第6話 恋とチョコは紙一重
「私は太りたい」
お昼休み。斗真と沙也加は二人で昼食を食べていた。水樹は先生に呼び出しをくらい職員室に居る。
そして、なんで俺は沙也加と昼食を食べているんだ? てか、なんで一緒に食べるのが当たり前になっているんだよ。
斗真は鞄から弁当を取り、机に広げる。
「ねぇ、聞いてる?!」
沙也加は俺の弁当を取り、可愛い仕草をする。
「聞いてません」
「えー、じゃあこの弁当私が食べちゃおうかな?!」
ニッコリと笑い、俺の弁当を頬に当てる。
可愛かったら許されると思っているのか? まぁ、許すけど。
「別に良いよ食べても」
「えー、本当に?!」
「うん、その弁当俺が作ってるし」
「え? 自分で弁当作ってるの?」
「そうだけど?」
「凄い」
「普通じゃない?」
「いやいや、凄いよ」
沙也加は俺の弁当を開け、中身を確認する。
「うわ、ちゃんとした弁当じゃん」
沙也加は目を輝かす。
「じゃあ、この弁当あげるよ」
沙也加はさっきまで食べていた自分の弁当を斗真に渡す。
なんで食べ欠けの弁当を渡すんだよ。どういう神経しているんだ?
てか、めっちゃ美味しそうだし。
「ありがとう」
斗真は沙也加の弁当を受け取り、食べようとする。
「いえいえ、私の弁当はちょー美味しいよ!?」
俺の弁当を持ち、微笑みながら言う。
その笑顔は破壊的ですよ? まぁ、いいか。
俺は箸を持ち、唐揚げを取る。
うっま。
外はサクサクで中はふわふわ、こんな唐揚げが存在するなんて。
「あー、私の唐揚げが」
沙也加は叫びながら、何故か俺が食べている弁当から唐揚げを盗む。
え? あのー俺たちって弁当を交換したんだよな?
その後も、何度も交換した弁当から惣菜を盗む沙也加。
こいつ、太りたいとかじゃなくて、ただの食いしん坊じゃね?
幸せそうに弁当を食べている沙也加を眺めるだけで、もうお腹いっぱいだ。そして、沙也加は自分の弁当と斗真の弁当を美味しそうに食べた。
放課後、クラスのみんなは既に帰っており、静かな空間となっていた。
俺も帰ろうかな。
斗真は日直だった、ため帰るのが遅れていた。
日直は二人で仕事をするのだが、もう一人は図書館に行ったまま帰って来ていない。
はぁ、さぼるやつってどんな神経しているんだよ。
イライラが積もりながら黒板を綺麗掃除し、戸締りなど、もう仕事は全て終わっており、後はカギを返すだけのだがまだ教室に鞄が残っていてカギを閉めることができない。
いつになったら帰ってくるんだよ。
斗真は自分の席に座り、スマホを触る。
ここ最近疲れたな、最近って言ってもまだ4日しか経ってないけど。
明日は、家でゆっくりしよ。
今日は金曜日なので早く家に帰りたいがまだ戻ってくる気配はない。
斗真は机に伏せ、帰ってくるのを待つ。
「おーい、起きて斗真!」
あれ、俺いつの間に寝ていたんだ。
重たい頭を上げ、目の前に座っている彼女に目を向ける。
やっと帰って来たんだな。外は既に暗くなっており、結構な時間寝ていたのがわかる。
「ごめんね」
顔の前に手を合わせて謝る彼女。同じ日直なのが名前をまだ覚えていない。
えーと、この人名前なんだっけ。眠たい目をこすり、視界が広がっていく。
「私の名前覚えてる?」
何故か俺の頭に手を置き、ポンポンと叩く。
どういう状況?
「えーと、覚えてないかも」
「もー、私の名前は塔崎直美だよ」
アイドルのように笑う。眩しい、その破壊力の笑顔はなんだ。
あまりの眩しさに、目覚まし時計より、目が覚めやすい。
「直美さんか」
「直美で良いよ、今日はごめんね!」
さっきまで眠たい目で顔がよく見えなかったが、目が覚めた今顔をよく見ると、直美の目が赤くなっているのが分かった。
俺は訊くべきか悩んだがやめようておこう、こういうのは訊くべきじゃない。
「あーあー、疲れたな」
直美は俺の机に伏せる。
指で机を優しく叩き、悲しい声で囁く。
「こんな、世界滅んじゃえ」
意地悪そうに、悲しそうに。そして、徐々に顔が赤くなっていく。
「あんなやつ好きにならなきゃよかったのに」
声は沈んでいて、後悔を含みながら囁く。
その言葉はまるで、助けと願っているようだった。誰か私の願いを叶えてくれるんじゃないかって、誰かが救ってくれるんじゃないかって。そんな気持ちと一緒に直美は囁いた。
これが、恋の願いを叶えて欲しい塔崎直美との出逢いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます