第3話 生徒会長は模範生ではない!?

「私たちツクモ高校は文武両道を目指しています」

 

 綺麗な髪で、綺麗な肌、綺麗な、綺麗な。

 

 うん、綺麗だな。

 

 俺たち一年生は体育館で生徒会長の挨拶を聞いていた。

 

 舞台に立って挨拶をしている生徒会長は凜としていてまるで花のようだった。

 

 つまり、綺麗すぎて困る。

 

 顔を見れば綺麗な肌が見えて、その他を見れば整っている髪や容姿端麗であるためどこを見ても綺麗すぎて困ってしまう。

 目のやり場に困ってしまうんだ。

 

 だが、他の生徒たちは釘付けになっていた。

 

 俺も釘付けになりたいが、なれない、なんせ隣に座っている沙也加が俺の腕をつねっているからだ。

 沙也加は何故か何度も俺の腕をつねっている。だが別に痛くなく痒いと思ってしまう。

 

 沙也加は、獲物を狙う目で舞台を見つめている。

 

「私もあんな女になりたい」

 

 沙也加は目を満開に開き俺を見つめる。

 

 怖いよー。

 

 せっかくの可愛い顔が台無しだぞ? それに十分美人だと思うが。

 

「別に、沙也加って可愛いじゃん」

 

「斗真の感想なんていらん」

 

 沙也加は顔をふんと言いながら横に向ける。

 

 反抗期なのか? なんか親の気持ちが分かった気がする。 こんな気持ちなんだな。

 てか、失礼だろ。

 

 俺だって一応男だぞ? 俺の感想なんていらないって失礼な奴め。

 

「ところでさ、なんで太りたいの」

 

「斗真って、女と付き合ったことある?」


「ないけど」

 

「はぁ~、だよね」

 

 深いため息を付く沙也加。

 こいつ本当に失礼な奴だぞ。

 

「いい、女って好きな男のためなら頑張れるの」

 

 答えになってないが。

 

 沙也加は首を横に振りながら俺の顔を見つめる。

 

「あのー意味が分からない」

 

「つまり、女は努力家なの、そんな努力家に意味を求めるとか馬鹿じゃないの?!」

 

 つまり、太りたいのは努力だから? えーと俺が馬鹿なのか。

 

 全く意味が分からない。

 

 けど、沙也加はなんで納得している顔をしているんだ? こいつやっぱり失礼な奴だぞ。

 

 「だから、私の願いを叶えてくれよ」

 

 沙也加は小さく囁く。

 

「無理」

 

 この流れで、そうだな、ってなるかよ。絶対に無理だぞ。

 

 なんせ、めんどくさいし。

 

「そこ、次喋ったらこの世界で一番の愛をぶつけるぞ?」

 

 突然挨拶をしていた生徒会長がおかしなことを言う。

 

 俺たちに向かって指を指し、ニッコリと微笑みながら。

 

 俺はただ、黙って頭を下げる。

 うん、謝らないと多分終わる。

 そう思いながら頭を下げ続ける。

 しかし、隣の沙也加は口を手で押さえる。

 抑えているが若干何か聞こえてくる。

 

「わ.....し......も.....ろ」

 

 わしもろ? 沙也加は何をやっているんだ? 今はそんなバカなことを言ってる場合じゃないぞ。

 生徒たちは俺たちを見ている。

 

 視線が冷たい。俺は何もしてないのに。

 

 「生徒会長様」

 

 沙也加は手を上げる。

 

「この人がずっと喋り掛けてきました」

 

 つっは、え?

 

 思わぬ一言に驚いてしまう。

 

 こいつ今仲間を売ったぞ。犯罪だ、犯罪だ。

 

 それに冤罪だ。

 

「そこの君は後で生徒会室に来るように、では、続きを話そう」

 

 生徒会緒は俺に指を指して言い、また話を続ける。

 

 そして、俺は頭を上げて沙也加を見つめる。

 

「ご・め・ん」

 

 可愛い仕草をする沙也加。右手の人差し指を立て唇に当てる。

 

「可愛くねーよ」

 

 斗真の一言で沙也加は怒り、左肘で勢いよく斗真の肩を突く。

 

「ばーか」

 

 沙也加は悪魔みたいに微笑み、前を向き始める。

 馬鹿はお前だろ!?

 言い返そうと思ったがやめた、これ以上争ってもこいつは勝てないと本能的に悟ってしまったから。








「失礼します」

 

 扉を三回ノックして生徒会室に入る。

 

「ああ、君か」

 

 透き通った声で言い、俺を見つめる生徒会長。

 

「まぁ、座りなさい」

 

「は、はい」

 

「私の名前を憶えているか」

 

「は、い、えーと、新島真矢ですよね」

 

「そうだ、正解だ」

 

 真矢は、足を組みながら斗真を見つめる。

 

「それより、さっきから目が迷子になっているがどうした?」

 

「あのー、えーと、制服ちゃんと着てないのはわざとですか?」

 

 そう、真矢は制服を正しく着ていなかった。

 

 制服付いているボタンは全部外れていて、白ティシャツが見えていた。

 

 それに、リボンもしていなく、とても生徒会長だと思えない格好だった。

 

 これが目のやり場に困るってやつなのか? そんなわけないな。

 

「ああ、これは普通だぞ?」

 

「へ?」

 

「そうだ」

 

 手を叩き、突然立ち上がる真矢。

 

 ゆっくりと歩き、斗真に近付いて来る。

 

「あ、あの」

 

 やばい、こっちに来る。

 俺は逃げるように、後ろに歩く。

 後ろに歩くが、やがて行き止まりになる。

 

「私の弟になるんだ」

 

 俺のネクタイを掴み、顔を近付け耳元で囁く。

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