第3話 いつくしみ深き

私は信仰をもっている。

代々続いた女子の為の学校の跡継ぎ。

小さな頃からこの教会におばあさまと毎週来たわ。

「ここはね、人間の世界とは離れた場所なのよ。神の子としてあるべき場所なの。

人間の欲望と自分を切り離して祈りをしてごらんなさい。そうすれば、大切にしなければならない事がわかるわ。」

おばあさまは、いつもそう話してくれた。


その時は意味がわからなかったけれど。

伝統のある学校の経営者として生きてきた

祖母にとっては随分、色んな誘惑もあったのだろう。

それを律する為にここに来ていたのかもしれない。そして、跡取りになる私に伝えようと

何度も何度も話したのだろう。


どこの誰が噂を流したのかはわからない。

この教会の子供声楽隊に選ばれたら、うちの学校に合格するなんて、、。

この教会のバザーやお手伝いをするとポイントがつくとか。

全く困った親達。


教会のバザーや募金活動は生活に困っている

人達へ使われる。

それは、子供ならお小遣いの一部、大人なら

コーヒー代くらいを心を込めて募金して欲しいと言うことなのに。

バサーに高級な物など迷惑なだけ。

それよりも、ひと針ひと針を刺繍してくれたハンカチや手袋やマフラー。上手くなくてもいいの気持ちが大切なの。


バサー品に使い古したブランドバックや壊れかけてるアクセサリーを寄付されても。

みんなが嫌な気持ちになっただけ。


手作りのビスケットやケーキ、チョコレート

不揃いで焦げてたりするんだけれど

親子で作りましたと笑い合ってる光景は

美しい。

それなのに、明らかに有名な洋菓子店のクッキーを豪華にリボンで飾り付けたものを持ってくる。みんな、気がついてるのに。


今日もそう。

声楽隊は紺色のスカートと白ブラウスと決めてある。

それには意味がある。どんな家庭の子供でも

差がつかないようにと考えられてきたものなの。

それさえもわからずに、オーダーメイドの服を着せてくるなんて。


どうかしてるとしか思えない。

おばあさま、ごめんなさい。

私、あの子だけは合格させたくないの。

親のエゴでうちの学校のブランドが欲しいだけですもの。

私は罪深い人間でしょうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る