試作戦車1号!
さてルノー戦車の開発を進めながらも研究で得た技術を家の会社に還元することも忘れない。
転生者の間でもそれなりの企業を転生者が制御していた方がありがたいとルノー一強のフランス自動車産業を更に盛り上げるために力を貸してもらっていた。
で、俺が目に着けたのは低出力小型エンジンで動くバイクの方だった。
戦車開発部門ではないが、バイクを開発している研究会もあり、そこの研究チームを卒業後家の会社の技術顧問として雇いたいとお願いした。
彼らはフランスで有名なモペッドでは無く、スーパーカブの様なバイクに通ずる言動付き自転車の開発に熱中しており、自動車は高くて買えない層でも手の届く値段設定をすれば買って貰えるのではないかとか、バイクが流行れば軍の要望する騎馬の代わりを担えるのではないかと考えて出資していた。
親父にも金になりそうな物を作っている集団が居ると話すと大学まで来て彼らに色々質問をすると是非とも契約したいという話になり、製造ラインを作ることになった。
で、売り出されたのがルーククロス。
クロスバイクのクロスとルーク社と言うことで社名のルークを付けて売り出したところ滅茶苦茶売れた。
競合していたモペットからよりバイクに近くなっていたが、いちいちペダルを漕ぐ必要が無く、ハンドルを捻ることでスピードの調整が効くのが受けた原因らしい。
あとは販売店で修理できるスタッフを必ず付けた事も良かったらしく、買った店舗で修理できる安心感がリピーターを生み、売れる原因になったとか。
原付きバイクで成功したことで本当のバイクを作る予算も降りて、大学から引き抜いた転生者達はのびのびとバイク作りに熱中している。
バイクを自由に作れる環境でしかも高めの給料が出るので転生者達もウハウハである。
ルーククロスは軍からも受注を受けて納品し、軍はそれを更に改造して機関銃を設置した珍兵器が開発されることになるが、機動力があり、重い機関銃を運べるとして重宝されることになる。
さて、結構フランス軍について微妙だのと言っている気がするが、他国より明確に強い分野がある。
大砲だ。
大砲に関してだけは世界最先端を行っているフランス軍はナポレオン時代から先進的な大砲を多用していた。
液気圧式駐退復座機を最初に採用したのもフランスであり、大砲のライフリング技術やそれに付随する冶金技術もフランスは他国より先に進んでいた。
そんなこんなで開発されたM1897 75mm野砲は他の砲が1分間に2発撃つのが限界なところ、分間15発を実現した驚異的な大砲であり、イギリスがドレッドノート級戦艦を作って他の戦艦を過去の物にしたようにフランスのM1897 75mm野砲の登場で他の大砲が全て過去の物にした実績がある。
ちなみにこの頃になるとドイツのクルップ社が液気圧式駐退復座機の開発に成功し、ドイツも同等の性能の大砲を手に入れることになる。
まぁそんな大砲は強いフランス軍であるが、重機関銃も先進的かつ信頼性の高いホッチキス Mle1897重機関銃というのがあり、1900年に改良型が、更に転生者達が信頼性と軽量化、将来を見越した弾薬ベルトの改良を施した1908年型が登場し、ホッチキスMle1908重機関銃の生産が始まっていた。
ちなみにホッチキス社がアメリカ出身だったために純国産機関銃運動を焚き付けようとした政治家が居たが、転生者達が火消しを行った。
史実ではこれにより駄作の烙印を押されるサン=テティエンヌ Mle1907機関銃がフランスの主力機関銃になるのだが、不発が多く、生産性も悪く、現場からも運用に難があると悲鳴を受ける為にこの世界ではホッチキス社のが主力機関銃に採用されるに至る。
とは言えその重量は43キロにもなるので運用に歩兵が3人必要なのだが、原付き自転車が登場したことで運搬がだいぶ楽になった為に軍から凄く有難がられる事になる。
大砲、機関銃と来たら小銃についても触れて置かなければなるまい。
小銃は開発当初は画期的と言われたルベルM1886小銃が1908年現在でも使われており、新型小銃の開発が始まっていた。
新型小銃は既存のボルトアクションライフルを発展させたライフルと自衛隊で採用されていた64式自動小銃やセミオートライフルのM1ガーランドを参考にし、銃弾も将来性を見越して他国との互換性を考え7.62x51mm弾の開発に着手した。
既存の銃弾も製造するが、度重なる改造により生産性が悪化していた為、だったら多少値が張っても将来性の高い弾薬を使ったほうが経済的であるとして開発がスタートしていた。
まぁこの調子であればM1ガーランドをベースにしたセミオートライフルの採用が一番現実的らしいと仲良くなった銃を研究しているチームからそう言われた。
7.62x51mm弾が開発されれば多分ホッチキス重機関銃の再調整版が出てそれで完成になるだろう。
1908年と言うことで戦車開発も俺が入学してから2年が経過し、そろそろ形にしないと不味いと言うことで、現状一番馬力の出て小型の30馬力のエンジンを搭載したが、足りない馬力は足回りを改造することでクリスティー式サスペンションと呼ばれるサスペンションを採用し、ルノー戦車に見られた大型転輪を前面に置き、小型転輪で後ろを支えるのではなく、転輪の大きさは均等かつ本来のクリスティー式サスペンションは履帯を外すことでも走行が可能となっていたが、その機能は最初からつけていなかった。
試作車両1号が完成し、転生者達に見せたが、ルノーと言うよりは日本の九五式軽戦車を更に小型化した車体にソ連のBTシリーズの足回りを組み合わせたキメラみたいな戦車という印象を持たれた。
全重量は史実ルノーと同じ6.5トン。
車幅や車高も同等で、全長が史実ルノーが5mのところ、エンジンの大型化と車内の居住性を上げるため、足回りにある程度の長さが必要だったため6mに拡張されていた。
一応模擬の大砲を取り付けており、重さをかさ増ししてこの重さである。
乗員は2名で、車内を拡張したことにより機関銃の場合は2000発搭載することができ、大砲を装備し砲弾の積載量も50発とまぁまぁ詰め込む事が出来た。
実際に実験に参加した軍人からは時速7キロは物足りないが、全長を長くしたことで塹壕の踏破能力が上がっており、車内も思ったより狭くなく、砲弾の出し入れもしやすいと言う印象を持たれた。
乗り心地は戦車なので悪いが、最初の戦車としては十分であると判断された。
ただエンジンの燃費が悪く可動距離が50キロと短いのが問題視され、出来れば最高時速20キロ、可動距離100キロは欲しいと言われた。
そのまま実際に機関銃で試作車両を正面と側面から撃った場合どうなるかの実験に移り、本車は期待通り機関銃に貫通すること無く耐えきってみせた。
軍人からも十分な成果と言われ、1年後には先ほど出された目標を達成し、2年後には生産が開始できるようにと言われるのであった。
実際走行距離は燃料タンクを拡張すれば良く、出力もエンジンを大型化すればできる。
それを乗っけるだけのスペースは余っている。
ただ現状ではどちらかしかできないので配置をより効率化するか、より高性能なエンジンができるかに賭けるしか無い。
出来れば100馬力の車両に搭載できるエンジンが完成すれば全ての問題が解決するのだが……なかなか難しいのであった。
とは言え、試作車両が順当に評価されたことで予算が降り、さらなる研究ができるようになるのだった。
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