変態!フランス空軍
転生者と意識して早2年……俺は転生者達から支援を受けて14歳で大学に入学していた。
転生してから急激に成績が伸びた事で親父も母さんも大喜び、早いうちから業界へのコネが作れると喜んでいた。
俺は転生者達が経営する大学で経済学を学びながら、サークルとして戦車の開発に着手していた。
と言っても表向きは農業用重機の開発としているので大砲の模型を乗っける事はあっても、基本は重機開発として行われていた。
現代でも主流なエンジンは冶金技術や制御する部品、全体的な品質含めて無い無い尽くしであるが、転生者達で出来る事を進めていた。
その1つが実物大の模型作りである。
外見だけならプラモデルで戦車を作り込んだ者や自衛隊やフランス軍で実際に戦車に乗ったことのある転生者も居たので彼らの意見を参考に模型の建造を行う。
と言っても最初に作る模型はルノー戦車ことルノー FT-17である。
近代戦車の元祖とも言って良いルノー FT-17。
日本やアメリカ、ソ連、イタリア等の国々に大きな影響を与えた戦車であり、そこから各国の派生が生じてくる。
この研究会でもまずはルノー戦車を実際に作ってみようと言うことが決まり、車の製造を実際にしていた俺にも招集がかかった次第である。
「現在流用できそうなエンジンが無いですね。馬力が足りないと思います」
「やっぱり1からエンジンを作る必要があるか」
そこからはいかに車体に搭載出来るエンジンを作れるかに重点が置かれた。
各国からエンジンに関する論文を読み漁ったり、実際に作ってみたり……ちなみにこの時代は50馬力の小型エンジンが出来れば革新的と言われていた時代である。
実際第一次世界大戦で使われたルノー戦車は38馬力である。
勿論車体を大型化すれば大きなエンジンを載せる事が出来るが、軍からは騎馬の代わりになる小型で軽快に動く戦車が求められた。
多分目指すべきはソ連のBT-7の様な快速戦車である。
ちなみにフランス軍は転生者達がまだ高級将官が少ない影響でエラン・ヴィタールと呼ばれる精神主義が高まっており、これは兵士1人1人が全力で物事を行なえば必ず活路が開けると言った意味であり、これが第一次世界大戦初戦のフランス軍の劣勢に繋がっていくことになるのは歴史を知っている人ならある程度理解している。
現在主流の精神主義をいきなり変えるのは難しい。
ならばそれに結びつけられる兵器を開発して徐々に機械化させて転換させていくしか無い。
フランス革命とナポレオン戦争の後遺症で出生率の低下著しいフランスではそんな無用な突撃が行えるほど人的資源が無いのだ。
損害を抑えつつ、敵に打撃を与えるのが戦車の目的であり、機関銃座を倒せる軽戦車が転生者達から求められていたのだ。
それに技術的に合致したのがルノー戦車である。
小型故に重量が軽く、回転式砲塔も軽いので人力で回転させることが可能、ある程度の塹壕を乗り越えられる踏破性能と、機関銃から車内を守ることが出来る防御力、そして機動しながら敵歩兵を薙ぎ倒す事が出来る攻撃力……それらを全て備わっていたのがルノー戦車である。
模型を眺めながら必ず作って動かしてやると俺は気合いを入れてエンジン作りに着手するのであった。
ちなみにこの頃の政治的動きは三国協商が成立したことである。
フランスとイギリスは拡張を続けるドイツの対外政策に不満を持ち、協商条約を締結。
その直後に第一次モロッコ事件が発生し、ドイツがモロッコ利権を確保しようとドイツ皇帝がモロッコに電撃訪問した事件であり、フランスは対話での解決を望み、国際会議が開かれたが世界各国はモロッコ利権はフランスにあると現状の追認で終わる結果となり、ドイツのモロッコへの利権獲得は失敗に終わった事件である。
現状のフランスはイギリスにアフリカにおける優位性を譲る代わりにモロッコ支配を認めさせていたので、フランスと共謀したイギリスの外交力による勝利であった。
更にドイツとロシアの関係が悪化していたのを見たイギリスはロシアと協商関係を成立。
元々ロシアと関係があったフランスもロシアと協商関係を結び、3国は対ドイツ、対二重帝国で利害が一致していた。
こうした世界情勢の変化の中で、フランス軍は転生者達の少ない政治力を結集させて空軍を創設するに至る。
本当ならば陸軍配下の航空隊創設でも良かったが、将来戦略空軍を育てる上で航空隊よりも空軍を創設した方が得と政治家達に思わせる事に成功し、まだ未知の兵器である飛行機開発を加速させることになる。
俺もエンジン開発で参考になることがあると考え、航空機用エンジンを視察。
現状は複葉機の性能向上と機関銃による敵航空機の撃墜、空中からの爆弾投下による地上支援が出来る攻撃機の開発が急がれていた。
敵のドイツは大型飛行船のテストを繰り返しており、飛行船が航行できる高度への迎撃するには飛行機の性能が足りてないのだ。
まぁ結局のところエンジン出力が足りていない事に行き着くのだが……。
正直史実のフランスのレシプロ機は微妙なのが多く、政府からの研究資金の出し渋りやエンジン開発が難航し、主力戦闘機として作られたD.520という機体もドイツが主力戦闘機として開発に成功したBf109の4年後に開発が完了したために生産数に大きな差が着けられていた事や拡張性の無さ等でイタリアに鹵獲された機体がイタリア空軍で大活躍した以外では戦果がほぼ無いのだ。
フランス空軍に志願した兵士達は目指すべきはアメリカのP-51戦闘機……出来れば1940年にはジェット戦闘機の開発に着手出来れば良いと言う話しも出ていた。
まぁそれだけドイツ空軍が厄介な相手であると見越しての事であるが……。
「出来れば軍民問わないので実戦で使えるエンジンを開発してもらいたいものです」
そう言われた。
戦闘機目指すべき形は理解しているが、それに技術が追いついていないのである。
ちなみに空軍としてはドイツと大戦になる前に1000機の航空機を用意しておきたいとのことで、航空機を使ったパレードを積極的に行って空軍を目指す人員の育成を行っていた。
あと転生者が空軍は多い為に広報用の漫画家を囲い込み、航空機を用いた漫画をいくつか描かせているらしい。
俺も見せてもらったが、女の子が航空機に乗って敵と戦うコ◯ブキ飛行隊もどきや宇宙人と戦うストライ◯ウィッ◯ーズ擬きの漫画が描かれていた。
絶対にこれを描いているの日本人転生者だろと思うが、受けは悪くないらしく、フランス人にも受け入れられているらしいが、女の子が戦うというので困惑しているらしい。
まぁ飛行機に乗りたいというパイロットが増えてくれれば空軍としてはOKらしい。
この話を聞いた戦車開発に携わっている絵描きがガ◯パン擬きを描いて一悶着あったが……。
この勢いだとフランスでコミケが開催されそうである。
まぁ広報がそんな事をしているフランス空軍は変態の巣窟扱いであり、陸軍、海軍共に距離を置かれてしまっているらしいが……。(一部の愛読者達は営内に持ち込んで布教しているらしいが)
まぁ飛行機の実物がそんなんなので戦術の研究も卓上演習が殆どらしい。
それでも他国に比べると凄い進んだ研究をしているらしく、編隊飛行や格闘戦と一撃離脱の集団戦、爆弾の投下方法等も模索しているらしい。
本当にエンジンとまともな機体さえあれば化けそうな勢いであった。
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