幕間 ホラーゲーム配信atリオンチャンネル
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【ホラーゲーム】3人いれば怖くないwith佐紀音、俊也 #リオン配信 #バックルーム#リオン肖像画 #ハルカなる
俊也に勧めてもらったゲームやります。どうやら難しいらしい。長期配信覚悟!
蔵屋敷リオン【ハルカなる三期生】
6792人が視聴中 0分前に配信開始
チャンネル登録者82万
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今宵のホラーゲーム配信は、リオンのチャンネルのもとで行われることになっている。
年越し配信以来の三人の集結に、リオンチャンネルのリスナーたちは期待を膨らませていた。
「はい、【ハルカなる】三期生の蔵屋敷リオンでーす。よろ」
「こんにちわー!お邪魔させてもらってます、リオンのズッ友、カメリア・佐紀音でーす」
「……俊也です」
【きた!】
【こんばんわ】
【バックルーム!】
【今北産業】
【リオさきしゅんや ホラー配信 今始まる】
【俊也暗いwww】
いつもの挨拶を交わした三人は、さっそく、ゲームへと移行した。
配信主のリオン、ホラーが苦手の佐紀音、すまし顔の俊也がそれぞれ操作するキャラクターたちは、唐突に、黄色い部屋に放り込まれた。
――謎を解き、化け物に追われて逃げながら、この不気味な黄色い部屋から脱出することが、ゲームクリアの条件である。
「わ!何!?」
「ゲーム始まっただけだよ。さきねぇビビり過ぎ」
早速、小さい悲鳴を漏らした佐紀音。
「リオンさん、この人、置いていきましょう」
「そうだね。ビビりさんは、役に立たないから」
「じゃあな、さきねぇ」
二人が操作する黄色い服の作業員が、柱の向こう側に走っていってしまった。
「ああああ!!待って置いてかないで!!」
走りながら、視点がぶれる佐紀音。
一人になったら、きっと怖い思いをするだろうと、焦燥に駆られた彼女は、ようやく、俊也とリオンに追いついた。
佐紀音は『この人置いていきましょう』と
「ねぇぇぇぇぇぇぇ!!ひどいって!!」
佐紀音のあまりの焦りように、俊也は「ふっ」と短く笑い、リオンは「よしよし」と、我が友に寄り添った。
【草】
【www】
【俊也いじわる】
【さきねぇ泣いちゃった】
【リオン様やさしい】
【リオン様も置いていっただろ】
そんな感じに、配信が幕を開けた。
三人は、どこまでも同じような景色が続く黄色い部屋からの脱出を試みて、周囲を散策する。しかし、鍵のようなものも、出口らしき扉も、見当たらない。
すると、一行を先導していたリオンがタンスの中に、何かを見つけた。水やコーラのボトルにも、薬品が入っているボトルにも見えた。
「ナニコレ?」
リオンは、エメラルドグリーンの瞳をパチパチとさせて、このゲームの有識者である俊也に尋ねた。
「これは、【アーモンドウォーター】っていうアイテムで、要するに、気力を保つために飲むものだよ。気力がゼロになると、死んじゃうから、気をつけてね」
「わああ!じゃあ、早く飲まないと!!」
気力のメーターの表示が減少していた佐紀音が、優先してアーモンドウォーターを飲んだ。まだ余力がある俊也とリオンは、残りのアーモンドウォーターを手持ちのインベントリに持っておいた。
タンスの前で小休止した三人は、探索のため、再び歩き始めた。
「二手に分かれてる……」
細い道の突き当りは、T字になっていた。
「ねぇぇぇ嫌だ、一人になりたくない!!」
「じゃあ、俺が一人で右行くよ」
佐紀音は、おもちゃをねだる子どものように、駄々をこねた。
仕方なく、俊也が右に。佐紀音を連れたリオンが左に行くことになった。
リオンの配信画面から、俊也が消えて、彼の「雪~の進軍……」という歌声も小さくなっていく。
このゲーム、他のプレイヤーと距離が遠くなれば遠くなるほど、ボイスチャットの音量が減少するシステムである。
「なんであの人、ホラーゲームで、鼻歌うたってるの!?信じられない!怖いお化けを呼び寄せるかもしれないのに!」
「さきねぇ、ちゃんと付いて来ないと、迷子になるよ」
「はいいいい!!ちゃんと付いていきます!!」
リオンに急かされて、佐紀音は、慌てて走り出した。
その後、数分間歩き続けて、ようやく光明が見えた。
「あ、『階段の部品』だって!」
リオン・佐紀音ペアが発見したのは、床に落ちていたアイテムだった。表示された文字は英語だったが、リオンが翻訳して読んでくれた。……佐紀音は、英語が苦手。
周囲を一瞥した佐紀音も、階段の部品を発見して「リオンちゃん!こっちにもあるよー」と呼んだ。
――そのとき、黄色い空間に、化け物が発したであろう、甲高い声が響き渡った。
「ねぇぇぇぇぇぇ嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その化け物の声と共鳴するように、佐紀音の悲鳴が響いた。彼女はヘッドホンを置いて、マウスから手を離し、目を瞑ってしまった。
動かない佐紀音の操作キャラクターを、リオンが慰めた。
「大丈夫だよ~私たちのところは、問題なさそう」
「ぅぅ……でも、俊也がヤバいかも……」
「そうなんよ。俊也くん、一人なんよ」
「合流しようよ……やっぱり、たくさん人がいたほうがいいよぉぉ……」
再びマウスを握った佐紀音は、若干、涙声だった。震えていて、語尾が弱々しくしぼんでいた。
化け物がどこにいるか不明。俊也の行方も、気になるところ。
リオン・佐紀音ペアは、残りの階段の部品の回収を兼ねて、俊也の捜索に乗り出した。
すると、壁の向こうから、俊也の声が聞こえてきた。なにやら「おおおおお!」と、気分が高揚している様子。
「俊也!?聞こえる!?」
「俊也くーん、そっちにいるの~?」
佐紀音とリオンは、操作キャラを、俊也の声が大きくなりつつある壁の向こう側へと移動させた。
壁の向こうには、こちらに走ってくる俊也の姿が。
彼は背後に、恐ろしい化け物を伴っていた。
黒い針金の集合体のような化け物だった。
「おーい、連れて来ちゃった、助けてくれぇぇ」
「ぎゃああああああああ!!!来ないでええええええええ!!!」
佐紀音の絶叫と、化け物の「ギャオオオオン」という咆哮とが二重奏を演奏して、阿鼻叫喚の地獄の様相を成した。
リオンは冷静で「こんな子、ウチじゃ飼えません」と言って、佐紀音と俊也を置いて、そそくさと逃げ出した。
一方、恐怖に思考を支配されてしまった佐紀音は、パソコンの前から離れて、ヘッドホンを外してしまって、いよいよ、化け物に食べられてしまった。
「うわああああああ終わったあああああああああああ!!!!!」
【草】
【うるさ】
【鼓膜破れるwww】
【さきねぇうるせぇ】
【絶叫助かる】
佐紀音の画面には、【GAME OVER:あなたは死んでしまった】の文字が。
怖がりの佐紀音を伴っての探索は、かなり難航したが、リスナーたちは、彼女の絶叫を聞くことができて、大満足であった。
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