第13話 魔王の本心②
魔王カイザーが漆黒の剣を構えた瞬間、広間全体に圧倒的な魔力が渦巻いた。空気は張り詰め、まるでその空間そのものがカイザーの意志に支配されているかのようだった。
「ここまで来た勇気は称賛に値する。だが、それだけではこの玉座に届かない」
カイザーが一歩踏み出すたびに、足元から黒い魔力の波が広がり、レオンたちを包み込むように迫ってくる。
「この圧……!まるで体が押し潰されるみたいだ!」
ユキが杖を握りしめながら苦しげに言う。その表情には恐怖が浮かんでいたが、彼女は必死に足を踏みとどまっていた。
「こんなところで立ち止まるわけにはいかない……!」
レオンが剣を握り直し、仲間たちを鼓舞するように声を上げた。
「カリン、俺たちで前衛を引き受ける!アルフ、ユキ、遠距離から支援を頼む!」
「了解!前に出るぞ!」
カリンが双剣を構え、レオンと共にカイザーに向かって突進する。二人の動きはこれまでの戦いで磨き上げられた連携そのもので、カイザーの懐に迫ろうとしていた。
カイザーの初撃
「愚かな挑戦だが、その覚悟は見せてもらおう」
カイザーは漆黒の剣を振り上げ、その一撃を放った。剣から放たれる黒い衝撃波が広間全体を覆い尽くし、レオンたちに迫る。
「くっ……防御を固めろ!」
レオンが咄嗟に剣を構え、衝撃波を受け止める。カリンも同じように防御態勢を取るが、その衝撃の威力に体が後方へ押し戻される。
「これが……魔王の力か……!」
カリンが苦しげに呟きながらも体勢を立て直す。その一方で、ユキが杖を振り上げ、雷の魔法を放つ。
「これで少しは抑えられるはず……!雷槍(サンダーランス)!」
巨大な雷の槍がカイザーに向かって飛び出す。その一撃は強力で、広間全体を一瞬だけ明るく照らした。しかし――。
「その程度では私には届かない」
カイザーは漆黒の剣を一振りし、雷の槍を一瞬で霧散させた。その圧倒的な防御力を前に、ユキは驚きに目を見開いた。
「嘘……全く効いてない……!」
連携を模索する
「力任せじゃ無理だ……何か弱点を探らないと!」
アルフが冷静にカイザーの動きを観察しながら言う。その言葉に、レオンも頷いた。
「アルフ、何か分かるか?このままじゃ押し切られる!」
アルフはカイザーの漆黒の剣と彼を囲む魔力の流れを注視していた。そして、気づいたように口を開いた。
「カイザーの力の源はあの剣だ。剣が彼の防御と攻撃を同時に支えている。まずは、あの剣の動きを封じる必要がある!」
「動きを封じるって、どうやるんだよ!?」
カリンが叫ぶが、アルフは冷静に続けた。
「剣の魔力の流れは一方向だ。あの流れを逆流させるように攻撃を集中させれば、一瞬だけ防御が崩れるはずだ!」
「一瞬でも隙があれば、俺たちで叩き込む!」
レオンが剣を構え直し、カイザーの方へ向き直った。
反撃の準備
「ユキ、雷魔法で剣の流れを乱してくれ!アルフはその後すぐに闇魔法を叩き込む!俺とカリンで隙を突く!」
レオンの指示に、全員がそれぞれの役割を確認し、短く頷いた。
「分かった……やってみる!」
ユキが深呼吸し、杖を掲げて詠唱を始める。雷の魔力が杖に収束し、空気が震えるような緊張感が漂う。
「行け……!雷鎖(サンダーチェイン)!」
ユキの放った雷がカイザーの漆黒の剣を包み込み、その流れを乱し始めた。その隙を見逃さず、アルフが闇魔法を放つ。
「闇拘束(ダークバインド)!」
黒い鎖のような魔法がカイザーの剣に絡みつき、その動きを鈍らせる。
「今だ!」
レオンが叫び、カリンと共にカイザーの懐に飛び込む。二人の剣が同時にカイザーの鎧を狙った――。
カイザーの反撃
しかし、その瞬間、カイザーの目が鋭く光った。
「甘い!」
漆黒の剣が雷と闇の拘束を断ち切り、レオンとカリンに向けて放たれた。その一撃は強烈で、二人は剣を交差させて何とか受け止めた。
「ぐっ……!なんて力だ……!」
「レオン、まだいけるか!?」
カリンが叫ぶが、二人とも明らかに体力を削られている。それでも、レオンは目を逸らさず、カイザーを睨みつけた。
「ここで倒れるわけにはいかない……!」
その言葉に、カリンも再び剣を構え直す。
決戦は続く
カイザーの力は圧倒的だが、レオンたちは決して諦めない。彼らは連携を強化し、再び攻撃を仕掛ける。カイザーとの戦いは、まさに生死を賭けた一瞬一瞬の攻防が繰り広げられていた。
果たして、彼らは魔王の防御を突破し、その真意に辿り着くことができるのか――。
次のシーンへ続く……
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