夕暮れの部屋で
僕の空は
あの狭い部屋の中で
君との少ない会話に閉じ込められている
夕暮れの差し込む
かすかに風が吹く
もう
知っていたのだ
君がどこに行くのかも
でも
どこに僕の言葉があっただろう
その横顔は
悲しい信仰のように
今も
僕の瞳の奥で
灰色に輝く
来なかった明日を見送るように
それは
虹色に輝く一基の墓標
残りすくない僕の心のかけらを
そこに振りまこう
君の名前も
君の影も
君の声も
僕にはもういらないのだから
あの頃の流行り歌が流れる
僕はあれから何をしていたのだろう
心にもない
言い訳を自分にしながら
誰にも心を与えなかったじゃないか
だから僕は笑う
自分も
そして自分にこれから起こる恋の顛末にも
それが
たとえ残酷な沈黙を隠していたとしても
笑うしかないのだ
行き倒れた
僕の恋
僕は拾わない
それは暗いアスファルトで
雨に濡れ、
黒く染まり流れてゆくから
それを見つめて
僕は嘘をつくだろう
それは僕のものではないと
物語は
君の退場で
終わったのだと
そう、人に語るだろう
そうして
僕はまた自分の中の灯りを
消す
あの二人の部屋は
今も
あるだろうか
どこよりも明るい
暖かな日差しの当たるあの部屋は
ドアを開けると
そこには何かがあったのだろう
それに気づけなかった僕には
もう
生きる糧は失われていたというのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます