第2話②商業施設>デベロッパーサイド
新規施設の業務の割り当て打診がチームリーダー以上の社内チャットで回ってきた。
忙しいアピールのスタンプが一斉に飛び交う。商業施設は年単位で会社に縛られる計画なので部分的なデザインや構想だけなら大勢食いつくが、今回は小規模とはいえ一式丸ごとなので、責任と業務量が段違いだ。オレも面倒。
[一旦、調整して週明け返答でもいいですか?]
メッセージを入れる。下半期に地方転勤の内示の可能性を飛ばすための布石でしかない。東京から離れるつもりなんてない。確定はまだ先だから候補に上がって仕舞えば地方転勤の名簿から優先順位が下がる。最低でも3大拠点のデザイン室長クラス以上に昇格でもない限り地方なんて行く気ないね。
案の定、事務方か何人かアシスタント候補の情報が飛んでくる。概要書はいつも同じなので表紙だけしか見てない。アシスタントは素直で気の利きそうな若い子なら誰でもいいと答える。パシリは重要。メンバーについて同期にチャットする。
[使えそうなのいる?]
早速、同期から返答がくる。
[Aくんはできるけど最近生意気]
……面倒なのは無し。
[Bさん可愛いし素直だけど大人しすぎ]
……顔はどうでもいい。黙って仕事するなら保留。
[椋は元気いいしやる気あるよ。可愛い。嫁にしたい。]
……知らないけどコイツが嫁にしたいなら気が利きそうだから椋でいいや。やる気あんならそれでいい。
社内サーバーに保管されてるデザイン部のポートフォリオも及第点。椋とベテラン派遣さんをアシスタントに付けてもらった。他の案件もあるからこの二人に任せて地方転勤から回避確定。
「椋ちゃんとの飲み会をセッティングよろしくな!」
わざわざ直接部署に念押しに来るかぁ?気兼ねない様子で茶々を入れてくる同期の根島に苦笑する。
「上司としてアルハラは避けたなぁ。」
「萎えるわ。」
根島はフリースペースのソファに沈みながら今回の施設の概要書をパラパラと捲り手が止まる。
「へぇ。おいしいの掴んだじゃん。」
平々凡々を絵に描いた風体の根島のメガネの奥の目が真剣になる。
「この施設の地権者の1人ってウチの役員の親族らしいよ。」
「マジで?区の余剰地の再開発系じゃないの?」
都内で面積は狭いが、駅前の公園跡地で電鉄系の商業施設としてはベスト。区の運営だから資金繰りもクリーンで楽勝案件かと思ってた。
「マジで。戦後に区に貸してそのまんまで相続問題になってたやつ。」
区のサイトの公開議事録の名簿に羅列された、いかにも地主と言わんばかりの地番名と同じ苗字が上がってた。うっわぁ、ウチの役員の苗字じゃん。まじかよ。
「この公園跡地の地権者の相続人の1人が同級生なんだよね。」
聞けば今住んでるマンションも同級生の実家からの借家らしく、頻繁に顔を合わせる中で今回の開発に根島の勤め先が関わるのが話題になってたそうだ。
「営業だからテナント誘致まで当分先だと思ってたけどお前が担当なら話がスムーズだわ。」
自分の担当テナントを誘致したい魂胆を隠す気が無いのか、白いワイシャツのポケットから出したスマートフォンを無作法に操作する。
定時間際に営業部長から飲みの連絡。会社の馴染みの中華屋の個室に通される。
「内装監理に外注を使え。」
名刺を一枚差し出される。単刀直入過ぎて話が見えない。
「この方はお知り合いなんですか?」
「ウチのO Bだ。ウチの売れ線の商業併設のタワマンシリーズの産みの親。」
脂っこい顔でビールを飲み干し瞳だけがギラギラ光る。
「伝説のデザイナーの野杉さん。俺が話を通しとく。」
名刺を恭しく受け取る。野杉さんはデザイン部ながら大胆なプランでバブル後に地価が下がって苦戦していた不動産事業の起死回生の立役者として我が社の伝説になってる。その当時の相棒が今のデザイン部トップの能見室長だ。能見・野杉コンビの数々の作品はどれも社の代表作でボクの世代なら知らない人はいない。
食べ慣れた中華だが、今まで1番と言っていいほど格別だった。
そこからの話は早かった。営業部長から能見室長を通じてアポが取れた。
「どーせ暇でしょ?ウチの若いのしごいてやってよ。キャバ?最近さぁ社内うるさいからいつもの店で勘弁してよ。」
普段は品の良い能見さんが少年のようにケラケラ笑う。気さくな会話で安心した。デザイナーや”先生”クラスは癖の強い気難しい人が多いが、同じ会社出身で身内感もあってありがたい。一番頭の痛い外注費も上の方で予算を上手い事やってくれるそうなので俺は何にもしないで完璧な布陣が勝手に進む。キャバ好きの大先生の相手は愛嬌たっぷりやる気満点の椋に任せオレはたまに顔だけ出せば済む状態。
「複数案件抱えてたので助かります。」
殊勝な面持ちで頭を下げると能見室長は好相を崩す。
「周りに頼って君たちは良いデザインを考えるのに集中しなさい。」
目尻を下げて照れくさそうに言いながら几帳面に両手の指先をきれいに整えて、待ち合わせの店のメモを寄越す。デザイナーらしい線でいそいそと地図の書き込むのは職業病だと思いながら頬を緩めてしまう。
ーーー
椋さんに予約を入れさせた老舗のビストロ。落ち着いていてよく見ると客層も良い。年季の入った内装も雰囲気作りに一役買ってる。やっぱ予算かけて得すんのは年季入ってからだなと木製カウンター越しに客の案内とオーダーのタイミングを指示する。一切無駄の無いシンプルな黒の装いでいかにもデザイン職と言わんばかりの雰囲気に気圧される。横についてきたボサっとた若いのは論外。ドリンクオーダーを通しながら簡単に自己紹介をする。
「今回は小規模でお恥ずかしいのですがウチの椋が初のメインで動く案件でして僕は後ろでフォローに徹しようかと思ってます。社外の方との交流も良い刺激になると思いますので何卒よろしくお願いします。」
薄暗い店内で大きな瞳をキラキラさせハキハキと子犬のように一緒にお辞儀をする椋さんはやる気満々の触れ込み通り、オレが社内で立ち回ってる間にチームが決まって早々にプランを作っていたので楽だった。今日の顔合わせで手ぶらもカッコつかないので話のネタのラフがあれば充分だ。タブレットでお手本通りの簡易的な説明をしながら野杉さんの武勇伝で場を盛り上げる。
「あの時はホント大変で能見いるっしょ?アイツがヤラカして真面目すぎて折れないモンだからさぁ。」
気さくな口調で饒舌に話すがタブレットを見る目が笑ってない。薄暗い店内でタブレットの光が野杉さんの表情を亡霊のように浮かび上がらせる。
「ホラホラこれいーじゃん?」
隣の小僧に話しかける。さっきから「すごいっすね。」しか言わない。
「今の子はすげーな”女の子でも”頑張ってんじゃん。」
明かにハッパをかける材料にされてわずかに空気が凍る。
「頑張ってんのに女とか男とか関係ないでしょ。」
小僧は我関せずぶっきらぼうに野杉さん相手に生意気に言い返しワインをチビチビ飲みながらタブレットを覗き込む。
「俺こんなプラン作れないっすから。」
「やってりゃそのうちどーにかなんべ?」
椋さんは呆気に取られて頬いっぱいに詰め込んだ食事を吹き出さない様プルプルと笑いを堪える。多少お行儀は良く無いが、このくらいの愛嬌がある方が雰囲気が柔らかくなる。
「君みたいな若者が今回ターゲットなんだよ。」
「あ。そっすか。」
多少の無礼講もコミュニケーションと思い話題を振るが、いかにも『仕事帰りの飲み会ダルい』と言わんばかりに軽く流される。
「若者のターゲットねぇ。」
冷たい声が店内に響く。そこからの詰めは久しぶりに痺れた。参考にした過去から最新の施設の名前とプランの脆弱さの指摘に無駄がない。椋さんが慌ててメモをとる。緊張し乾いた喉をワインで流し込む。体裁を整えただけの寄せ集めプランの指事の甘さは『フォローできてねぇよ』ボクへの指摘に他ならない。さっきから指摘の度に落窪んだ眼孔の影の奥からギョロギョロと冷たい光を帯びた視線が突き刺さる。
「若者ってさどんな若者?10代?20代?ファミリーなら30代も若者だな。」
ーーーー終わった。初期構想の基本。根本のリサーチ不足が内容ブレになってるのがバレている。
「現時点では若い感性と自由な発想を膨らませるためにマーケティングであまり固いことを言わないようにしてます。」
胃をキリキリさせながらセリフを吐き出し、前菜を必死で口に詰め込んで曖昧に口を噤む。椋さんはその様子を心配げに伺う。
「提案書自体の評価は…悪くない。が決め手に欠ける。全員から言われました。」
フォローを入れてくれて助かった。さすがデザイン部の嫁にしたい娘NO.1。 ”決め手に欠ける”って言ったさんの指摘に『ありもので上手いこと回してけばいいーのに。』と、営業部長の気に入りそうなのをぶっ込んでたオレを見越してか
「それはデザイン室?まぁ冴えないおっさんに見えて大企業で長年やってたら”イイモノ”は見慣れてるからな。別に失敗しなきゃいいって営業が安パイとって妥協で通されるより誠実じゃない?」
はい!終了ーーーー。もう目が怖くってオレ見れない無理無理。さすが伝説。オレやっぱ地方転勤いいかも。南の島でのんびりしたい。
「今回は意匠のC工事内監の依頼でしょ?」
ニヤニヤとグラスを飲み干しグラス越しにオレを見ながらウエイターを呼び止める。
『気が利かねぇなぁ』と副音声が聞こえるようだった。慌てて「みなさんも飲み物頼みますか?」と声をかける。元請とはいえホスト側の仕事を失念していた。椋さんも同時に横でヒヨコの様にピョコピョコ慌てるが黙っててくれと念を込めて静止する。
「ええ”意匠”の内装監理室でお願いしました。」
と、言葉を絞り出し苦笑いをした。ちょうどタイミングを見計らったようにメイン料理のチキンの香草焼きが運ばれる。
「初期構想からねぇ。」
香ばしいチキンの皮だけフォークで剥ぎ取り一口で頬張りながら呟く。そこからは完璧に授業だった。丁寧に有名な案件とデザインの意図を絡めながら甘い所を指摘していく。指摘されるのはオレが修正を指示したところばかりで居た堪れない空気になる。気まずげに混乱して右往左往する椋さんを見かねた野杉さんはカトラリーを置いて場を見据える。
「テーマがボケてんのね。」
と肉を味わいながら瞼を閉じて思考する。
「いい子ちゃんでいる必要ないんじゃない”若い感性と自由な発想”だっけ?好きにやらせてくれるみたいだしフォローしてくれる上司に甘えられる内に好きに遊んじゃえばぁ?」
軽く言い放ちワインをボトルで注文する。ウチの接待交際費の予算ギリギリの領収書にボッテガの財布の目を指でなぞって心を落ち着かせる。主導権の握り方が手慣れている。なるほど、味方に付けたいタイプだと判断する。
「次は女の子のいるお店手配しておきますね。」
別れ際、こっそり声をかける。
「まずあの女の子がお付き合いする価値があるか、次見てからだな。」
あくまで判断する。見えないチームの指揮系統は明白だった。
ーーーー
「昨日はすごかったですね。」
翌朝、爽やかな笑顔で椋さんがデスクに駆け寄ってくる。
「久しぶりに飲んだから二日酔だよ。」
ふふっと笑いながら椋さんは初めのプランに戻したいと相談しにきた。昨日の今日で肝が太い。子どもの様に目を輝かせて両手いっぱいプレゼントの様に抱えた資料に孔雀な様な付箋目に痛い。椋さん楽しそう=ボクの頭が痛い。
「いいと思うけど野杉さんからの問題の解決もできてないでしょ?まず考えてからにしたら?」
社内のカフェマシンのエスプレッソを飲み横に積まれた別の案件の資料を手に取る。
「この後、アポがあるから戻るまでソレまとめててもらっていい?」
「わかりました。お忙しいですよね。」
しょんぼりと項垂れる実際に能見さんに呼ばれている。時計と睨めっこしながら倍速タイピングでメール処理し紙コップを捨てながら会議室に移動する。
ーーーー
会議室にはさんと営業部長はじめ例の地権者の親族を持つ役員が席に並んでいた。役員秘書が緑茶が注がれた涼しげなガラスの茶器を並べる。
「どうだった昨夜は。野杉くんは元気だったかな?」
能見さんは穏やかに微笑みながら問いかける。
「ええ。とても刺激的で勉強になりました」
「まぁ怖いよな。あのおっさん。」
ボクの草臥れた様子に営業部長が姿勢を崩して笑う。
「君も十分怖いと思うよ。でもいつまでも怖がってちゃだめだよねぇ。紺部くん30…半ばだっけ?そろそろ怖がられるようにならなきゃ。」
優しい微笑みは崩さず資料を手に取る。
「おっ優しい男の立場よくわかってるねぇ。優しいだけじゃあモテないからなぁ。」
油ぎった顔で”モテ”とか言うなよ…と言いたい所だが好色で有名な営業部長はそれ自体がネタになってるくらい何故か男女共にモテてていてセクハラぎりぎりの会話も笑いに変えるのでぐうの音も出ない。
「僕が優しいのは女の子限定だからね。」
「それ確かにな!俺らにも、ちったー優しくしろよなぁ。」
ゲラゲラおっさんたちが男子高校生みたいに戯れあってる。"女の子限定”…はい。オレには優しくしてくれないんですね。覚悟を決める。
「優しいのと優しくされたいから優しげに振る舞うのは違うってわかるかな?」
「…お言葉ですが、優しい環境でスムーズに回すのはノンストレスでは?怖がられすぎてパワハラとも思われたくないですから…」
今時は違うんですよと釘を刺して予防線を張る。
「では言い方を変えよう。今回、きみが自主的に案件に立候補し自分で選んだ部下だ。初めての初期プランからなのだから基礎的な構想構築の流れから自ら主導してみせるか、指導するべきでは?」
能見室長は手元の椋さんの資料とSEから出された俺と椋さんの社内チャットの記録を並べる。
「碌な打ち合わせもなく中身を判断しないで適当に投げて放置は優しいのかな?」
コツコツとテーブルを指で叩く音が耳を突き刺す。
「ちゃんとやってもらわないとボクが母から怒られるんだよねぇ。」
今まで無言で様子を伺っていた役員が口を開く。
「楽しんでもらっていいけど、一応会社だからねぇ少なくともマーケティング部とは連絡取って進めて。後はこっちで話すから。」
にべもなく離席を命じられすごすと退出する。ボクがお辞儀をする姿が目に入らないくらい何か話し込み始める。明るく柔らかな光が差すように計算されているはずの会議室が海の底のように重い空気だった。
自社ビル内のカフェで軽く作業をし、時間を潰して席に戻るとオレが朝ぶん投げた別の案件の図面の修正図と製作図が出来上がっていた。
椋さんそっくりの可愛らしいキャラクターの付箋に[ご確認お願いします。見積もり依頼も積算に回しておきました。椋]と書かれていた。
彼女全然知らない案件なんだよなぁ、コレ。
ーーーー
上層部の指摘事項はわかるが仕事で忙殺されているのは事実なので、頭を切り替えてスケジュールを確認し、椋さんへの指導や打ち合わせの前に初回のプランを野杉さんに出してみることにした。
ーーーー
[SUB]RE:(仮称)〇〇駅前商業施設計画 初期構想
トライアル・アーキテクト株式会社
チーフデザイナー 野杉様 アシスタント三角様
お世話になっております。先日はありがとうございました。掲題の件につきまして先日のプランの初稿でお恥ずかしいのですが一度ご覧ください。企業的な流れを指導する前に、若手の自由な発想を活かした教育に不慣れなものでボク自身が適切なアドバイスに悩んでおります。
株式会社××都市開発
デザイン室プランニング第2Dv.チーム長
紺部 尽 ー KONBE IN ー
ーーーー
素直に詫びのメールを送ると返事は手短。
[若い人同士で遊びに行ったらいいんじゃないかな?デザイナーは遊びの中から発見があるものです。トライアル(株)野杉]
サクッと簡潔なメールと裏腹に添付されていたプランのPD野杉には見たらトラウマになりそうなほどの朱記が記されている。法的な問題を指摘がツラツラと並び、一番痛かったのはスケッチパースがイケてても「せめて敷地のボリューム出しをしてからにしろ。」だ。土地が皿だとしたら建物は料理だ。皿の上に綺麗に乗せるつもりでソースや付け合わせが溢れ出たら格好がつかない。設計進行しても時間と構造計算費の無駄になるので至極ごもっともだ。コミュニケーションと初期構想の土台くらいは指摘するべきだったのだ。
「そりゃ上からツッコミ入るよな。」
「椋さんこの間の野杉さんのところの若い男の子の名刺持ってる?」
「三角さんですか?はい。」
スマホの名刺アプリに登録を確認し「今度みんなでプランの参考がてらどこか遊びに行かない?」と打ち込む。何だかセクハラみたいでドギマギする。横で派遣さんたちがチラチラ見てくるのが非常に気まずい。
「野杉先生から先日のプランでチェックバックきてね。」と朱書きの一部を見せる。椋さんは朱書きに目を通す。
「上司命令の接待じゃなくて遊びにですか?」
キョトンとした様子でプリントと名刺を見比べてニコリと笑い「わたし先輩の仕事見てみたいです。」
今回の現場の近場でちょうど先日手がけていた案件が先日オープンしていたショッピングモールを指定してきた。
「最近、運動不足なんですよね。」
と、言いながらプリントを見つめた。
まち合わせには三角くんの同僚の吉野くんとやらがついてきた。随分と腰が低くて可愛げがあるやつだ。 聞けば有名大学の院卒らしい。小さな事務所で意外だな。
「僕のデザインしてできたばかりの施設なんだ。」「あっちにアスレチックコーナーがあるので色々見ながら遊びましょうね!」
椋さんと案内する。三角くんはエントランスの床材をスニーカーでキュッキュッと擦ったり目線を遠くに落ち着きがない様子だ。あぁこの子は職人の目になってる。ミスや変なところが無いか背中が妙にムズムズする。
「やっぱりコイツ可愛げねぇな。」と思いながら「何か気になるところあるかな。」と声をかける。
「すげぇ金掛かってるんすね。」と呟く。
「確かにかけている部分もあるけど今のご時世、実際にはコスト抑えろってそんな話ばかりだよ。」
「この床、セラミックタイルの高いやつですよね。グリップも効いてる最新のヤツ。」
木目のフローリングとコンクリート風の床材を擦りながら呟く。
「ああ、住宅が多いんだっけ?それは仕方ないよ。一般住宅と商業施設では、靴の有無もあるし人数が1日だけで数百から数千人単位で利用人数が変わる。毎日朝晩500キロから下手したら1トン近い貨物台車がひっきりなしに往来するから高くても床材は丈夫にしないとすぐにボロボロになるからね。」
「グリップは雨の日に転んで怪我した人が別の施設訴える事件があってオーナーからの要望だったんですよ。」
実際には、塩化ビニルの安いのでも良いが割れたりした部分で転んで怪我や、その箇所の補修でエントランスを閉鎖したら売上に関わるので初期にセラミックにかける方が水拭きだけでワックス代も掛からないので経済的だ。訴えられたら施設の評判に関わるから予算もだが、トラブル対策の提案など色々考えるんだよ。」
「そうなんすね。」
「ほらあの広場の横のキッズコーナー!あれ椋さんのデザインだよ。」
森をイメージした可愛らしいキッズコーナーは幼稚園児向けのフカフカのマットと可愛らしいキャラクターの描かれたインクジェット印刷の壁紙が貼られていて子供たちがおもちゃ片手に遊んでいた。メインの広場からエスカレーターで各階を社会科見学し、屋上のアスレチックにでる。着替えを済ませボルダリングコーナーでまず俺と三角くんが登っていく。現場上がりだけあって筋肉でがっしりしている体格を十二分に発揮して筋肉でできてんのかよと言わんばかりの腕を伸ばし次々と石を掴んで期待通り頂上まで上がっていく。俺はその背中を見上げながらジム通いの決意と共に無惨に落下していった。三角くんはそんな俺をよそ目に青空の下で肩で息をしながら呼吸を整える。ああ、あれだテレビのCMの栄養ドリンクのような光景。俺は見ている側だと思い知りながら『くっそ。やっぱ筋肉あると画になるわ。構図いい写真撮れそう。』とかデザインを考えてしまう。
「さすが体力あるね。」
ドリンクを受け取り「うっす。あざっす。現場だとヤレ足場だとか天井見ろとか使いまわされてるんで体力だけはあります!」
体育会系丸出しで力瘤を作ってみせる。あー羨ましいやつ!男アピール!くっそ。俺は繊細だからスムージー以上に重いものは持てない。そうそう。だってデザイナーだもん。
椋さんはピッタリとしたスポーツウェアではしゃいでいる。
「商業施設…しょっちゅう買い物いくけど作ってるって考えると大変ですね…。」
「ああ、ここも施設としては規模は大きくないけどそうだね。図面もたくさんあるしそれぞれの店舗の図面も大量に出てくるからやってる最中は図面見るだけでノイローゼになるよ。…楽しいけどね…。」
歯切れ悪く返す。楽しいばかりじゃないし実情は毎日トラブルや予算だとか連絡が山積してデザイナーっていうより連絡係の気分になる事も多く頭が痛くなる。いい図面かきてぇよ。そんな思いを喉の奥に押し留めてアシスタントや外注・派遣さんに図面作業やパースをふる。中間管理職なので仕方ない。そんなため息を知ってか知らずか、気づいたら早々に登って気楽にボルダリングのてっぺんから手を振る椋さんが三角くんを急かしてスケボーをおねだりしてる。うん。青春だねー君たち!いいないいな!!俺だってスケボーとか女の子の前でかっこよく決めたいしさー!何照れてんだよ!このためにわざわざ持ってきたんだろ!!……なんてドリンク片手にこいつら爆発しろと思いながら低みの見物ですよ。スケボーをクルクル回したりジャンプしたりかっこいいねぇ。ハァァ。
「かっこいいじゃないですか!」
椋さんはキャピキャピはしゃいでるし。うんうんカッコいいねぇ。暖かく見守りポジかましてたら『プレゼンに動画使いたい?!』スケボーパークやんのかよ?!だったら先にGoProとか付けてローアングルでスケボーのアップ画像で撮らねーと編集サマになんねーだろ!だから甘いんだよ。こーゆーのが一番ムカつく。でも、ムカつくのは目の前の若い奴らみたいに衝動的にモノづくりに結び付かなくなった俺自身だった。どんな感情か分からないけど動画とかプランだ流行り仕事だじゃなく楽しい今を作りたいって感情の名前を必死に探した。
「これが若さかぁ。」
青空を見上げながら『エモいってやつかな?』おっさんって思われるのも若造って思われるのも癪な気持ちをドリンクと一緒に飲み干す。
「スケボーセクション入れんの?」と力なく問い掛けた。
「ええ。一つはスポーツアスレチック広場の複合施設にしたいので。」
「できたら俺滑りに行きますよ!」
君たち眩しいよ!若さ弾けるっていいね!!三角君の爽やかな汗がCMみたいでなんだよコイツ。むしゃくしゃする気持ちを抑えて「君たちが作るんだよ。」としか言えなかった。
俺はそっと見守ってるよ。若いっていいなぁ。楽しそうなバカップルを横目にさっきから遠い目の吉川君と俺はきっと同じ気持ちだと信じている。妙な親近感を胸に「俺着替えてくるわ。」とスゴスゴと裏に回る吉川君に「俺の名前でBBQ取ってるからあとでな。」と声をかける。いっぱい肉を食え。今日は食い放題だ。お兄さんが奢ってやるぞ!(会社の接待交際費で落とすけど。)と心の中でそっとエールを送った。
椋さんも着替えに出たので三角のコンチクショーと2人っきりだ。スケボー少年と縁がないので会話が思いつかない。「なぁ。三角君は元ヤンなのかい?」今時ヤンキーって世代じゃないだろうが反抗期にたむろってスケボーしてたのかな。「いやいや!アイツとのやり取りだけで全然っす。」手をパタパタ振ってどちらかと言うと野球部の奴みたいに口下手なのが伝わる独特な無駄のないハキハキとした回答をする。「スケボーってさ学校で習ったの?」いけてる先輩とか居たのかな?単純に好奇心と間の悪さから食べ放題メニューを見ながらダラダラと中身のない会話に飽きてしまう。「じゃーさ、夢とか!ビックになりたいとか?建築士目指してんでしょ?きみ若いし人生楽しそうじゃん。なんかこーゆーのやりたい!とかないの?」なんだか面接みたいだな。イケてる若者の夢ってなんなのか全然わかんねー。
そんな問いかけに目を丸くし、言葉を選ぶように「お袋が女手ひとつで育ててくれて早く働いて楽させたくて。いいんすよ俺は。」とゆっくりとした口調で溢した。
「親御さん想いなんだね。」えっ?これ俺悪者?若者に夢とか聞いちゃまずかった?地雷?は?えーっとコンプラは…いやコイツは社外の人間だしハラスメント……じゃない?よね?ぴえん!若者と何話していいか分かんないよ!そんな傷ついた子犬みたいな目で見ないで!!可哀想とか思っちゃうじゃん…やだやだ、俺そーゆーの弱いんだけど。
「あっここにいたんですね!」大きく手を振りながら救いの女神と言わんばかりの満面の笑みの椋さんと影がすっかり薄くなってしまった吉川君が合流し一気に賑やかになる。これこれ!やっぱり酒と肉が来ると気分が上がるね。トウモロコシやにんじん飾り切りした椎茸もいい感じに配置して映えを意識する。ビールを煽りながら肉と野菜を見ていて、事前に読んでいたニュースサイトの記事を思い出す。「なぁ椋。さっきのスケボーのプランに子ども食堂を横につけたらどう?」やっぱさ、中学の頃の林間学校みたいにみんなで飯食うのいいよね。わいわいしている方がみんないいに決まってる。「こうやって楽しく飯を食うってやっぱいいじゃん?行き場のない可哀想な子どもの救いの場所になると思うんだよね。不良少年たちの更生の場として大企業としてできる場の提供って言ったら大袈裟かもだけど、楽しかったら解決することっていっぱいあると思うんだよね。」俺はもう若くないけど楽しいってのはやっぱ大事だよな。少し酔っ払って語りすぎちゃったかな?みんな「いいですね!」って言ってくれてるしまぁいいいや。どうせまだ初期プランだし。「紺部さん!俺感動しました!すごくいいと思います!!」おお!さっきまで影薄くなってたけど元気になってよかったよ吉川君。うんうん。酒と肉は明るく楽しまないとダメだよね。ちょっとホッとした俺は目一杯の作り笑顔で三角くんに同意を求めたが「おれはそーゆーのよくわかんないっす。」と急にいじけてしまってそれ以降は終始無言だった。きまずいからやめてよー。椋さんは一生懸命肉を取り分けたり話題を振ってメッセージアプリのグループを作って「今日の写真を共有しますね!」と相変わらずマイペースに楽しそうだ。久しぶりの運動とビールの酔いに任せて陽気な気分だが帰る頃にはすっかり暗くなった周囲には豆電球が点る。隣の合コンを横目にキラキラしてんのいいなぁ。なんとなく遠いどこかにいるような気分だった。「まだ少し早いし、もう少しぶらぶらして帰るわ。」駅併設の施設なので改札通路で各自解散するが吉川くんは「飲みなおす感じですか?」と、二次会する気満々だ。ふと、ある考えが頭をよぎる。「吉川くんさ、彼女いる?」「え?いやぁ彼女は3ヶ月くらいなくって。」こりゃずっといないのかな。イケメンだから意外だけど「彼女は、いないのね。フゥン。」俺と吉川くんの心はひとつ。ナンパをしよう。そう決めた後の連携プレーは完璧としか言いようがなかった。よく分からないけどとんとん拍子にナンパが成功して二次会は久しぶりに大盛り上がりだった。その後?それはよく覚えていない。酔ってたからね。
吉川くんとは週明けもそんなこんなで連絡を取り合うようになり「また飲みに連れて行ってください」とか「この間、教えていただいたデザイナーの本読んですごい勉強になりました!またいろいろ教えてほしいです。」などとメッセージが来るたびに、ここ最近のモヤモヤのような霧が晴れた気持ちで迎える月曜日はいつもより晴れやかだ。
メールボックスに溜まったメールと各案件の電話の処理で、多くのサラリーマンの月曜の朝なんて消費されるのではないだろうか。メールボックスの未読をどんどん消化するゲームのようにひたすらタイピングをしていく横で、椋さんや派遣さんに社内SNSで図面やプラン内容を指示していく。ポンッ!と椋さんからのメッセージがポップアップされる。[お疲れ様です!土曜日は楽しかったですありがとうございました!土曜日のお話をまとめてプランを作成したのでお時間ある時に見ていただけますか?]社内サーバーのUR根島と共にメッセージが飛んでくる。休日にこっそり作業した勤怠どうするかな。と、考えを巡らせ[お疲れ!さっそくやる気満々だね。休みの日は無理しないのと他の作業もその勢いで頑張ってください。期待してるよ!プランは午後目を通しておきます。]返答もそこそこにメッセージラリーを黙々とこなしてゆく。こんな日の単純作業の日のランチなんて脳みそが疲れて食欲が湧かない。コンビニのおにぎりと惣菜を摘んでソファで仮眠をとる。土曜日の女の子からのメッセージにはスタンプだけ返すが今週の仕事をどうこなすかで頭がいっぱいだ。『俺の方も図面を描く日を捻出しなきゃな。』目を閉じているが真っ暗な中で目の前にタスクの付箋が積もっている中に、女の子とのデートは魅力的だけれども…目の前のことで目一杯で思考をシャットダウンした。
……
………
…………
午後、図面や資料を見ながら目の前のタスクを減らしていこうと奮闘しているとさんからメッセージが来る。[今から第3会議室来れますか?]ちょっと思考を巡らせ[15時から業者打ち合わせがあるのでそれまででしたら大丈夫です。]送信ボタンを押すと同時に会議室へと向かった。
「土曜日楽しかった?」
「ご存じでしたか。ええ。椋さんもやる気満々でさっそく修正プラン作ってきて、今からチェックするところです。」
書類の山から出力仕立ての椋さんのプランシートを広げてみせる。
「まだ見るところだったのでチェックはこれからです。」
先日の件を思い返し、予防線を張っておく。
「ふぅむ。へぇ。スケボーパークねぇ。アスレチック系はいいね。クロスバイクとか他の競技もできるようにしてもいいかもね。」
「自転車ですか?ぶつかったら危なくないですか?」
「まぁ。時間は区切って予約制とかやりようはあるよ。利用者層の年齢層が広がるからね。」
確かに。若者向けとはいえちょっと範囲は広げた方がスポーツイベントも広げやすいなと思考を巡らせ頷く。
「競技人口のマーケティングも調べておきます。」
反応を伺いながらさんがパラパラ捲り応答を繰り返す。
「さすがです。」
「なるほど!勉強になります。」
相槌をひたすら繰り返していくが正直、反応は悪くないようなので人心地ついた。
「子ども食堂。これって椋さんのプラン?」
「え?あ。本当にのっけたんだ。ああ……そうです。企画のひとつとしてですが。」
「これはちょっと慎重になる必要があるね。」
「そっすか。補助金とか調べたらいけそうな福祉系も役所がらみならアリかと思いましたけど。承知しました。」
俺のそっけない返事に温和なさんの眉毛がピクリと動く。
「補助金かい?」
「まぁ、開発系は組んだほうがオーナーに提案しやすいですし。」
「土日とか混み合ってる時の運用とかどうする?」
「あーなるほど。じゃー無しですね。」
「なるほどね。」
頭をポリポリかいて能見さんは「君は優秀だね。」と呟く。手元に置かれたプランシートには椋さんの可愛らしいスケッチが置かれていた。
「……野杉君から連絡があってね。人としてどうなんだ。だと。」
「へっ?人として?そんな大層な話ですか?」
びっくりして裏返った声にむせてしまう。
「あいつもウチ出身だからお前の言う、補助金とかオーナーへのアピールの腹はよく分かってんだよ。だからこそ、困難な家庭の子どもをダシにお前らの都合やアピールのために税金をネタにすんじゃねぇってさ。俺も野杉の意見に賛成。今回、コレ無くても成立するでしょ?」
「まぁ……はい。」
酔った勢いで軽口でしたとはとてもいえない空気に頭が真っ白になる。
「ボクが先方に行くよ。野杉くんの顔も見たいし。」
「外されたんんですかね?」
「そうじゃないよ。反省してるんでしょ?」
なんの気にも留めない様子でゆったりお茶を飲んでいる。
「ボクもたまにはオシャベリしに行きたいだけだよ。」
そこからポツリポツリと野杉さんとの馬鹿話や失敗談を照れ臭さそうに語る。どの案件も俺が知ってる成功してるものばかりだ。
「自分も昔やらかしていまだにイジられるし毎日ダメだとかどうしたら上手くいくかって考えたけど、失敗して頭下げて、必死にするしかないんだよね。」
「逃げなかったんですね。」俺は今逃げている。
「今まだ社内の初期構想を悩んでるうちの一つがズレただけだから失敗じゃないよ。」
「なんかカッコ悪いですね。俺。」
「えーイケメンくんが何言ってるんだい。そんなの言ってたら僕カッコつかないじゃん!いっぱいやらかしてるおじさんだよ?」
おどけて言ってくれてるけど優しい目に心が痛い。どうやったらそうやって駄目だったことを受け入れていけるか聞きたいけど上手く言葉が出ず視線をプリントに落とす。
「いっぱい仕事していっぱい遊んで楽しいことしてたら、いつかどうにかなっちゃうんだよ。横にもっとうるさいのと毎日忙しくてあっという間だよ。」
なんだか見透かされてそうで苦笑いをしてしまう。心配気に遠目から椋さんがソファ席を眺めてる。
「いっぱい楽しいこと考えたらいいと思うよ。大半は成立しないけど。」
ですよね。それがツラい。考えても考えてもボツと予算で潰れて心が折れてしまう。
「折れません?上手く効率的にって。」
ニヤリと笑いながら「それが出来たらきっと続けてないかなぁ。」と椋さんを手招きする。
「赤ペン先生ばっかりのプリントどう思う?」
「え???わたしの力不足なので仕方ないかなぁって。勉強になって楽しいです!わたしずっと変な子って思われてたから。でもそんなわたしのプランでも一生懸命実現できるようにいっぱい考えてくれてるのが伝わって嬉しいですよ。」
そう言って、資料を鞄に突っ込んでいった。
カフェテリアのフリースペースで仕事を進め、メッセージで同僚根島を呼び出す。
「なんで俺をBBQ誘ってくれなかったワケ?」
「開口一番それかよ?てかなんで知ってんの?」
ふっふっふ〜と気持ち悪い笑みを浮かべてスマホをスライドさせてみせる。そこにはSNSの非公開アカウントでスケボーをする三角くんの動画やBBQをする俺らの姿が現れた。
「は?なにこれ?」
「椋さんの鍵垢〜。プラベ誘ってつったじゃん。」
カフェのカウンターチェアで姿勢を崩して画面をスクロールする。
「これプラベ垢?どゆこと?」
妙にソワソワする。鍵垢ってことは裏垢?上司の悪口とか無い?
「いやいや、聞けば教えてくれるよ。ほらフォロワーみんな会社の人間と…友達かな?」
確かにそのようだ…大した事は書いてない…が、さんが三角のスケボー動画にGOODを押してる…。
「なんでこの人まで…知らないの俺だけ?」
「別にそうゆうんじゃないと思うけど…ところでどうしたんだよ。」
紙コップの端をかみながら気怠げに会議室でのやり取りを説明した。
「あーなるほどね。そーゆーこと。」
根島はつまんなそうな顔で「俺を椋ちゃんとの飲み会に連れてかなかった罰だな。」と真顔でぼやく。
「は?お前って椋さん本気なの?」
「嫁にしたいって言ったじゃん?」
同僚の恋愛なんてここ10年くらい知らんぷりしていたが俺とこいつはこのまま独身仲間を貫くと思っていた。
「社内だぞ?」下手をしたらセクハラで面倒なことになる。
「それな!だーかーらー!キッカケ協力しろよ!!」
俺の悩みなんてどうでもいいとばかりに肩をゆすってくる。休日飲み会なんてもうやる気は無い。BBQを思い出して溜め息が出る。
「あいにく強力なライバルが登場したから諦めろ。」
眉を寄せて憐れみたっぷりに根島を励ます。
「えぇっ?どこのどいつが俺の椋ちゃんに手を出したんだよ?!」
「そんな関係じゃ無いだろ。」
苦笑まじりにスマホを指差す。
「このイケメン君に夢中みたいよ?」
そう。女子は皆、スポーツ万能な細マッチョイケメンに恋に落ちるのだ。我らが独身同盟としてメガネで最近ビールっ腹になってきた根島には現実を知らしめてやらなければならない。
友として、三角君の動画をまじまじと見直している根島に温かい眼差しで「あきらめろ。」とエールを送った。
俺のスマホがポケットで揺れ続けているが、バイブレーションに触ると火花が散るような気がして見て見ぬふりをした。
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