第21話 《謎解き担当》と精霊の目覚め
「今、何が起こったのですか?」
「ふむ……そうだな」
頭の中を整理するべく、カルムはかちゃりと眼鏡を押し上げた。
「裏への入り口を探せと言われたので、まずは辺りを観察した。この部屋にあるのは扉だけだ。そして、扉には〝二重円〟の紋様が刻まれている」
――そう。
カルムが目を付けたのは
「この二重円は、ダンジョン始点の戸棚にも描かれていた――あの時は〝戸棚の奥に階段があること〟を示すサインなのだと思ったが、時系列を考えれば実情は全くの逆。戸棚を動かし、例の紋様が現れたことで階段もまた現れた」
「! つまり、この図形は内部に描かれた何かを実際に出現させる魔法陣のようなものだと。……ですが、カルム様。戸棚と違って、扉の二重円には〝中身〟がありません」
「その通りだ。故に、この先へ進むには階段の図形が必要だった」
言って。
「ぁ……」
カルムが広げてみせたのは、つい先ほどまで円形の窪みに押し付けていたダンジョンの地図だ――秘宝〈
呆然と目を見開くダフネに向けて、カルムは解説を続行した。
「〈天雷の小路〉は入り口から終点まで右、左、右、左、と互い違いに折れ曲がるような構造だ。これはまさしく階段の形に他ならない――つまり、
「……よく、あの速さで思い付きましたね?」
「? いいや、実はもう少し前から予想していた。……道中、ダフネに守られていたおかげで暇を持て余していたからな。【
「【
「ああ、第五次解放だ」
「――――――ごっ」
カルムの返答に今度こそ絶句するダフネ。……第五次解放、と言えば、その時代で数人しか遣い手が現れない各系統の
……いや。
この手の謎解きギミックに限って言うならば、あるいは――。
「ふっふっふ……」
カルムが不思議な感覚に支配される中、ダフネの隣に立っていた高貴なる王女、もといスクレがいかにも嬉しそうな笑みを零した。そうして彼女は、人差し指をそっと自身の唇に触れさせながらパチリと可憐なウインクをしてみせる。
ボブカットの金糸がさらりと揺れた。
「今のうちに予言しておくよ。
♭♭ ――《side:????》――
『きゅー……きゅー……、きゅあ?』
オルリエール王城地下ダンジョン〈天雷の小路〉。
その〝真の姿〟への挑戦権を獲得した人間が現れた瞬間、彼女は目を覚ました。
彼女、と言っても人間ではない――ただし、魔物でも有り得ない。
マスコットじみた二頭身の白い身体に、ぺたりと地面へ垂れる薄紫の長い耳。うさぎを思わせるモコモコとした毛並みを覆うのは、耳の色に似た紫電である。半透明で幻想的な容姿は、その生き物が〝お
続けて声、あるいは鳴き声、あるいは〝音〟が紡がれる。
『ティフォンに、お客さん? ……
――裏ダンジョン〈天雷の小路〉の最奥。
共に目覚めた無数のギミックを眺めながら、歓喜した彼女はふるりと身体を震わせた。
『
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~~
次話は【12/22(日)20時】更新予定です!
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