第8話 直美は99%負ける
土曜日といえば、そう家でラノベを読むのが幸福である。だが、今ラノベを読める状況ではない。
斗真は妹と二人暮らしをしており、いつも静かな家なのだが今日は違った。
三人の騒がしい姿と、一人頭を抱え込んでいる姿があった。
「でね、どうすればいいと思うかな?」
俺たち四人はテーブルを囲みながら座っている。
前に沙也加と水樹。
俺の隣に直美。
何故こんな状況になっているか説明しよう。それはーー。
「斗真聞いてる?」
直美は斗真の肩を突き頬を膨らませる。
俺が説明しようとしていたのに。
「聞いてるよ、てかなんで俺の家なんだよ」
「そんな、固いことは気にしないでさ、考えようよ」
直美は俺の頬をツンツンと触りながら言う。
この子、ボディータッチ多くないか? さすがにべたべたが過ぎると思うけど?
「あー、また鼻のしたがゾウになってる」
水樹は小さな子どものように叫ぶ。水樹は子どもで成長が止まっているのか? はぁ、ため息が出そうになる。
こんな時、静かなタイプが居たら幸せなのに。
「斗真は最低だな」
沙也加はクッキーを食べながら言う。
ダメだ、ここにはそんなタイプ居るわけない。
早く終わらして、新作のラノベ読みたいんだよな。斗真は重い腰を起こし真剣な顔をする。
「よし、考えるか」
「今日はありがとね」
時刻は19時、すっかり外は暗くなっていた。
沙也加と水樹は既に帰っており、残りは直美だけだった。
「おう」
「じゃ、帰るね」
玄関で靴を履き、俺の顔を見る。
「バイバイ」
可愛く手を振りながら家を出ようとする。
「明後日な」
俺は手を振らずただ見つめる。
そして、それを見て怒ったのか、直美は意地悪そうな顔をしながら投げキスをする。
そして、直美は家を出る。
直美ってやっぱ思わせ振りが上手い人だな。
肩を落としながらリビングに向かうと、二階から降りて来ていた妹の環奈がテレビを観ていた。
「お兄ちゃんとかけまして鬼と解くその心はどちらも鬼でしょう」
「0点」
このように、妹の環奈はいつもつらまないことを言うのにハマっている。最近は本当につまらな過ぎてやばい。
とにかくやばい。
環奈は立ち上がり、手を上に伸ばす。
「さて、夕飯にするかな」
そう言い、環奈は台所に向かう。
「そうだな」
今日は美味しい物を食べよう。ここ最近疲れたから。
図書館は静かで勉強が捗る場所であるのは知っているだろう。
けど、誰かが騒ぐだけで静かな場所はパーティー会場になる。
俺はここ最近本を読む時間が減ったため図書館に行き、本を読もうと思っていた。けど、俺は呪われているだろう。
斗真は長いテーブルの奥側に座っていて、その反対側に男女が仲良くお喋りをしている。
おい、ここは図書館だぞ?! 出ていけ!
「拓馬~話聞いてる?」
「聞いてるよ」
仲が良さそうな男女はべたべたとボディータッチをする。こいつら付き合っているのか? 本の上から二人を眺める。
あれ、あいつって、直美が好きなやつじゃないか?
直美が見せてくれた写真と似ている男だった。多分同じ奴だな。それより、この二人は付き合っているのか? やはり気になってしまう。
親友じゃありえない、ほど近い距離でずっと楽しそうに会話をしている。
「もー付き合って三カ月記念だよ?!」
3カ月? そんな前から付き合っているのか。てことはこの二人は中学の時に付き合っているのか。
直美の計画はできないな、この二人が付き合っている以上告白するのは論外だ。
「ごめん、ごめん」
拓馬は謝り、彼女の頭を優しく撫でる。
「明日一緒に買い物に行こか」
拓馬は優しい笑顔で彼女に言う。
「うん、大好き」
彼女は照れた表情で拓馬の頬を優しく撫でる。
うん、仲良すぎだね。これは直美に言わないとな。
斗真は立ち上がり、図書館を出る。
悲しい顔をしならがら。
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