第4話 最強ネクロマンサー、魔王と対面する
ドガっという衝撃音で目を覚ました。
「あれ?何かあったんですか?」
「青白い顔をした男が抜き身の剣を担いで、馬車に入ってきた。おそらく盗賊か何かだろう。軽く撃退しておいたよ。おそらく元は落ちこぼれの冒険者か何かだろうな…それなりに良い装備を着ていた。待てよ…あの顔どこかで見たことがあるような…まぁ、いいかか覚えていないと言うことはどうでもいいことだっただろう」
「いやぁひやひやしましたよ、人間にこっちの正体がばれなくてよかった…まさかあの盗賊達もこの馬車が魔王軍の幹部を運んでいるとは思っていなかったでしょうよ」
「それより、疲れているんだろう? 起こして悪かったな、寝ておけ」
確かに疲れている。あの三人と冒険していたときはほとんど休み無しで、こき使われていたから、常に睡眠不足だった。
それに仕事が終わって疲れて寝ていても深夜クロスやドロシー、レミリアの誰かの機嫌が悪かったりすると、たたき起こされて、何か雑用を命令されることも頻繁にあった。
だから、寝ていても気が休まるときがなかった。こんな風に優しく寝ていていいなんて言われたのはいつぶりだろう。実家に住んでいた時いらいだろうか。
そういえば、両親は元気だろうか。
冒険者として忙しくしている間は、ろくに連絡もとれなかった。落ち着いたら、連絡をとりたいなぁ。魔王軍の幹部になっちゃった僕を許してくれるだろうか。
「魔王城についたら、起こしてあげよう。それまでゆっくり休め」
「わかりました…スー」
「寝るの早いな! ふっ、…よほど疲れていたのだな」
それからしばらくすると、また黒騎士さんに起こされた。
「起きろ、ついたぞ。魔王城に」
「ふあぁ…ありがとうございます。」
僕と黒騎士さんは馬車から降りた。日はすでに暮れかけていた。
目の前には噂で伝えきく、魔王城の門があった。ここまでたどり着いた冒険者はほとんどいないとい聞いたことがある。そんな場所に僕はいま来てるんだ。
その仲間になるものとしてだけど。
「こんなに早くつくなんて凄いですね。あの街からここまでけっこう距離があったはずですけど」
「また妙な輩に絡まれないように馬達に飛ばしてもらいましたからね」
「なるほどな」
「では、黒騎士様、私は再び人間の街で馬車の御者のふりをして、情報を集める任務に戻ります」
「うむ、頼んだぞ」
御者は深くお辞儀をすると、馬車に乗り込み、元いた町の方に馬車を進めて帰って行った。
「さて、まずは魔王様に挨拶しにいくか。君が仲間になったことを報告しなくてはな。きっとお喜びになるだろう」
魔王か…どんな人なんだろう? 魔王は人類の敵で、厄災と呼ばれている存在だ。
「何を話せば良いんですかね?機嫌を損ねたら殺されるとか…ないですか?」
「そんなことはありえないから心配するな。君と魔王様は共通点も多いから、話もあうはずだ」
僕と魔王に共通点…?
不思議に思ったが、詳しく聞くことは出来ず。とりあえず黒騎士さんの後について、魔王城へと、入っていく。
露店では、様々な種族がにぎやかに交流している。ここはどうやら、単なる城ではなくて、そこに大勢の人が暮らしている城塞都市のようだ。中には、様々なモンスターもいるが、それ以上に、亜人や人間が多い。それに雰囲気もとても明るく、僕が想像していた魔王城のイメージとかけ離れていた。
小さな子供が泣いていたら、それをあやす人もいる。
こんな雰囲気を作っているのが魔王の統治によるものだとしたら、もしかするといい人なのかもしれない。
というか、そうであってほしい。
「あ! 黒騎士様が帰ってきた!おかえり! お連れの人はもしかして…」
かわいらしい獣人の少女が黒騎士さんの元へ駆け寄ってきた。尻尾と耳がぴょこぴょこ動いてる。
「うむ、この者が君が仕える予定のネクロマンサーのシオン殿だ」
「おぉ! じゃあ仲間になってくれたんだ!! 初めましてシオン様、私は獣人族のミミです。貴方の専属シェフになるんだよ! 期待しててね、胃袋をつかんで離さないからね!」
獣人族のシェフ…?
「不思議そうな顔をしてるな。無理もない。人間共からすれば亜人や獣人は奴隷階級。それがシェフをしているなんて…といったところか? だが、獣人のシェフは最高だぞ、考えてみろ。料理人とって大事なものは、舌と鼻の鋭敏さだ。その点において、獣人は人間よりも遙かに優れている。実際に、獣人の作った料理を食べたら驚くぞ。二度と人間の作った料理など食べたくないと思うほどに差がある」
「そうなんですか…」
ゴクリとのどが鳴った。ミミの作る料理が楽しみだ。
「さて、とりあえずミミと顔合わせはしたことだし、予定通り魔王様のもとへといくぞ」
「わかりました」
大きな塔の前で黒騎士さんが立ち止まった。
「ここに魔王様がいる」
ここが魔王の居城…? 全然まがまがしくない…どころか、荘厳で神聖な気配を感じる。なんか、ちょっと緊張してきたな。
「そう、固くなるな。魔王様は気さくな方だ。きっと仲良くなれるだろう」
黒騎士さんはそう言って、中に入ると、扉を開いて待っていてくれる。
「こんどはクビにならないように頑張ります!」
僕は覚悟を決めて、塔の中に入った。
すると、目の前に屋敷の中にメイド服を着たエルフの女性が現れてた。
僕と目が合うと彼女は、優しく微笑んでくれた。
「初めまして、魔王様のメイドをさせていただいているエルフ族のシルフィーと申します。魔王様の元までご案内しますね」
「よ、よろしくお願いします!」
僕は黒騎士さんと一緒にシルフィーさんの後ろついて塔のらせん状になった階段を上っていく。
エルフの女の人か…人間の国ではエルフはその美しさから、貴族にそういった用途での奴隷として価値が高い。だから、必然僕がこれまでエルフを目にしたのはそういう境遇に置かれた人達ばかりで、彼女たちのほとんどは死んだ目をした人形のようなイメージが記憶に残っていた。
でも、この人は自然な笑顔で、生き生きとした表情でとても魅力的だ。きっと魔王の元で本当のメイドとして、働いているんだろう。
「足元に気をつけてくださいね」
しばらく階段をあがり、塔の最上階あたりのフロアに出ると、ひときわ大きな扉の前でメイドさんが立ち止まった。
扉は開かれ、僕と黒騎士さんが中に入る。
目の前には、大きな外套を羽織り、鎧を着た骸骨がいた。こ、この見た目は…ノーライフキング。アンデッドの中でも最上級、神話の中の怪物とされている不死者の王。
この人が魔王なのか。
僕はその威圧感に思わず、ひざまずく。
「は、はじめまして! ネクロマンサーのシオンです。 えーと・・・この度はネクロマンサーの僕を仲間に誘っていただき、ありがとうございます」
「何をしておる? それは飾りじゃぞ」
「え?」
そういわれて声をした方を向いてみると、そこには長い黒髪の美少女がいた。
「初めましてじゃな。ネクロマンサーのシオン殿、私が魔王のアンリなのじゃ! 私は貴方を歓迎するぞ!! 早速じゃが、わしの代わりに魔王になる気はないのじゃ?」
「へ?」
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