第7話 ラブコメはラブとコメディーである

 「手伝ってよ」

 

 机に顔を伏せながら目だけ出し、俺を見つめる。

 

 みんなはラブコメを読んだことはあるだろうか? こんな展開はよくあることだと思う、この展開を超えた先にムフフ、二ヒヒ、の展開があるのは定番だ。

 でも、この世界はラブコメじゃない。直美と手を組んだ時どうなるのか分からない。まして、まだ直美がどんな性格か知らない。それなのに協力できると思うか?

 俺はできない。だって、怖い。それにめんどく――。

 

「ねぇ、手伝ってよ!」

 

 直美は顔を上げ、真剣な眼差しで俺を見つめる。

 

「無理です!」

 

「そんな」

 

 直美は驚き、椅子を引きずる。

 

 うん、無理。本当に無理。そもそも俺は恋とかには無頓着だし頼りにならないと思う。

 

「なんでよ?! 私は美人なのに? どこが駄目なの?」

 

 直美は立ち上がり、机を叩く。

 

「だって、俺が仲間になっても頼りないぞ?」

 

「それでも、良いよ、だから手伝ってよ」

 

 目は赤くなり、泣きそうになっているのが見てわかる。

 

 その表情を見て、さっきまで馬鹿なことを考えていたと実感する。こんなに追い込まれているのに自分は浅はかな考えをしていたことに憎くなる。

 はぁ、でもな、いや、助けを求めているなら助けるのが男だよな。

 

「分かった、手伝うよ」

 

「ほんと?」

 

 さっきまでの表情は彼方に消えていて、ニッコリと笑っていた。

 あれ? さっきまで泣きそうな表情だったのにどうしてそんなに笑顔になっているんだ?

 まさか。

 

 すると、直美は鞄からノートとペンを取り出し、机に広げる。

 

「さて、作戦会議をしよう!」

 

 何故か眼鏡を掛けて、口を尖らしそこにペンを置く。

 

 まてよ、何が起きてるんだ? 斗真は困惑するがすべてが遅かった。そう、直美は斗真と協力するため演技をしていたのだ。

 

「まず、あの拓馬をどう攻略するか考えようかな」

 

「斗真? 早く考えようよ!?」

 

 直美は斗真の頬を何回も触る。

 

「っは」

 

 斗真はこの状況を頭の中で整理していた。

 

 そうか、これはドッキリだな? おいおい、早くネタバレしてくれよ。

 斗真は辺りを見渡すが誰も居なく、静かに空間しかなかった。

 

「斗真?!」

 

 直美は頬にペンを当てながら言う。

 

 てか、なんでそんなに馴れ馴れしいんだよ。俺と話してまだ数分しか経ってないぞ?

 

「とーおーま?」

 

「はい」

 

「お、喋った」

 

「ちょっと状況が理解できないんだよね」

 

「えー? 簡単なことだよ。私と斗真が協力して私がリア充になるようにするの」

 

 俺にメリットなくね? 斗真は首を傾ける。

 

「俺じゃないと駄目なのか?」

 

「うん、だって斗真ってよく水樹と沙也加と仲良くしてるじゃん」

 

「仲、仲良いのかな?」

 

「うん、だって昼食一緒に食べるとかもう親友じゃん」

 

 いや、あれは脅されて食べてますけど?!

 

 別に真実を語るしつようはないから黙っておくか。

 

「そうだな、確かに」

 

「うんうん!」

 

 直美は首を大きく縦に振る。

 

「じゃあ、作戦会議スタート」

 

 こうして、約数週間の直美リア充大作戦が始まるのだった。

 そして、斗真は背もたれにもたれ小さく呟く。

 

「これはラブコメだな」

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