第9話 魔王城の真実①

ゼクスとの激闘を制したレオンたちは、広間の奥に隠されていた扉を開け、魔王城の最深部への道を進んでいた。暗闇に包まれた長い廊下は静寂そのもので、彼らの足音だけが響いている。


「……嫌な空気だな」


カリンが辺りを見回しながら言う。その声にはわずかな警戒が含まれていた。


「魔王城の力の中心が近いのは確かだ。ここから先、何が起きてもおかしくない」


アルフが静かに応じる。その目は周囲を鋭く観察している。


進んでいくと、廊下の先に巨大な円形の空間が広がっていた。その天井は見上げても暗闇に隠れ、中央には浮遊する黒い球体があった。球体からは薄い光の筋が伸び、周囲の空間を覆っている。


「……あれが何か、分かるか?」


レオンがアルフに問いかけると、アルフは険しい顔で答える。


「恐らく、魔王カイザーの力の核だろう。この空間そのものが彼の存在によって保たれている……だが、ここに何の仕掛けもないとは思えない」


「確かに、罠か……それとも試練か?」


カリンが剣を構えながら球体を見つめた瞬間、空間全体が揺れ始めた。地響きのような音が鳴り、球体が一瞬だけ輝きを強める。


「気をつけろ!何か来るぞ!」


アルフが叫ぶと同時に、周囲の闇から無数の影のような存在が現れた。それらは明確な形を持たず、黒い霧が凝縮したような異形だった。


「この期に及んで、また邪魔者かよ……!」


カリンが剣を振り上げ、影の一体に切りかかる。だが、剣はその体を通り抜けるように切り裂くだけで、実体を捉えた感触はなかった。


「こいつら、実体がない……!?」


カリンが驚きの声を上げる。すると、ユキが杖を掲げながら叫んだ。


「実体がないなら、魔法で攻撃するしかない!アルフさん、連携を!」


「分かっている!」


アルフが闇魔法を放ち、ユキが雷の魔法を同時に叩き込む。影たちはその魔法によって霧散し、一部は完全に消滅する。


影の群れを次々と打ち倒していく中、空間全体に響くような声が聞こえてきた。それは深く、低く、どこからともなく届くような声だった。


「勇者よ、ここまでたどり着いたか……だが、その覚悟を試させてもらう」


「……誰だ!?」


レオンが剣を構えながら声の主を探す。しかし、声は空間全体から響いており、その正体を掴むことはできない。


「魔王カイザーか……?」


アルフが険しい表情で呟いたが、声の主は答えず、ただ低い笑い声だけが響いた。その瞬間、浮遊していた黒い球体が再び輝きを増し、空間が大きく揺れ始めた。


「何か来る……気をつけろ!」


レオンが叫び、仲間たちが身構える中、空間の中央に光の柱が立ち上った。その中から現れたのは、ゼクスとは異なる、異形の魔法生物だった。


「試練を越えた先にしか真実はない。その覚悟、見せてもらう!」


その言葉と共に、戦闘が再び幕を開けた――。

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