第7話 サックスさんのホルン
オーケストラの楽器編成を塗り替えるまでは行かなかったけれど、サクソフォーンが「サックス」と呼ばれて吹奏楽やジャズ、ポピュラー音楽に普及するところまで、サックスさんの「木管楽器音色統一プロジェクト」は成功したのですが。
じつは、サックスさんは、金管楽器の音色統一プロジェクトも展開していました。
木管楽器の音色を統一したのがサクソフォーン。
で、サックスさんのプロジェクトで「音色を統一した金管楽器」は、「サックスのホルン」という意味で、「サクソルン」と呼ばれます。「サックスホルン」を
こちらも、「ソプラノ」から「バス」まで広い音域の楽器が存在します。
このうち、トランペットと同じ音域を担当するサクソルンが「フリューゲルホルン」に発展しました。
フリューゲルホルンは、英国式ブラスバンドを除く吹奏楽ではあまり使われないようですし、オーケストラでもあまり使いませんが、ジャズやポピュラー音楽ではよく使われます。
基本的に吹きかた(運指)はトランペットやコルネットと同じなので、トランペット奏者やコルネット奏者が担当します。トランペットやコルネットと同じ音域で、ゆったりした、柔らかい音がほしいときにフリューゲルホルンを使うようです。
なお、ジャズやポピュラー音楽では「フリューゲルホーン」または「フリューゲル」と呼びます。
また、低音側を担当するサクソルンが、チューバ(バスチューバ)やユーフォニアムに発展します。
チューバはオーケストラに採用され、二〇世紀のオーケストラではなくてはならない楽器になりました。吹奏楽にもなくてはならない楽器ですし、ジャズでも使われます。
ユーフォニアムはオーケストラでもジャズでもあまり使われず、『響け! ユーフォニアム』が世に出るまでは吹奏楽でも知名度の低い楽器でした。ユーフォニアムの起源はそれほど単純ではありませんが(これはチューバなどでも同じです)、サクソルン属の「小バス」が起源の一つ、ということになっています。
そのほか、サクソルンで今日も比較的よく使われるのが、「アルト」と「バリトン」です。
それぞれ、「アルトホルン」、「バリトンホルン」、または「アルトホーン」、「バリトンホーン」などと呼ばれますが、この文章で紹介している、角笛を起源とするホルンとは別の楽器です。
バリトンホルンはユーフォニアムと音域がかぶりますが、バリトンホルンのほうが明るい音色が出るのだそうです。
このサクソルン起源の(少なくともサクソルンを起源の一つとする)楽器で音の響きを統一したのが英国式ブラスバンドと呼ばれる形式の吹奏楽団です(ここでは、便宜的に、「ブリティッシュ・スタイル」の訳を「英国式」としています)。
古い金管楽器のトロンボーンを組み入れているほかは、コルネット、フリューゲルホルン、アルトホルン、バリトンホルン、ユーフォニアム、チューバと、一九世紀にできた金管楽器で編成しているのが英国式ブラスバンドです(なお、地域によって楽器名の呼びかたに違いがあり、ここでいうアルトホルンがテナーホルンと呼ばれたり、バリトンホルンがテナーホルンと呼ばれたりするようです)。
木管楽器も、トランペットも、ホルンも英国式ブラスバンドには入っていません。
ほんとうに「ブラス」(黄銅、真鍮)で作られた金管楽器と打楽器だけで構成されたバンドいう意味なので、木管は入らないのです(日本では「金管打楽器バンド」などといいます)。
なぜ、英国式は、打楽器を除けば、金管だけで、しかも「サクソルン系の楽器+トロンボーン系の楽器」だけでできているのかというと。
第一に、楽器が安いから(弦楽器、木管楽器に比較して、ですけど)。
第二に、吹きやすいから、です。
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