第2話 体型は体系で体形


 高校からすぐそばにあるカフェでは三人の意見が衝突していた。

 

「男って本当に体型重視だよね」

 

 水樹はカロリーカットのお菓子をパクパクと食べいる、何故か俺を睨みながら。

 

「そうだね、水樹ちゃん」

 

 沙也加はうんうんと頷きながら相槌を打つ。

 

 俺はお構いなしにコーヒーをすする。

 

 誰かこの状況を説明できる人はいますか? そうですかいないですよね。大丈夫です誰も理解できない状況なので。

 

「えーと、話を整理すると、二人が泣いていた理由は体型に関する問題が深刻だったから?」

 

「そんなものじゃないよ!!!!!!!」

 

 水樹はドンと大きくカロリーカットのお菓子を置く。

 

 怖い、怖いよ。

 

「いい、私たちが何故泣いて居たかもう一度説明するね、ちゃんと耳の穴開けなさいよ」

 

 日本語間違ってますよ?! まぁ、もう一度ちゃんと聞こうじゃないか。絶対に理解できないがな。

 

「私たちが泣いていたのはね、あんたのせいなの」

 

「うん、最初から理解ができない」

 

「静かに」

 

 すすっていたお茶をドンと強く置く水樹。

 

「でね、何故あんたのせいで泣いていたかと言うとね、君が光先生をいやらしい目で見ていたからよ」

 

「なるほど、さっぱり理解できない」

 

 俺がいつ担任の光先生をいやらしい目で見たんだよ。てかどうやって判断したんだよ。

 

「でね、私と沙也加は同じ気持ちになったのやっぱり男って女を体型で見ているんだって、それに気付いた時泣きそうになったよ」

 まるで、世界の終わりを知ったかのように嘘泣きを始める水樹。

 

 沙也加はうんうん、と相槌を打っている。

 

 そうだったのか、俺が悪いことを――ってなる訳ないだろ。

 本当に意味が分からない。

 

 それなのになんでこの二人は心が通じ合ってるかのように話してるんだ?

 俺が馬鹿なのか。

 

「それでね、君に叶えて欲しいの」

 

 沙也加がストローでイチゴミルクをすすり、優し顔を俺に向ける。

 

「私たちの願いを叶えて欲しいの」

 

 沙也加は言ってやったぞ! と顔を浮かべる。

 

「えーと、無理です!!」


 俺は直ぐに断る。

 

 よく考えてみろ、この二人は絶対に危険だ。俺の頭が叫んでる。この二人と仲良くなったら破滅すると。

 

「なんでだ」

 

 沙也加はすするのをやめ、背もたれにもたれ、絶望した顔で言った。

 

 そんな表情されてもやらないから絶対に。絶対。

 

「やっぱり、体型なんだ」

 

 むしょむしゃとカロリーカットのお菓子を食べる水樹。

 

 俺が数時間前に見たあの二人はどこに消えたんですか?

 

「そもそも、水樹さんはデブじゃないしやせる必要は――」

 

「デブ?!」

 

 水樹は立ち上がり俺を睨む。

 

 敏感肌より敏感だよ。

 

「それにさ、沙也加さんだって今の体型がベストじゃないかな? 一般的に考えてやせてるし太る必要はないと思うよ」

 

「やせてる!!?」

 

 沙也加は立ち上がり俺を睨む。

 

 この二人は双子か?

 

「とにかく、二人はやせる必要もないし、太る必要もないと思うよ、美人だし」

 

「美人って、まさか君は私たちもいやらしい目で見ていたのか?」

 

 水樹は座り、机を叩きながら言った。

 

 水樹はパクパクとカロリーカットのお菓子を食べる。

 

「とにかく、俺は無理ですからね、願いを叶えるのは」

 

「しかし君は叶えないといけない」

 

 水樹はお菓子をテーブルに置き言った。

 

 俺を睨む。

 

「どうして?」

 

「私たちを傷つけたから」

 

 にやりと笑う水樹。

 

 あのーなんも理由になっていません? それに傷つけた覚えがないんですが。

 

「それにさ、私たちを泣かせるって、やばいよ」

 

 モデルみたいなポーズで沙也加は言う。

 

 こういう場合ってどっちからが冷静な人でもう一人が明るいタイプだよね? なんで二人とも明るいタイプなんだよ。

 

「分かったよ、でも一回判断するためになんで、やせようと考えたか、なんで太ろうと考えたか教えてくれないかな?」

 

「よくぞ訊いてくれた!」

 

 二人は口を合わせて言う。

 

「モテたいから」

 

 前言撤回、解散しよう。話なんて聞く必要はないなだってもう問題は解決している。

 

 二人は既にモテているだろ。今日の自己紹介の時既に男子を魅了していた。

 

 それがモテてないと言うなら、全人類に謝るんだ。

 

「えーと、理由は分かった、けどさ、今日はもう遅いし解散しないかな?」

 

 俺は逃げうような提案をする。

 

 実際この場所から逃げたくてたまらなかった。

 

「そうね、また明日」

 

 沙也加と水樹は鞄を持ち、店を出る。

 

 はぁ、なんとかなった。無事にこの場所から逃げることができたな。

 俺は二人が居なくなったカフェで時間を過ごす。

 

 やっと、静かになったな。

 

 てか俺が買ったコンビニ弁当はどこに行ったんだ? えーと、それにアイスだって。

 

 もしかして、沙也加が食べていたのって俺の弁当だったのか。

 

 あいつ、普通に犯罪してるよ。

 

 背もたれにもたれ、天井を眺める。

 

 明日学校に行きたくねぇ――。

 


 

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