第5話 最強ネクロマンサー、魔王に気に入られる

 魔王の城に来たと思ったら、僕が魔王にならないかと言われた。


 一体何が起きてるんだろう。


 それにこんな綺麗な女の子が魔王? 全く想像していたイメージと違う。


「あぁー…シオン、魔王様は将来有望な者にはたまに冗談でそういったことをおっしゃるのだ。深く気にしないでくれ」


「あぁ、そういうことですか」


 危ない、真に受けて呆然としていた。


「まぁ、そういうことじゃな。突っ込み待ちだったのじゃよ」


「そうだったんですか」


 …魔王って、初対面で突っ込み待ちをしてくるものなのか。


「それにしても黒騎士、よくやってくれたな。まさかシオン殿を仲間にして連れてきてくれるとは…苦労したのではないか?」


「いえ、正直なところ苦労はしなかったのですよ。あっさり仲間になることを承諾してくれました」


「ほぉ、それはなぜじゃ?」


「どうも、彼は自分のパーティーのアンデッドたちから散々な扱いを受けていたようです」


「どういうことじゃ??」


「どうも、シオン殿は自分のアンデット達を完全に支配していなかったようです。そのアンデッドたちも自分たちを生きていると思い込んでいるようで、彼はそのパーティーの中では雑用役をやらされていたそうです。どうも散々な目にあわされていたようです」


「それはまた奇妙な・・・となると、そのアンデッド達はどうなっているのじゃ? 連れてきたのか?」


「それが、僕はちょうどそのパーティーから追い出されちゃったところを黒騎士さんに誘ってもらったんだ…ました」


「ふふ、そうかしこまらんでもよい。気さくに話してくれていいのじゃぞ。アンリと呼んでくれ、なにしろ同じネクロマンサーなのじゃからな」


「え!? 魔王って、いや魔王様ってネクロマンサーなの…!?」


「アンリとよんでくれなのじゃ」


「え?」


 …あ。


「アンリ様」


「まぁよいじゃろ。初対面であくまでも礼節を保とうとするその謙虚さは評価するぞ。それともシャイなだけかの? それにしてもシオン殿は面白いのぉ、まさかネクロマンサーが自分のアンデッドから反旗を翻されるとは…そもそもアンデッドとの契約を無意識で行うということ自体が珍しい…小動物でなら聞いたことがあるが、人間での話はこれが初めてじゃ」


「僕もまさか、あの三人がアンデッドだなんて思わなかったよ。だって生きてるようにしか見えなかったし」


「それだけシオン殿がネクロマンサーとして優れているということじゃな。優れたネクロマンサーほど、蘇らせたアンデッドは生者と区別がつかないという…といっても普通なら、顔が青白かったり、目に光がなかったりと特徴があるし、それがなかったとしても、我々魔族なら、感覚でわかるのじゃ」


「そうなんだ…僕にはわからなかったけど」


「それだけシオン殿が優秀ということじゃ。いやーそれにしてもうれしいのー、私より優れたネクロマンサーが仲間になってくれるとは…、これで後継者もばっちりじゃな」


「…後継者?」


「魔王様! そのことは今はまだ内緒にしておいた方がよろしいかと」


「おっと、確かにすこしばかり気が早かったのぉ、シオン殿、今言ったことは忘れておくれなのじゃ」


「はぁ、わかりました」


 後継者かぁ。なんのことだろう。魔王軍でなんかの役職があいてるとかかな?


「まぁ、とりあえず黒騎士から幹部としての役割を教えてもらうといい。時々、ここに顔を出してくれると嬉しいのじゃ」


「わかりました!」


「おっと、そういえば一つだけ伝え忘れておった。シオン殿は今契約してる戦闘用のアンデッドはおらんのじゃろう?」


「そうですね。偵察用の小動物しか…」


「あとで、何体かめぼしい英雄の遺体を送ってやろう。使役するといい」


「えぇ!?」


 いやそれはどうなんだろう。人間の遺体をアンデッドとして使用することは王国の法律では禁止されてるからなぁ。


 いやでも、もう魔王軍に入ってるから、関係ないのか。かといって、死体を送られても正直困っちゃうな。かといって断るのも、魔王様に失礼だし。


 ここはあいまいな愛想笑いでごまかしておこう。


「あは、そ、それは助かりますけど…気を使っていただかなくてもいいんですよ。自分のアンデッドは自分で探すべきだなぁなんて思ったりしてまして」


「ほぅ! 立派な心がけじゃのぅ…だが、魔王軍に入ったくれたせめてものお祝いとして送らせてほしいのじゃ。気に入らなかったら、返してくれればよいからのぅ」


 なんか魔王様…アンリ様の好感度が上がったみたいだけど、どうやら英雄の遺体が送られてくるのは確定みたいだ。


「では、また会おうぞ。私はシオン殿がとても気に入った。また気軽に会いに来てくれなのじゃ。ネクロマンサー同士、語りあかそう」


「はい!」


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