戦争をしたと言われるだけドイツ帝国の国力、技術力は転生者によって加速していたフランスを超えていた。


 陸軍的には車両重量を15トンまで軽量化してほしかったが、装甲厚を削れば防御力が著しく低下することやエンジン出力が上がればリミッターを付けている速度問題も解決するし、軍からの要望である機銃を取り付け、しかも対戦車能力を持つ本車を量産したほうがLK戦車を量産するよりも効率的であると開発者や企業側から軍を説得し、オーベルシュレージエン突撃戦車は本格量産に踏みこんだ。


 陸軍が大慌てで戦車開発をしている頃、陸軍航空隊でも航空機開発で慌てていた。


 フランスで行われたエアレースの観戦をしたドイツ軍人からフランスの民間機がドイツの軍用機の性能を大きく凌駕していると報告を受け、制空権を失うことで飛行船の運用が難しくなり、地上支援という陸軍航空隊の役目を果たせなくなるという部隊存続の危機と感じていた。


 航空隊の面々は直ぐにドイツの航空機の性能が劣っている理由がエンジンにあると突き止め、前に企業から自社のエンジンの方がコストが良いと言う理由で機種転換を先送りにしたツケが返ってきたと航空隊は反省し、企業に対して想定されるフランス空軍の航空機に対抗……いや凌駕する航空機を作れと命令した。


 慌てた航空機メーカー達はシェル1型エンジンのコピーで場を凌ごうとする者、新型エンジンの開発に取り掛かる者、アメリカから航空機エンジンを購入して研究をする者と様々に分かれててんやわんやのうちに回転式空冷星型エンジンという150馬力が出せる航空機専用エンジンの開発に成功し、このエンジンはプロペラの回転と共にエンジンも回転するという何とも珍妙なエンジンながら既存航空機に比べると大馬力が出せるエンジンだった。


 フォッカー社がDr.Iという三葉機(翼が3枚ある飛行機)の開発に成功し、フランス空軍が既に開発に成功させていた機銃とプロペラの同調装置にいち早く開発に成功したと思い込み、軍にフランス空軍の戦闘機を圧倒できる戦闘機と売り込んだ。


 陸軍航空隊は新型戦闘機の性能に歓喜し、これならばフランス空軍を圧倒できると喜んだのだが、実際にフランス空軍の主力戦闘機ニューポールⅢと比べてみると


 最高速度、航続距離は互角、最高高度がややDr.Iが上、攻撃力は機銃が2門ある分ややDr.Iが上しかし急降下時に速度が出過ぎると翼がもげる欠点や三葉機故に着陸する時や下方向の視界の悪さ等の欠点も多くある戦闘機であり、総合すると互角というのが正しかった。


 ただ高馬力エンジンの開発に成功したドイツ航空機メーカーは回転式空冷星型エンジンを使い、爆弾を投下できる攻撃機や爆撃機の開発に邁進していく事となる。

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