第2話 音が飛び飛びにしか出せないという問題

 ホルンをオーケストラに使うばあいの問題点とは?

 音が飛び飛びにしか出ないのです!

 もともと、ホルンに限らず、トランペットもそうでした。

 軍隊ラッパとかの「信号」とか、昔の軍隊の「起床ラッパ」(「起きろよ起きろよみな起きろ、起きぬと連隊長に叱られる」と覚えたそうです)とか「就寝ラッパ」(「新兵さんはかわいそうだねー、また寝て泣くのかなー」)とかはわりと単純な音構成になっています。

 それは、それがわかりやすい、というだけではなくて、もともとその音しか出なかったからですね。


 もともと、管楽器というのは、その管の長さによって、出る音が決まっています。

 吹き鳴らして出るいちばん低い音が「ド」だったら、管楽器の長さを変えないかぎり、もう少し息を強くすれば一オクターブ上の「ド」が出ます。それより一段上にすると「ソ」が出て、その一段上に強めるとさらにうえのオクターブの「ド」になります。

 私たちは、音の「振動数」(または「周波数」)が倍になると一オクターブ上がったと感じます。四倍になると、倍の倍ですから、二オクターブ上がった感じになります。八倍で三オクターブですね。

 もし、振動数が三倍になったとすると、「一オクターブ上の「ソ」」に上がったと感じます。

 そういう仕組みで、一本の管で出せる音の高さが決まるのです。


 実際にどれぐらい上まで出せるか、というと、短い管は一オクターブ上も難しく、管の長さが長くなるにつれて、段階の高いほうの音が出しやすくなります。

 ところが、ホルンは管が長いので、「いちばん低い音」が非常に出しにくい反面、高いほうはわりと上のほうまで出ます。

 「ホルンの音域表」というのを見ると、四オクターブ出ることになっているようで、これだと、息の強さ(その他、吹き込む角度など)の調整で十六段階の音が出ることになっています。

 が。

 ホルンでこの十六段階の音が出せるのは相当の熟練者じゃないかと思います。


 ちなみに、この「息の強さ(および吹きこみかたなど)」で出せる音は、いちばん低い音を「ド」とすると:

 ド→(一オクターブ上)ド‐ソ→(二オクターブ上)ド‐ミ‐ソ‐シ♭(ただしやや不正確)→(三オクターブ上)ド‐レ‐ミ‐ファ#(かなり不正確)‐ソ‐ラ(かなり不正確)‐シ♭(やや不正確)‐シ→(四オクターブ上)ド

です。


 で。

 十六段階出せるにしても、ホルンは音が飛び飛びにしか出ないのです。

 最後の、かなり難しい高い音域は、あとで触れる「右手の操作」などで音程を調節すればなんとかドレミファソラシドぜんぶ出ますが、わりと無理なく吹けてよく使う音域は「ドミソ」と上の「ドレミソ」と、せいぜい不正確な「シ♭」ぐらいしか出ません。


 この「響く部分の長さが一定だと音は飛び飛びにしか出ない」という性質は、じつは弦楽器でも木管楽器でも同じです。

 しかし、弦楽器は、弦の途中を指で押さえることで、弦の長さを変え、音の高さを自在に変えることができます。

 ヴァイオリンでもチェロでもギターでもウクレレでも琵琶びわでも、ほかの弦楽器でもそうやっています。

 フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットなどの木管楽器も、管の途中に穴をあけて、その穴のところまでを響かせる、という方法で音の高さを変えています。

 リコーダーで、「ぜんぶの穴を押さえれば「ド」」、「右手の小指を放せば「レ」」とか習いました。これが「木管楽器で管の長さを変える」というやり方なのですね。

 オーケストラの楽器のなかで、木管楽器と弦楽器は、それができる。

 しかし、金管楽器(ラッパ類)はこれができないのです。

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