第3話 Sランクパーティーの崩壊(1)【クロス視点】★

 足手まといのシオンを追放した俺様達はその後、宿屋に泊まった。




 今日もいつものように、ドロシーとレミリアを抱こうと思ったのだが。




「なんか、お前ら二人とも臭くないか?風呂はいったのか?なんか腐臭がするんだが…」




「なにいってんの!冒険の後なんだからもちろん入ったよ…クロスこそ!なんか顔色がめっちゃ青白いよ?」




「たしかに…それに今日の冒険で負った傷が治っていないようですね。クロスさんだけではなく、私とドロシーも」




「そういえば…何故か…体が重いような気がする…おかしいな。シオンがいなくなってむしろ気分はよくなってるのに」




 シオン…何故かあいつといるときはアイツから謎の威圧感を感じていた。俺様が他人に足して威圧感を感じるなんてあってはならないことだ。だから、アイツにはめちゃくちゃむかついていた。あいつを追放した後は、何かから解放されたような感覚があって、気分はすっきりしたが、それから何故か体調が悪いような気がする。




 おかしい…これまでどんな厳しい冒険をしても、一日休めばどんな怪我も勝手に治っていたのに。ドロシーとレミリアも同じだった。最初は何故そんなことがおきるのか不思議だったが、先輩冒険者に自然治癒の加護に目覚めたのだろうと教えてもらった。




 そういえばこの加護に目覚めたのは、あのシオンと出会ってからだったような気がする。




 まさかあいつが何かしていたのか? 俺達が夜寝ている間に治癒をしていたとか? いや、あいつはヒールもまともに使えない無能だ。




 そんな訳がない。




 …わかったぞ! ディアボロスだな!!




 あの魔王軍の幹部にはおそらく自分を倒した敵に対して、怪我が治りにくかったり、加護の阻害したり、何かしらマイナスな効果の呪いをかけることができたに違いない!




 そうとわかれば、街の教会で呪いを解いてもらうしかないな。




 俺様は二人を連れて、教会にいくことにした。




「教会にくるのは久しぶりだな…」




 教会は、怪我をした冒険者を治癒をしてくれたり、呪いをといたりしてくれる場所だ。自然治癒の加護に目覚めてからは来ることはなくなっていた。




 それに、ネクロマンサーを教会は嫌っているので、シオンをパーティーに入れている時は街でシスターに出会っても嫌な顔をされたからな。




 それでナンパを失敗したこともあるし、まったくあいつには足を引っ張られてばかりだったぜ。




「おや、あなたがたは確か【クロスオブゴッド】のお三方ですね。何のご用ですか?」




 俺様の前に現れたのは黒い修道衣をまとった、銀髪のシスターだった。綺麗な顔となかなかいいスタイルをしてるな。後で口説いてみるか。




 今ならシオンもいないから、それを理由に断られることもないぞ。




「あぁ!!その通りだ、実は魔王軍の幹部を倒したときに呪いをかけられてしまったみたいで、怪我が治らなくて困ってるんだよ。治療費を払うから、怪我と呪いをといてもらえないかな?」




「それは大変ですね!わかりました!!では、当教会で最も腕利きの治癒師である、私シスターアリアが貴方達を治療しましょう」




「おぉ、それは助かる!」




「良かったね」




「これでまた冒険に出られますね」




シスター「ではいきますよ、怪我と状態異常を同時に治す高等魔法です…デホマ!!」




三人「「「ぎゃああああああああ!!!!!!!!!」」」




 い、いてぇ!! めちゃくちゃ体が焼かれるようにいてぇ!!!




「何しやがる!!」




 俺様は思わずシスターを突き飛ばす。




「きゃあ!!」




 このシスターふざけやがって…俺達に攻撃魔法をしかけてくるなんて…まさかシスターのふりをしたモンスターか?その可能性はありうる。なにしろ俺様はレアクラス【勇者】でSランク冒険者パーティーのクロス様だ。




 魔王軍にとっては驚異だ。なるほどな…、そうとわかればこの場で切り捨ててやるぜ。




 俺様は剣を抜いた。




「な、なんのつもりです」




勇者「俺様にはお見通しだぜ、お前モンスターがシスターのふりをしてるな!!」




「はぁ?」




「クロス…どういうこと?」




「苦しい…この激痛はどういうことなのクロス?」




ドロシーとレミリアは戸惑っているようだ。俺様と比べて理解力のひくい奴らだ。




「俺様達を脅威に感じた魔王軍がシスターのふりをして、俺達を治療するふりをして攻撃魔法をかけてきたんだ」




「なるほど~そういうことねクロス頭良い~」




「それなら納得がいきます」




「私は確かに回復魔法をかけたのですよ?」




「ふざけるな!!それなら何故こんなに痛いんだよ!!」




「馬鹿な…回復魔法を痛がる人間など存在しませんよ…そんな存在がいるとしたら…まさか…!! 貴方達アンデッドなのですね!! どうりで生ゴミのようなにおいがすると思いました!!」




「は? お、俺様が生ゴミだと…?」




 か、完全にぶちぎれたぜ!! 




「まさか、人間の冒険者のふりをして教会を襲ってくるアンデッドがいるなんて…恐ろしい! 聖騎士達よ、この者達を殲滅しなさい!!」




「ちっ、なにをわけのわからないこと!!モンスター共が…教会を支配しているとはな…! 世も末だぜ!!」




 シスターのよびかけにこたえて教会に雇われている聖騎士達が現れた。この聖騎士達は、教会に治療を頼んで、報酬を払わない冒険者から力尽くで、金を取り立てることを生業としている。たしかAランク冒険者程度の実力があったはずだ。




 だが、俺様達はSランク冒険者!!普通にやれば絶対負けるはずがない。




「ドロシー、レミリア!! こいつらをぶっとばして、国王に教会がモンスターにのっとられてることを報告するぞ!!」




「わ、わかった!!」




「私達はクロスに従うだけです!」




 俺様達は勇敢に戦いを挑んだ。




 しかし…。




「なんでだ?なぜ劣勢になる…?」




 確かに相手はAランクの実力者だが…俺達はSランク、本来の実力が出せれば圧倒できるはずなのに。俺達三人は明らかに劣勢だった。




 俺もそうだが、ドロシーも、レミリアも明らかに本調子ではない。




「アンデッドの化け物共め!!ここで成敗してくれる!!」




「油断しないでくださいアンデッドとはいえSランク冒険者パーティーだったはずです」




「それは知っていましたが、こうやって手合わせしてみた感じ、せいぜいCランク冒険者程度の実力だと思いますよ。我々からすれば雑魚ですね。これなら普段取り立ててる冒険者の方がまだ歯ごたえがあります」




「おかしいですね…力を隠しているのでしょうか?」




「俺様がCランク冒険者の雑魚だと…!?」




 コンディションさえ悪くなければ、こんな奴ら余裕なのに。




「ドロシー、レミリア!!ここは一旦引くぞ!!このままじゃ分が悪い」




「わかった!!じゃあ転移魔法を使うね!!」


 


 俺様達三人は一カ所に集まって、ドロシーの転移魔法でひとまず街の外に転移した。




「ちっ、やっかいなことになったな。まさかあの街の教会がモンスターの手に落ちているとは…」




「大変だね、これからどうする?」




 と、ドロシーが俺に聞いてきた。そんなの俺様が知るか。




「私に案がありますクロス」




「なんだ?」




「私の伯父がテラシアという街で教会に勤めているのです、その方のツテで腕利きの治癒師を用意してもらいましょう」




「なるほど…確かにおそらく教会が支配されてるのはあの街ぐらいだろう。いくらなんでも教会全体が支配されてるとしたら、さすがに誰かが気づくだろうからな。そしてレミリアの伯父なら信用できるだろう。その案採用してやるよ」




「ありがとう!クロス!!」




「そうと決まったら、その伯父さんがいる街までいく?」




「そうだな、ドロシー、もう一度転移魔法で飛べるか?」




「あ~…ごめん、実はもう今日は魔力切れかも…さっきの転移魔法で」




「は?たった1回で?」




「うん…いつもならあんなのなんてことないんだけど…もしかすると教会転移魔法を阻害するような結界があって、そのせいで余計に魔力がかかっちゃったんかも」




「なるほど…その可能性はあるな」




「ならば、とりあえず馬車か何かで移動しませんか?そんなに離れた場所ではないので、馬車なら一日もあれば移動できますよ」




「そうするか…」




 俺様は街の外から出てくる馬車を呼び止めた。御者が怪訝な顔をしている。




「なんだい?」




「実はテラシアの街までいきたいんだが、乗せていってくれないか?」




「悪いけど、もうすでに客を乗せてるんだ。街の中でこれから出る馬車を探したらどうだい?」




「それは…」




 おそらくそれはまずいな。あの人間に化けたシスターはおそらく俺様達との戦いを、衛兵に報告しにいくはず。あいつらがモンスターなのは俺様達しか知らないから、指名手配されるはずだ。




 この呪いをといて、あいつらの正体をあばくまではあの街には戻れない。




「じゃあね、悪いが先にいくよ」




「ちょっと待ってくれ、乗ってる客と交渉させてもらえないか?それで、俺様達を乗せてくれるように頼んでみるよ。あんたにも金を大目に払うし!急いでるんだ!!」




「は?いや困るよ…」




「まぁまぁ、いいじゃねぇか」




 俺様は剣を抜く。今は一刻を争うときだ。素直に応じてくれればいいが、もしも応じない場合は無理矢理にでも馬車をゆずってもらわないとな。




 もしも綺麗な女なら同席して、口説きながら、テラシアの街にいってもいいかもしれない。




 そんなことを考えながら、馬車の客席に入ろうとする。ちらっと黒い鎧を着た騎士風の女の姿が見えたと思った瞬間…顔面に強烈な衝撃を喰らって、吹っ飛ばされた俺はそのまま意識を失った。


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