第12話 魔王の本心①
レオンたちが新たな扉を開けると、そこには広大な玉座の間が広がっていた。その空間は荘厳さと静寂が混じり合い、壁や天井には複雑な魔法陣が刻まれている。中央には、巨大な玉座が据えられ、その上に一人の男が悠然と座っていた。
漆黒の鎧をまとい、目には冷たい光が宿っている。その存在感は圧倒的で、空気そのものが彼の威圧感に支配されていた。
「……あれが魔王カイザーか」
カリンが剣を握りしめながら低く呟く。彼女の声にはわずかな震えが含まれていたが、その目は鋭い。
「ようやくここまで来たか、勇者レオン。そしてその仲間たちよ」
魔王カイザーが静かに口を開く。その声は低く、広間全体に響き渡った。それはただの声ではなく、心そのものを揺さぶるような力を持っていた。
魔王カイザーの歓迎
「この玉座で待ちながら、何度も想像した。お前がどんな姿で、どんな覚悟を持ってここにたどり着くのかをな」
カイザーは立ち上がり、ゆっくりとレオンたちに近づきながら言葉を続ける。
「99回の失敗を経て、ようやく100回目だというのに……お前たちは、ただの愚かな挑戦者ではないようだ」
「ふざけるな!」
カリンが叫び、剣を構えながら前に出た。その目には怒りが宿っている。
「お前がどれだけの人を苦しめたのか分かっているのか?それをただの挑戦だなんて言われて、黙っていられるわけないだろ!」
カイザーはその言葉に対して嘲笑すら浮かべず、ただ冷静に答えた。
「苦しめた……か。それは結果としてそうなっただけの話だ。この世界の均衡を保つためには、どうしても犠牲が必要だった。それを理解しない者が、私を討とうとするのは滑稽でしかない」
レオンの疑問
「均衡……?どういう意味だ?」
レオンが一歩前に進み、カイザーを睨みつけながら問いかける。その言葉にカイザーは静かに笑みを浮かべた。
「お前たちが考える『正義』や『平和』が、果たして何によって成り立っているのかを理解しているか?この世界の存在そのものが、私によって支えられていることを知らずにな」
「支えられている……?どういうことだ、それは?」
ユキが不安そうに呟く。カイザーはその問いに答えるように、ゆっくりと玉座の後ろに現れた巨大な魔力の結晶を指差した。
「この結晶は、この世界の根幹に直結している。私が存在することで、世界は安定し、秩序を保つことができるのだ。私を討つということは、この世界の根幹を崩壊させることと同義だ」
その言葉に、レオンたちは一瞬息を呑んだ。
魔王の本心
「お前たちは『魔王を討てば世界が救われる』と信じてここに来たのだろう。だが、その救いが一瞬の幻で終わるとしたら、どうする?」
カイザーの言葉は冷たく、それでいて深く胸に突き刺さるようだった。アルフが険しい表情で一歩前に出た。
「ならば、お前が世界を支配し続けることで、どれだけの人が苦しむことになるかも分かっているはずだ。それを正当化するつもりか?」
「支配?私は支配など望んでいない。ただ、この世界の均衡を保つために存在しているに過ぎない」
カイザーの声には確かな信念が込められていた。その言葉にレオンの心は再び揺れる。
「……お前が言っていることが本当だとしたら、俺たちは一体何を信じればいい?」
レオンが低く問いかける。カイザーはそれに対して短く答えた。
「自分自身だ。お前が選ぶ道が、この世界の未来を決める。ただし、その代償は重い」
戦いの幕開け
「だが、私はお前たちにこの力を引き継がせるわけにはいかない。この均衡を崩そうとする者には、それなりの覚悟を見せてもらおう」
そう言うと、カイザーは玉座の前に立ち、漆黒の剣を手に取った。その剣は、見るだけで魂が削られるような威圧感を放っている。
「覚悟はあるか、勇者よ。そしてその仲間たちよ。お前たちが信じる未来を、この剣で試させてもらう!」
その瞬間、広間全体が揺れ、魔王カイザーが放つ圧倒的な魔力が空間を満たした。レオンたちはそれを真正面から受け止めながら、剣を構える。
「行くぞ、みんな!これが、俺たちの戦いだ!」
レオンが叫び、仲間たちはそれぞれの武器を握りしめた。そして、ついに魔王カイザーとの決戦が幕を開けた――。
次のシーンへ続く……
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