第24話 年越し人生ゲーム3
人生ゲームは、リオンと俊也優位に進行した。
ゲームプレイ画面には、『ケンジは、リオン様に300万円の借金をしてしまった!!』という、ケンジがアンラキーマスを踏んでしまったことを示す文字が映し出されていた。300万という数字が、紫色に光り輝いて、大きく強調されている。
「いえーい!ケンジおじさんから、いっぱい貢いでもらっちゃった♪」
「……ただ真面目に生きているだけで、この仕打ちとは、いったい、どういうことですか」
ただ淡白に、声の抑揚や感情の起伏乏しく不満を漏らしたケンジは、楽しんでいるのか、楽しんでいないのか……しかし、ときどきニヤけ顔を覗かせる。
他の三人と比較して異質な雰囲気を醸すケンジは、リスナーたちに好評だった。
【言葉の重みが違う】
【ケンジさん、顔、笑ってます】
【ニヤけてるww】
【草】
【顔にいっぱいシワ作ってください】
ゲーム中盤、資産では、アイドルのリオンが1億6000万円で一位。平社員の俊也が6000万円で二位。医者の佐紀音が4000万円で三位。俳優のケンジが-300万円で四位となっている。
「なんで、医者のウチより、平社員の俊也がお金持ちなの?おかしくない?」
「【子どもエリア】で勉強ポイントめっちゃ集めたから、大企業に就職できたんだと思う」
「俊也さん、ゲームの中ぐらい、堅実でなく、夢を持ってみませんか」
「アハハ!結局、人生って、運のいい人が勝つんだよ、私みたいにね♪」
紆余曲折あった人生ゲームも、いよいよ最終盤。
4人が老齢期を終えて、結果発表がやってきた。
4位、ケンジ。総資産300万円。俳優。売れない俳優として、生涯をまっとうした。
3位、俊也。総資産4500万円。会社の部長。家と妻、一人の子どもあり。コツコツと貯金した甲斐があって、多くの資産を築いた。
2位、さきねぇ。総資産7200万円。家と夫、二人の子どもあり。病院の院長。医者として、多くの人の命を救った。私生活も、順風満帆。
1位、リオン様。総資産2億4000万円。マンションと、海外別荘あり。歌手。度重なる苦難に耐え抜いて、国民的アイドルへと登り詰めた。歌手に転身後も、人気は衰えず、大金持ちになった。
【お疲れ様】
【おつ】
【楽しかった】
【ケンジさんの売れない俳優感】
【¥20,000:みんなリアルでも幸せになってくれ】
【¥50,000:さきねぇ出産おめ】
【格差えぐいww】
【リオン様すご】
【なんだかんだ俊也が平凡で一番幸せそう】
【¥200:おつさきねぇ~】
約2時間に渡る戦いの結末を見届けた、総勢5万人のリスナーが、一斉に感謝や歓声、スパチャをコメントから贈った。
すると、配信に載せていた時計が、もうすぐ午前1時を示しそうなことに、俊也が気が付いた。
「あ、もう年越してるじゃん」
「もう1時ですか」
「夢中になり過ぎて、気づかなかった……」
「いや、リオンは、お酒のみ過ぎて酔って気づかなかっただけでしょ」
机に突っ伏していたリオンがガバッと起き上がって、デジタル時計を見ていた。危うく、素顔が配信画面に映りそうになって「おっとっと……」と慌てて、酒の空き缶をガラガラと崩壊させた。
そして、新年といえば、抱負の発表。
「みなさん、今年の抱負とか目標は、どうですか?」
佐紀音が、ゲームのタイトル画面に戻しながら訊いた。
「ちなみにウチは、登録者100万人を目指すことかな。みんな、応援よろしくね」
【さきねぇなら、やれる!】
【頑張って!】
【今のペースなら、いけそう】
【配信中に70万人超えてる!?】
「俺は……そうだな……来年をしっかり生き残ることかな」
【www】
【草】
【俊也らしい】
【なんて謙虚な】
「私は、結婚したい。お金持ちと」
【ww】
【リオン様!?】
【欲望丸出しで草】
【最後のは蛇足】
【事務所的には結婚OKするのかな?】
「わたしは……俊也さんと同じで、生き残ることです。まだ逝く気はありません」
【草】
【高齢者ケンジ】
【年金生活者ケンジ】
【お体労わってあげて】
【お元気でなにより】
【ケンジさんのユーモアセンス高い】
【ケンジさんまだまだお若いです】
そして、四人で声を揃えた年けの挨拶で、配信の締めとした。
「「「「あけましておめでとうございます!!!」」」」
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