列車
その時のことを覚えている
あの日
僕はいつものように駅までの道を歩きながら
考えていたのだ
校舎の窓は明るく
それを背中に感じながら
もうすぐその明るさは
思い出にかすかに薄暗くなっていくのだと
僕は踏み切りで
轟音とともに
目の前を通り過ぎていく列車を
ぼんやりと見ながら
夕焼けを待っていた
知らずにうつろう自分の光を共振させながら
そこには
ただ灰色の道が敷かれていて
何の約束も無く
僕の背中を押していくものがあるだけだった
改札をぬけてホームの端で
一人で列車を待ちながら
僕はひそかに微笑む
明日への裏切りを計画していたからだ
あの校舎の明るい窓は偽りで
僕はその罠にはまりかけていたのだ
信じられるものはそこには無い
それはもう残骸に過ぎない
赤い夕日は僕を傍らの道に誘う
列車がホームに入り、僕は乗り込んだ
好きな子を思いながら
ろくなことの無い明日から愛をこめて
ささやかに告白する。
何もかも大切なものが
馬鹿馬鹿しく失われていくことも知らずに。
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