第3話 制限時間―タイムリミット―
冥府役人としての威圧感を漂わすエディさんが、真顔でまりんちゃんを見据えている。辺りが異様な静けさに包まれ、ポーカーフェースでエディエディさんを見詰め返すまりんちゃんの顔に、緊張が走った。
てっきり、あの絢爛な館に住む主の追っ手だと思っていたらまさかの冥府役人の登場。まりんちゃんが、
彼ら死神とはまた違った立場で、現世に姿を見せた冥界の人間。彼の目的は、面前で向かい合うまりんちゃんを保護し、霊界へ連れて行くことだ。
まりんちゃんが、なんの特殊能力を持たない普通の人間でありなおかつ、現世に未練が何もなければ素直に、エディさんの指示に従うのだろうが、そうは問屋が卸さない(訳=そう簡単に思い通りにはさせない)。
「エディさん……ごめんなさい」
真顔で頭を下げたまりんちゃんは、
「私にはまだ、晴らしたい未練があるので現世を離れたくありません。今から数日前、私の魂を回収しようと、現世に降臨した死神との
まりんちゃんは頭を下げたまま切願する。無言でその姿を見据えるエディさんがやおら返事をした。
「……何もなければ、君の
そう、自身の意志を主張したエディさんの目が、鋭さを帯びている。役人特有の威圧感、何事にも動じない強い意志、凜然たる雰囲気が漂っていた。
今にも霊界へ強制連行されそうな雰囲気に圧倒され、たじろいだまりんちゃんはいよいよ焦った。
エディさんが一歩ずつ前進するのに合わせて、まりんちゃんは一歩ずつ後退。その動作を続けることしばし……少しずつ後退するまりんちゃんが知らぬ間に、その背後に佇む誰かに当たった。
「あっ……ごめんなさい!」
「私なら、大丈夫よ」
よく澄んだ美声でそう返事をすると、まりんちゃんを見詰めて微笑む美女の姿がそこにあった。
スポーティーな着こなしコーデの私服。
「
今から数日前、美舘山町の外れにある廃墟ビルの屋上で、白羽の矢を受けて倒れたシロヤマを巡って、まりんちゃんと細谷くんが
「どうして、ここに?」
「女の勘ってやつかしら。妙な胸騒ぎがして……でも良かったわ。こうしてあなたと再会できて」
優しさと愛情が
「話は聞いていたわ。これからあなたを逃がしてあげる。けれど、私が時間稼ぎができるのはせいぜい三十分程度……それまでの間に、冥府役人の彼が張った結界を突破しなさい」
「綾さん……ありがとうございます!」
申し訳ないらや、嬉しいやら……複雑な感情を抱きながらも綾さんに感謝をしたまりんちゃんは、そのまま綾さんの後ろまで下がったのだった。
「……これは一体、どういうつもりです?」
瞬時に発動した銀色の結界の中に閉じ込められたエディさんがそう、鋭い口調で綾さんに尋ねる。綾さんは控えめに笑うとやおら返答。
「ごめんなさいね。私は、いつだってあのこの味方だから……冥府役人のエディさんには悪いけれど、これから私のエクササイズに付き合ってもらうわよ」
気合い
「仕方がありませんね……この僕で良ければ喜んでお相手してさしあげます。ただその前に、僕からの質問に答えていただけませんか? 自ら張り巡らせた結界の中に僕を閉じ込めたあなたは一体、何者です?」
「
気取った笑みを浮かべて尋ねたエディさんに対し、自信に満ちた笑みを浮かべて返答した綾さんは凜然とそう述べた。
もっか、エディさんと対峙する綾さんの中身は、現世のシロヤマである。この世界にいる、もう一人のシロヤマ自身と見分けを付けるため、身内の綾さんに変身をしているのだ。
結社の死神だけでなく、冥府役人まで登場してしまい、シロヤマは頭を抱えていた。
なぜ、どうしてこんなことに……身に覚えがないのにあるような記憶が次から次へと……もう一人の、過去のシロヤマ、後で覚えとけよ。
気取った笑みを浮かべて質問をしたエディさんに対し、自信に満ちた笑みを浮かべて返答をした綾さんは内心、もう一人の自分自身に憤るのだった。
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