第27話 新しいご主人様っぽい?
♭♭ ――《side:幕間》――
『
カルムが〝
まるで空間から
白と薄紫の二色で構成された、
サイズ感としてはカルムの顔と同じか、少し大きいくらい。体長とほぼ同じ大きさの枕を両手で、というか全身で抱いており、宝石のような瞳はうとうとしているようにも見える。
(ほう……)
――精霊だ、というのは一目で分かった。
メアとはまるで違うが、多少なりとも彼女(?)の存在を説明できる言葉をカルムは他に知らない。半透明で幻想的で、この世のものとは思えない引力。言われてみれば、メアのような〝人型〟は非常に珍しいのだったか。
「か、か……可愛いですっ!!」
扉の近くでは、当のメアが眩い長髪と同じくらいに目をキラキラさせている。
「ふわふわモコモコでお人形さんみたいです……! 抱っこさせてください、なんとわたくし大精霊の――……って、あれ?」
『
「そ、そうでした……わたくし、今は人間さんの身体なのでした。みぅ……」
勢いよく駆け寄ってきたメアだがその手はスカッと空を切り、
ともかく――メアの
『
「……ティフォン?」
『
声と音の中間に属する、不思議な旋律で紡がれる自己紹介。
〈
ティフォンは続ける。
『
「なるほど。……しかし、
『
じっとカルムを見上げて
そして、端的な説明を終えたと同時――。
『……きゅきゅ』
物理法則を無視してふわっとその場で浮かび上がったティフォンは、大きな枕を両手で抱えたまま、少し前かがみになってカルムへ頭を差し出してきた。
『
「む? 撫でるというのは、言葉通りの意味でいいのか?」
『
「ふむ、きゅきゅか」
思い出してみると少しばかり照れ臭いが――確かに、昨日の〈
「が……ティフォン、君は実体を持たないのだろう?」
『
「…………」
ティフォンが言わんとしていることはよく分かる。
勇者が作った仕組みとは大したもので、裏ダンジョンの攻略には確かに精霊と心を通じ合わせる作用があるようだ。既にティフォンと深いところで繋がっているような感覚がある。……ただ、だからこそカルムには、実体を持たない彼女の発した『撫でて?』が心からの望みだったことも手に取るように分かってしまう。
故に、カルムは。
「【知識】系統技能・第一次解放――【
『
「触れたぞ、ティフォン。……良ければ、あとでメアにも撫でられてやってくれ」
もふ、とティフォンの頭に手を遣りながら端的に告げる。
実体を持たない精霊には触ることができない――それは事実だが、しかしティフォンは地面に立っている。重力の影響を受けている。ならば精霊の体組成として、半ば無意識的に〝物理的な干渉を受け入れるか否か〟を選択しているということだ。
ならばその性質を【知識】技能で分析し、一時的に書き換えてやればいい。
(本来は魔物の特性を遮断するために使うべきなのだろうが、少しでも抵抗されたら無効化されてしまうからな……心を預けてくれる相手にしかできない、
指先に残った心地良さを思い返しながら内心で呟くカルム。
対するティフォンはと言えば――さっそくメアに揉みくちゃにされながら――ぱちくりと、宝石のような薄紫の瞳を何度か大きく瞬かせて。
『
わずかな歓喜を声色に乗せつつ、そんな言葉を零すのだった。
◆〈天雷の小路・裏〉――攻略完了◆
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次話は【12/28(土)20時】更新予定です!
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