ホルン!

清瀬 六朗

第1話 オーケストラの楽器になるまで

 私はホルンを吹いたことがない。

 実物を触ったこともない。

 というか、私って、学校の教育用リコーダー以外の管楽器って、触ったことがないのです。

 (そんな状態でマーチングバンド部の物語を書いていたりしますけど……。ついでにマーチングの経験もないのよ!)

 これは、そういうひとが書いたホルンのお話です。


 ホルン。

 ときには力強く、ときには味わい深く響く楽器です。

 オーケストラの曲でも、吹奏楽でも、ホルンが加わると表現に深みが出るというか、表現の幅が広がる感じがします。

 まんまるく巻いた金管楽器ですね。


 ホルンという名は英語の horn で、「つの」。

 つまり、「角笛」に由来します。

 もともと「角笛」だったんですね。角笛から発展した楽器です。


 現在では、たぶん、楽器店(ネット上も含む)で買おうとすると、ホルンのほうがトランペットよりも高いと思います。

 しかし、もともとは、トランペットが宮廷や軍隊で使う楽器で、庶民の生活から縁遠かった一方で、ホルンはわりと庶民の生活に近い楽器だったようです。


 ちなみに、トロンボーンは、スライドで音を滑らかに変えられることもあり、現在ではたいへん人間的なものごとを表現できる楽器として使われますが、もともとは「もっとも神の声に近い楽器」と言われ、教会音楽で使われました。

 古典志向の強かったメンデルスゾーン(F.メンデルスゾーン‐バルトルディ)は、わりとトロンボーンを教会音楽的な使いかたで使っているのではなかったかな?

 私には聴き分けられないので、よくわからないんですけど。


 チューバやユーフォニアムなどは一九世紀にできた楽器なので、トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバなど、現在よく使われる金管楽器のなかでは、いちばん古くからヨーロッパ人の身近にあった金管楽器がホルンということになります。


 角笛を長くして、金属で作る。

 それで、狩りのときに合図を送るために使ったと言われています。

 狩りのときに、獲物のほうではなく、後ろに続く人間に合図を送るために、管をぐるっと回してベル(朝顔)の部分が後ろに向くようにしたという話もあります。

 その「なぜ巻いているか」の起源についての説話の正しさは、私は調べていませんが。

 ともかく、ぐるっと円く巻いた、長い金管楽器としてのホルンの原型というのができあがったわけですね。


 ところで、狩りとは方向性が違いますが、奈良では、奈良の鹿愛護会のひとがホルンを吹くと鹿が集まってくる、という「鹿寄せ」というイベントをやっているそうです(現在は予約制・有料とのことです)。


 あとは、ポストホルンといって、郵便配達人や郵便馬車が、かんたんなホルンを装備していました。

 郵便受けにホルンがデザインされているものがあります。それはこのポストホルンの名残りですね。ホルンが郵便の象徴になったわけです。


 これが、近代的なオーケストラというものが成立してくるなかで、オーケストラに取り入れられてきます。

 ところが、ホルンをオーケストラに取り入れるには、ちょっとした問題がありました。

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