第14話 温泉街の新たな始まり
泥湯が復活し、再開発計画が白紙撤回された数日後、別府温泉街は再び活気を取り戻していた。観光客が戻り、商店街や旅館には笑顔が溢れている。八重の湯でも宿泊客が増え、忙しい日々が戻ってきた。
描写:
朝の光が差し込む八重の湯。紗奈は女将としての仕事をこなしながらも、時折泥湯の湯船を見つめ、安堵の表情を浮かべている。
佐藤(スタッフ):
「若女将、昨夜のお客様から泥湯が最高だったってお褒めの言葉をいただきましたよ。『ここにしかない湯』だって!」
紗奈:
「そう……。やっぱり泥湯は、この旅館だけじゃなくて温泉街全体の誇りですね。」
佐藤はうなずきながら、少し笑みを浮かべる。
佐藤:
「でも、泥湯を守るためにあんなに大変なことになるとは思いませんでした。若女将、本当にお疲れさまでした。」
紗奈は一瞬立ち止まり、静かに答える。
紗奈:
「私一人じゃできなかったことです。皆が協力してくれたからこそ、泥湯も、この温泉街も守れました。」
そのとき、温泉街の住民たちが八重の湯に訪れ、紗奈を訪ねてきた。旅館主や商店主たちが集まり、にぎやかな声が響く。
旅館主A:
「若女将、改めて感謝を言わせてくれ。君のおかげで温泉街は守られた!」
商店主B:
「観光客も戻ってきたし、街全体が活気を取り戻したよ。本当にありがとう!」
紗奈は恐縮しながらも、嬉しそうに微笑む。
紗奈:
「私たちみんなの力ですよ。これからも、この温泉街を一緒に守っていきましょう!」
住民たちから拍手が起こり、その輪の中心で紗奈は少し照れくさそうに笑っていた。
切り替え:黒瀬の出発
その夜、黒瀬が旅立つ準備をしているとの知らせを受けた紗奈は、彼の泊まっている部屋を訪ねた。黒瀬は荷物をまとめながら、懐中電灯を弄んでいた。
紗奈:
「黒瀬さん、本当に行っちゃうんですね。」
黒瀬:
「探偵ってのは流れ者だからな。どこかに事件がある限り、じっとしてられない性分なんだよ。」
紗奈は少し寂しそうに微笑む。
紗奈:
「黒瀬さんがいなかったら、私はきっと諦めていたと思います。本当にありがとうございました。」
黒瀬は彼女の言葉に少し照れくさそうな笑みを浮かべる。
黒瀬:
「いやいや、俺はただの泥湯探偵だよ。けど、若女将……君が本気でこの街を守りたいって思ったから、みんなが動いたんだ。これからも、この街を頼むぜ。」
黒瀬は最後に泥湯の方向を振り返り、ふと懐から小さなノートを取り出して紗奈に手渡した。
黒瀬:
「これ、俺の記録だよ。事件の経緯も、君がどれだけ頑張ったかも全部書いてある。何かの役に立つかもしれないから、持っててくれ。」
紗奈はそのノートを受け取り、目を細める。
紗奈:
「ありがとうございます。これは私の宝物にしますね。」
描写:
黒瀬が旅館を去る背中を見送りながら、紗奈は静かに感謝の言葉を呟く。
紗奈:
「またいつか、泥湯を守る探偵として戻ってきてくださいね。」
エピローグ
数ヶ月後、八重の湯は以前にも増して繁盛していた。泥湯を目当てに訪れる観光客は後を絶たず、温泉街全体も活気を取り戻している。
描写:
泥湯の湯船でくつろぐ観光客たち。その笑顔を見つめる紗奈は、かつての困難を思い出しながらも、明るい未来を感じていた。
紗奈(モノローグ):
「泥湯が繋いでくれた絆。それはこの街の宝物。私はこれを次の世代に伝えていく。それが、私の役目なんだ。」
最後の描写:
夕陽に染まる温泉街の景色。湯気が立ち昇り、人々の笑顔が広がる中、紗奈は泥湯を背に立ち、温かい風を感じながら微笑む――。
(完)
【毎日投稿】湯けむりの向こうに消えた泥湯の謎と、自称探偵と若女将が挑む温泉街の事件簿 湊 マチ @minatomachi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます