第17話 選択の代償②

レオンたちは結晶の前に立ち尽くしていた。その脈動する光は、まるで彼らの心の迷いを映し出しているかのようだった。選択の時が迫る中、それぞれが自分の思いを抱えながら、結晶に手を伸ばすべきかどうかを考えていた。


カリンは結晶を見つめながら、自分の胸に手を当てた。彼女の脳裏には、これまでに失ってきた人々の顔が次々と浮かび上がる。


「復讐……それが私の目的だった。でも、それだけじゃなかった。レオンやみんなと一緒に戦って、守りたいものができたんだ」


カリンは深く息を吐き、決意を込めた目でレオンを見た。


「どんな未来になろうと、私は戦うよ。犠牲を無駄にしないために」


一方でユキは杖を握りしめ、体の震えを抑えながら考えていた。


「私なんかがこの選択に加わっていいのかな……。でも、みんなと一緒に戦って、ここまで来た。それに……」


ユキはふと、レオンを見上げる。彼の背中には迷いながらも進もうとする強い意志が見えた。


「私だって……みんなの力になりたい!もう逃げたりしない!」


ユキは小さく頷き、覚悟を決めるように杖を握り直した。


アルフは静かに結晶を見つめていた。その表情には複雑な思いが滲んでいる。


「魔王軍として、俺はたくさんの命を奪ってきた。その罪を償うには、どう選ぶべきなのか……」


彼は自嘲気味に笑みを浮かべた。


「どっちを選んでも、俺の罪が消えるわけじゃない。それなら、少しでも希望が残る方を選ぶだけだ」


アルフはレオンに視線を向け、短く頷いた。


レオンは結晶に向き直り、その剣をゆっくりと持ち上げた。その目には迷いがあったが、それ以上に覚悟の色が濃かった。


「これまで何度も間違ったかもしれない。それでも、俺たちはここまで来た。戦って、失って、それでも進むしかなかったんだ」


レオンは結晶に向かって一歩踏み出した。そして振り返り、仲間たちに強く呼びかける。


「どんな未来になっても、俺たちなら守れる!一緒に戦おう、どこまでも!」


その言葉に、カリン、ユキ、アルフがそれぞれ頷き、結晶に手を伸ばす。


レオンたちが結晶に触れた瞬間、空間全体が眩い光に包まれた。結晶の中から流れ出る魔力が四人の体を通り抜け、彼らの選択が世界そのものに響いていく。


「……未来がどうなるかなんて分からない。それでも、俺たちはこれを選ぶ!」


レオンの叫びと共に、結晶が砕け散り、光が広がっていく。その光は世界全体を覆い、地平線の向こうまで続いていった。


光が収まると、創造主が再び姿を現した。その表情はいつものように無表情だったが、その瞳の奥にはわずかな興味が宿っていた。


「選んだか……勇者たちよ。その選択が、この世界をどう変えるのか――お前たちが責任を持って見届けるがいい」


創造主の言葉と共に、空間がゆっくりと崩れていく。その中で、レオンたちは互いを見つめ合い、次に進むべき道を確かめ合った。


光が完全に消え去ると、レオンたちは見慣れた大地の上に立っていた。しかし、それは少しだけ違っていた。空は澄み渡り、大地には新しい生命の息吹を感じることができた。


「これが……俺たちの選んだ未来……?」


レオンが呟くと、カリンが肩を叩きながら笑みを浮かべた。


「間違ってたとしても、それがどうしたってんだ。私たちはまた戦って、守るだけだろ?」


ユキはその言葉に安心したように微笑み、アルフも静かに頷いた。


「これが終わりじゃない。むしろ、ここからが始まりだ」


レオンが剣を握り直し、前を見据える。その言葉に全員が頷き、新しい未来へ向かって歩き出した。


彼らの選んだ道が正しかったのか、それとも間違いだったのか――それは、これからの戦いと選択の中で答えが見つかるだろう。


次の章へ続く……

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