No.4『大災害』

 朝、鳥のさえずりを聞きながら、タケルは目を覚ます。


 昨夜、タケル達は、チリの倒したトロールと、ステルスで隠れていたエルスが持ってきたゴブリン10体の亡骸を持って、ギルドに戻っていった。

 いつもの人とは違い、赤い髪のギャル受付嬢にそれらを渡すと、タケル達は急に褒められた。

 というのも、最近、森の奥にトロールが住み着き、それが、初心者用の依頼すら星3にせざるを得ない理由になっていたらしい。

 ちなみにトロール討伐は星4の依頼であり、賞金は200万モガン。さらに、予約もしていなかった為200万モガン丸々、タケル達の手に渡る。

 タケルは、それをチリに全て渡す。エルスが、文句を言っていたが、トロールを倒したのはチリのみな為、タケルはチリに渡す事が良いと判断した。


 彼らはその後、いつもの宿に戻って眠り、今起きたのだ。


「あ、おはようございます。タケル様。」


 チリも目を覚まし、タケルに深々とお辞儀する。


「お、おはようございます。チリ様」


「さ、様だなんてそんな…。私なんて、ゴミとか、グズとかそんな風に呼んでいただいて結構です!」


「それは、さすがに酷すぎないか!?」


 昨夜の威厳ある態度はどこへやら。今のチリは、最初にあった時より、自分を下にするような発言だった。


「ん?お2人共。おはようございます。」


 目を擦り、エルスも目を覚ます。

 起きた彼女に、チリが近寄り耳打ちする。


「エルス様?私が言えたことじゃありませんけど、奴隷である貴方が主人より遅く起きて、大丈夫なんですか?」


 エルスは、タケルを睨むように見る。


「大丈夫ですよ。だってご主人様は、奴隷に体を洗ってもらったりせず、一緒に寝る訳でもない。私を〇〇にする訳でもないし…。」


「エルス様!そんな、お下品な話をしないでください!」


 チリは、エルスが最後に言った放送禁止用語な発言を注意する。

 その静止に、エルスはチリの方を向いて、少し黙った後、続ける。


「まぁ、ご主人様は奴隷のどの字も知らないぐらい奴隷の扱いが、なってないので、私が遅く起きても問題ありません。」


「なぁ、俺がキレるタイミングはここでいいんだよな?」


 タケルが、エルスを睨んで言った。


 ――――――――――


 3人は、話し合い、家を買うことにした。


「けど、良いのか?一応家を買う金のほとんどが、チリさんの200万から出ることになると思うが。」


 タケルの言葉を聞いて、チリさんは笑顔で答える。


「え、ええ大丈夫ですよ。こ、個人の部屋があるとローブなしで寝れて、とても楽ですし。」


「そういえば、貴方。寝てる時にローブなんて着ていたんですね。風呂入る前までは脱いでませんでした?」


「ちょ、ちょっと、諸事情がありまして…。」


 エルスの言葉に、チリが目を逸らしながら答えた。


「ま、まぁ。なら、家を買いに行きましょう。」

 タケルの言葉に2人は頷いた。


 ――――――――――


 3人は、家を探す前に、ギルドの食堂で朝食をとる。

 3人が食事をしていると、1人の男が彼らに話しかける。


「よぉ、昨夜、トロールを倒したって言うのは、お前達のことか?」


「え?あ、はい。」


 タケルの返しに、男がタケルの肩をたたく。


「すげぇな。あんちゃん、この前冒険者になったばかりなんだろ?仲間も、昨日出来たらしいし。」


 男が、エルスとチリを見て、驚く。


「ゲッ!チリ⁉」


「ランスロット様⁉」


 チリの驚く姿を見て、タケルが聞く。


「お2人は知り合いなんですか?」


 チリが答える。


「は、はい。私の元パーティーメンバーです。け、けれど…。」


 突然泣き出すチリに、タケルが席を立った。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。何か勘違いしている雰囲気を感じるのだが…。」


 慌てるランスロットの元に、1人の色気のある女性が来る。

 まさに、魔女と思う衣装をした女性が、チリの顔を見る。


「どうしたん?

 あ!チリじゃん。パーティーいきなり抜けて驚いたけど、新しい仲間見つかったんだね。」


「え?」


 タケルが、チリの方を見る。


「俺はてっきり、チリが使えないって追放されたと思ったんだけど、自分から抜けた?」


「は、はい。だって…。」


 チリが、女性の方を指さす。


「だって見てくださいよ!ドロシー様を!私より、強い魔術師ウィザードで、しかもこんな色っぽい体して…。お胸なんてこんなに大きくて。私の上位互換じゃないですか!なのに…。なのに…。

 ランスロット様が、優しすぎて『霊力のない朝は、無理に戦わなくていい』って言ってくれるし、昼は昼でソウルクラッシュでの援護がメイン。夜は狂暴な魔物が多いから、パーティーメンバーのために基本森に出かけない!私の居場所がここで良いのか不安になって…。それで、パーティーを抜けました!!」


「は、はぁ。でもチリさんを止めたりしなかったんですか?」


 タケルが、聞くとランスロットは頬を掻く。


「いやぁ、本人の意志だし、無理に止めるのは…。それに、その日が朝だったし、朝の彼女は…。」


 ランスロットの言葉に、チリが睨む。


「なんですか!朝の私はやっぱり邪魔ですか?ええそうですか!」


 ナイフを取り出すチリに、タケルは「またか」と思う。

 しかし、ランスロットは焦っていた。


「待て待て、落ち着け。」


「もうこんな私なんて、いなくなればいいんですよ!!」


 自分の喉元にナイフを刺そうとするチリを、ランスロットとドロシーが彼女の腕を抑え、止める。


「朝のチリは、ちょっとの刺激で死のうとし始めるんだ!」


「ドードー、落ち着けチリ。」


 2人の言葉に、タケルが慌てる。


「まじかよ!どんだけ、性格変わるんだよ。お前!!」


 ——————————


「先ほどは申し訳ありませんでした。」


「いえいえ、あんな雰囲気なら俺だって、勘違いするし。」


 タケルは、ランスロットに謝罪する。それをランスロットは笑顔で返す。


「改めて、何か飲み物でも奢ろう。旧友がいるならなおさら、仲を深めたい。」


 ランスロットの提案で、3人は飲み物を貰う。

 タケルとエルスは、『ラコ』という名のコーラによく似た飲み物を、チリは『ファイアカクテル』という名の、赤いお酒を飲む。


「チリさん、お酒なんて飲んで大丈夫ですか?」


「こんな時に飲まずにやってられませんよ。」


「うんまぁ、この人これで、お酒に強いからなぁ。普段から酔っぱらってるぐらいのテンションだから、分からないだけかもしれんが。」


「なんですか!普段から面倒だって言いたいんですか!」


 ランスロットの言葉にチリは、怒る。

 タケルは「確かに普段からこんなんだな。」と思う。


「いいかい、タケル君。彼女は、特に朝は注意してくれよ。さっきの通り、すぐ命を絶とうとするんだ。あと、風呂に上がってから、次の日まで室内でローブを着てるかもだが、気にしないであげてくれ。

 彼女は、弱くはないんだ。死霊術師ネクロマンサーの都合上朝と昼間は弱いかもしれんが、見捨てないで上げてほしい。」


 ランスロットが、タケルに耳打ちする。

 タケルは答える。


「いえ、大丈夫です。彼女の強さは分かってますから。」


「何こそこそ言ってるんですか?悪口ですか?」


 こそこそと話す2人をじっと見るチリ。

 2人がそれを否定しようとした時、聖職者のような服装をした女性と眼帯をした青髪でマントを付けた少女が現れる。


「ランスロットさん。いつまで時間潰してるんですか?モモンさんも帰ってきましたし、そろそろクエスト行きません?」


「む?ジャンヌか。すまない、チリと会ったもんで、話し込んでいた。」


 聖職者風の女性が、金色の目をぱちくりさせる。


「あら、チリさん。新しいパーティー見つかったんですか!おめでとうございます!」


「はい。ありがとうございます。ところで、そちらも新しい仲間ができたんですか?」


 チリが、青髪の少女を見て言う。

 それに、ランスロットが答える。


「ああ、召喚術師サモナーのモモンさんだ。」


 それを聞いてチリが目を開く。


召喚術師サモナー!? どういうことですか!私への当てつけですか!」


 ナイフを取り出した彼女の腕を、慌てて抑えるランスロット。


「そ、そういうことじゃない。昨日たまたま、パーティを探してる彼女を見つけて、何かの縁かと思って仲間に入れたんだ。

 ほ、ほらモモンさんも、何か言ってくれ。」


『モモン』と呼ばれた青髪の少女は、チリから目を逸らす


「ヘッ!」


 そして頭に乗っている鳥が、馬鹿にしたように笑う。


「どういうことですか!私とは口も聞けないって言うんですか!?」


 暴れるチリを、ランスロットが羽交い締めにして止める。


「違う違う。彼女は人と話すのが苦手で、上の鳥に代弁してもらってるだけで…。」


「どの道、馬鹿にしてるじゃないですか!このちんちくりん!」


 チリの言葉に、『モモン』は顔を、彼女に寄せる。


「アンタトチガッテ、ショウライ、オオキクナレルゾ。トクニムネ。」


「どういう意味ですか!私はまだ100歳ですよ!まだ、胸だって大きく。」


「ナラナイヨ。」


「きっー!」


 ランスロットを、押し飛ばせるほど暴れだしたチリを見て、タケルは立ち上がる。


「いい加減落ち着いてください。それにチリさんのむ…、胸は別に小さくないじゃないですか。」


 照れながら言うタケルの言葉を聞いて、チリは静かになる。


「そ、そうですね。わ、私、別に貧乳じゃないですし。」


「あ、ああ。そうだな。」「そ、そうね。」「そ、そうですよ。」


 ランスロットとドロシー、ジャンヌも頷く。


「イヤ、アンタ。パッ…」


 何か言おうとした鳥を無視して、『モモン』の背中を押すランスロット。


「そ、それじゃあ。俺達もう行くから。また、どこかで会おうぜ。」


 いそいそと、その場を去るランスロット達を見送った後。眠っていたエルスを起こす。


「あ、茶番終わりました?」


「あれを、茶番で済まさないでくれ。」


 目を擦るエルスに、タケルがそういう。


 ――――――――――


 3人は、売りに出された家を探しに歩いた。

 途中大きな爆発音がして、タケルが森のある方を見る。

 森からは、桃色の煙が湧き上がっていた。


「誰かが、魔法でも使っているのかな?」


 タケルはそう思いつつ、家探しを進めた。


 ――――――――――


 3人が、色んな家を探し、古いものの広い屋敷を買うことに決めた時、様々な人達が一方向に移動し始めた。


「なにごとだ?」


 タケルは、周りの様子に驚く。

 タケルは、ランスロットを見つけて話を聞く。


「何があったんですか?」


「ああ、タケルか。突然、森の魔物が集団で暴れ始めたらしくてな。ギルドにいた冒険者全員、森の方へ集合するように連絡が入ったんだ。」


 タケルは、森へと走るランスロット達の話を聞いて、エルスとチリの方を見る。


「タケルさん、私達も向かいましょう。」


 チリも、タケルと同じことを考えていた。

 しかし、エルスは———


「いえ、めんどくさいんで。お2人だけで行ってください。」


「お前も、一緒に行くんだよ!!」


 タケルは、エルスの腕を引っ張り、森へと行く。


 ——————————


 森へ着くと、様々な魔物が暴れていた。

 ゴブリンや、リザードヒューマンのような、小型の魔物どころか、トロールやオーガのような大型の魔物もいた。

 彼らは、人を襲おうとしているというよりかは、問答無用で暴れており、他の種族同士どころか、同じ種族同士でも争そっている。

 その光景を見て、ランスロットがつぶやく。


「あれは、発情期の時の動きだ…。」


「発情期ですか?」


 タケルの質問に、ランスロットが答える。


「ああ。発情期に、力自慢だったり、テリトリーを守るために、暴れ出すんだ。

 ただ、リザードヒューマンはともかく、ゴブリンやオーガは今の時期が発情期じゃないはずだ。」


 タケルはその言葉を聞いて、嫌な予感がする。

 タケルは、周りの目が通らないところへ移動し、『モーガン』を呼ぶ。


「『なんだい、少年。急に呼びだしたりしてさ。』」


 空間の穴から現れた『モーガン』にタケルは詰め寄る。


「お前。この魔物の暴走を起こしてなんてねぇよな?」


 タケルの言葉に、『モーガン』は笑う。


「『なんだぁ、ばれちゃったか。』」


「この前見せてきた惚れ薬。あの時の爆発はこの前の薬だろ。」


「『正解。さぁ、世界の危機ほどではないが。この町の危機。異世界勇者らしく解決してみろ。』」


 それだけ言うと、『モーガン』は空間の穴に消えてしまう。


「あ、待て!!」


 止めようとするタケルの後ろから、『モモン』が現れる。


「ソコデ、ナニシテル?トットト、トウバツ、テツダエ。」


「あ、ああ。すまん。」


 タケルは、慌てて皆の元へ戻る。


「あ、タケルさん。どこ行ってたんですか⁉」


「い、いや。ちょっとトイレに。」


「なんですか?ご主人様も発情したんですか?変態っすね。」


「おい、お前、定期的に俺を変態扱いするのやめろ。」


 タケルとエルス、チリの3人が話している隣で、『モモン』も、ランスロット達と合流する。


「モモンさん、どこに行っていた。」


「チョット、オハナヲツミニ。」


『モモン』の答えに、エルスがタケルを見る。


「なるほど、ご主人様はロリコンと。」


「違うからね!」


 タケルの方を向いて、ランスロットが言う。


「2人とも、ふざけてる時間はなさそうだぞ。」


 魔物は増え続け、町の方にも近寄り始めた。


「くそっ、仕方ない。町に入る前に、片付けるぞ。」


 スキンヘッドの武道家の恰好をした男がそう言って、魔物に向かって走る。


「『ハイテンション』!!」


 武道家の男の体を光が包む。

 そして、一段と早くなった彼が、無数のパンチをトロールに浴びせる。


「オラオラオラオラ。オラァ!!」


 最後に、格闘家が飛びあがりながらのアッパーを浴びせ、トロールを討伐する。

 それを見て、冒険者たちは歓声を上げる。

 そして、他の冒険者たちも次々と、魔物の討伐を始める。

 タケルも、エルスとチリを見て言う。


「俺達も、手伝おう。」


 しかし、エルスはめんどくさそうに答える。


「1人は、まともな長所のない冒険者見習い。1人は、まともな火力も持たない死霊術師(ネクロマンサー)。1人は、目くらましはともかく、複数を相手に出来る火力のある技を持たない奴隷。まともに、討伐できないと思いますが。」


 タケルが、チリの方を見る。


「チリさん、昨日見せてくれたあれ。『デットリーカース』でしたっけ?あれ使えませんか?」


 しかし、チリは首を横に振る。


「い、いえ。あれは、死霊召喚と同じで、霊力が必要なんです。それも、大量に必要なので、夜でも1回が限度です。」


「くそ、俺達にはなんも出来ないのか…。」


 タケルが頭を抱える。

 しかし、彼はあるひらめきをする。


「『コープスバースト』でしたっけ?あれは、今使えますか?」


 再びのタケルの質問に、チリは慌てながらも答える。


「は、はい!い、1度だけなら…。」


 その答えを聞き、今度はエルスの方を見る。


「エルス!どうにか、俺に魔物たちの気が向くように出来るか?」


「さぁ?『ステルス』で隠れた私が、ご主人様の近くで弓でも使えば。遠くの魔物でもご主人様にくびったけになるんじゃないですか?」


 それを聞いて、タケルは正面の魔物の集団を見る。


「よし、分かった。チリさんは『コープスバースト』の準備を。エルスは、俺と一緒に、魔物のヘイトが俺に向くよう頼む。」


「は、はい。分かりました。」


「ヘイトってのが、よく分からないですが。魔物の注意をご主人様に向ければいいんですね。」


「ああ、頼む。」


 タケルは、魔物に突っ込み、エルスは、自身に『ステルス』をかけ、姿を消す。チリは、スケルトンを召喚する。


「せい!はぁ!」


 タケルが、魔物をすれ違いざまに斬りつける。

 斬りつけられた、魔物は雄たけびを上げ、タケルを追いかける。


「つっ。結構怖いなこれ。」


 タケルの独り言に、エルスの声が返す。


「そりゃそうでしょう。『ボムアロー』。」


 エルスが、遠くのゴブリンや、スノーウルフに爆発する矢を放ち、タケルに注意が向くようにする。


「よ、よし。このぐらい集まればいいだろう。エルス。君は、チリさんの方に下がってくれ。」


「了解しました。頑張って、魔物どもが満足する、美味しいお肉になってくださいね。」


「いや、ならないが⁉」


 エルスの悪態にツッコミを入れ、タケルは、チリに向かって叫ぶ。


「チリさん!この集団に向かって、あれをお願いします!!」


「で、ですが…。それでは、タケルさんが…。」


 戸惑うチリに、彼女の元へ戻ってきて姿を現すエルスが言う。


「別にいいですよ。ご主人様事丸焦げにしてしまいましょう。」


「え。いや。あの…。」


「早くしないと、確実にご主人様が死にますよ。」


 その言葉にチリは、下唇を噛みながら杖を構える。


「我が剣よ。彼の元へ向かいなさい!」


 チリの命令を聞き、スケルトンはタケルの元へ向かう。


「汝、その魂を火種にし、尽くを破壊せよ。タケルさん、しっかり避けてくださいね!『コープスバースト』!!」


 スケルトンの体が、光だす。

 タケルが前へと飛び出すと同時に、スケルトンが爆発する。


「タケルさん、大丈夫ですか。」


「お?やったか?」


 チリとエルスが、タケルの元へ向かう。


「おい!それフラグ。やってないフラグ!」


 タケルが立ち上がり、後ろを見る。


 煙が晴れると、ゴブリンなどの小さな魔物が倒れてる光景と、トロールのような大型の魔物がこちらを睨んでいる光景があった。


「くそ。ダメだったか。」


「い、いえ。元より、大型の魔物を一撃で倒せるほどの火力はありませんから。」


「さ、先に言え!」


 トロール達の雄たけびが、3人を震え上がらせる。

 タケルは剣を構え、チリは『ソウルクラッシュ』を大量に放ち、エルスは矢を放つ。

 トロールが棍棒を、彼らに振り落とそうとする。


「くそ、おしまいか…。」


 タケルが死を覚悟した時、トロールの体から紫の光が流れ出した。


「なんだ?」


 その光の線を目で追うと、それは目の黄色い黒猫へ続いていた。

 気が付くと、タケル達の後ろには、3匹の黒猫がいて、それぞれが紫の光を吸収していた。


「マジカルキャットノ、トクギ。『ライフスティール』。」


 声をした方を見ると、そこには『モモン』が立っていた。


「モモンさん!」


「ムチャシテクレテ、タスカッタ。アノテイドナラ、マジカルキャットデ、タオセル。」


 『モモン』の出したマジカルキャットが、次々とトロール達を倒す。


「よし。ここまで減らせばいけるだろう。」


 ランスロットが、剣をふるいそう言う。

 その後ろで、ジャンヌがランスロットに手を向ける。


「『ホーリーディフェンス』『ホーリーバリア』。守護魔法。念の為、掛け直しておきますね。」


「ああ、ありがとう。」


 ランスロットが、ジャンヌに礼を言うと、魔物の群れに突っ込む。


「『ガーディアン』!!」


 ランスロットの眼が光り、魔物達がランスロットに向く。


「よし。ドロシー。やれ!」


 ランスロットの掛け声で、ドロシーとジャンヌが杖を構える。


「尽くを焼き払う、地獄の業火よ。今。我が魔力を糧に森羅万象を焼き尽くせ!!」

「あらゆるものを護る神の盾よ。今。この者を守りたまえ!!」


 ジャンヌが金属の杖を、ランスロットへ向ける。


「『イージスシールド』!!」


 ランスロットの体が青白く光る。

 それを見て、ドロシーも杖を振るう。


「『インフェルノ』!!」


 大きな魔法陣が展開され、そこから大きな炎の嵐が放たれる。

 その炎を見て、タケルは驚く。


「すごい…。これが、魔術師ウィザードの魔法…。」


 炎の渦がなくなると、魔物達は皆倒れ、そこに立つはランスロット1人だった。


「よし。成功だな。」


 ランスロットが笑って言う。

 そして、周りの冒険者も歓声を上げた。


「いやぁ。緊張したねぇ。」


 ドロシーはそう言って、倒れそうになる。

 それを、ジャンヌが抱える。


「大丈夫ですか?」


「う〜ん、ちょっと眠いねぇ。」


 ジャンヌが、ドロシーを背負う。

 タケル達も、一息つくと、町へと戻っていった。

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