第15話 水樹は言う
行く当てなんてないのについ教室を出てしまった。まだ時間は結構あるしどうしようかな、屋上に行くか? うーん何しようかな。
こんな時に頼れる友達なんて居ないし、どうするべきか。
何度も鳴るスマホを無視しながら廊下を歩く、何も意味が無いのに。だっさいな俺って、なんで逃げてるだよ、あの時の沙也加は悲しい顔してなのに見て見ぬふりして逃げて来たし。ちょーダサいじゃん。
斗真はため息を吐きながら、長い廊下をただ一人で歩く。
数分程経ち、教室に戻ることにした。これ以上俺が教室から居なかったら問題になる予感がしたらから。戻った教室はやはり空気が重たかった。今日は早退しようかな、なんかこんな空気苦手だし。いや、頑張るか。
斗真は席に戻り、座る。そして気にしない様子で鞄から筆記用具や教科書を引き出しに入れ、机に伏せた。この現実から逃げるように伏せていたのにやっぱり、水樹は邪魔をしてくる。
「斗真?」
水樹は伏せている斗真に問いかける。
俺は伏せたまま声を出す。
「どうしたの?」
「あんまり気にしたら駄目だよ」
「別に気にしてないよ」
「じゃあ、顔上げてよ」
「上げる必要ないじゃん」
「私が斗真の顔を見たいから上げて欲しいな」
「なんだよ、それ」
「えー、だって本当のことだよ? 今斗真の顔が見たいもん」
教室は静まり返っていて、二人の会話だけが響いていた。
無理だよ、今顔を上げたら泣きそうになっているのがバレてしまう、それにこんなダサい顔を見せられないよ。俺はただ逃げるように伏せ続けた。
「ねぇ、水樹って斗真のこと好きなの?」
沙也加の隣に居る女子がまた余計なことを言う。どうしてこうも邪魔をするだ。
逃げたい、逃げたい。
斗真は逃げるように立ち上がろうとするが水樹が斗真の頭を押さえる。逃がさないように強く優しく撫でるように。
「うーん、好きかな! あ、でも愛とかの好きではないよ、友達としては一番好きかな」
「ふーん」
どこか納得のいかない声で女子は言う。
「それにさ、教室に居る人の悪口とか言う人じゃないし、周りの空気に合わせる人じゃないから好きかな」
優しい声で言っているのにどこか針があった。水樹は大切な友達を馬鹿にされたのに怒っていた。
「何よ、私が悪いの??」
女子は慌てた様子で叫ぶ。
「そうだね、だってキモいじゃん」
水樹は強い声で言う。
願いを叶える俺と願いを叶えて欲しい彼女たち @sink2525
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