第30話 剣術勝負
少し時間が経って、生徒たちがいっせいに突っ込んできた。集団で突っ込んで数の利で押し切っていこうという戦略なのだろうか。
とはえいえ付け焼き刃の連携ならそこまで怖くはない。
バラバラに襲い掛かってきた生徒たちの攻撃をかわし、返しの攻撃を入れる。吹き飛ぶ生徒。
時折遠くから愛奈の攻撃で相手を倒していく。そこまで強くないから、一撃で倒れこむ。俺はそいつらに接近し、確実にバッジを破壊。
こっちは、あと2人。緑のロングヘアの髪と女と青い髪の男。
緑の女の子が電撃をこっちに放ってくる。精々Dランクくらいの強さ。愛奈の攻撃で吹っ飛ばす。その間を通って青髪が突っ込んできた。
素早い突きの攻撃を体を横にひねって防ぐ。そして、カウンターを入れるために一気に接近。危険を感じたのか、剣を引き戻そうとする青髪。だが反撃はさせない。
引き戻した瞬間に、一気に魔力を込めて薙ぎ払う。剣の切っ先は体を引いていた青髪の胸の前を通過。パリンという音とともに、バッジが割れる。
これで青髪のバッチを破壊。青髪は吹っ飛んだ後、バッジを破壊されたことを理解しうなだれてしまった。そして、緑の女の子へ。前衛を失った魔法使いなら全く脅威ではない。
スターダスト・ストーム・エアレイド
4割程度の力だが、これで十分。女の子が出した障壁を破壊し、バッジは粉々。これで勝負はあった。後ろを向いて親指を立てると、愛奈はそれに合わせるように同じように親指を立てる。
リズとルヴィアを見たが、善戦しているみたい。集団で襲って来る生徒たちを、ルヴィアが巧みにかわし、リズが遠くから打ち抜く。一応応援に行くか。
そして応援に行って、十数秒ほどで相手を撃破。
「ありがとう、ございます」
「遊希さん。感謝します」
「いいよ」
それから、周囲を見て倒した数のおおよそをカウント。
今日はすでに、7.8人のバッジを破壊した。一気に襲ってきたな、人数的に次の襲撃が最後になるのか。
「愛奈、あと少しだと思う。絶対に先に進もうね」
「うん」
愛奈が強気な表情でコクリと頷く。そうだ、勝って先へ進もう。
あと少し、不意をつかれないよう気をつけないと。
そして、残りの相手を探る。しばらく歩いて、気配を感じた。前から。どんな相手だろうか、気をつけて歩く。気配は全く動かない。
奇襲してこないんだな。ジャングルの中の、開けた場所にただ立っている。2人の人物。
視線が合うと、その人物が剣を向けてきた。一人は、杖を持った黒髪でチョココロネみたいな巻き髪をした女の子。
そしてもう一人、魔力の気配こそ感じないがオーラがすごい。剣を持って相対している人物。
背が高く金髪で、騎士の格好をしている女の人。持ち方や姿勢だけで、かなりの県央でがあるのがわかる。
あれは、誰だろうか。
ルヴィアが俺と愛奈にひそひそと話してくる。
「エステル=フォーラル=ジェラルド。従者の家系出身の人。
剣術では、王国の貴族でも1.2を争う存在といっても過言じゃない」
それだけでなく品行方正で正義感が強い、模範となるべき存在らしい。
エステルの表情が険しくなった。何かあったのかを考えていると、ルヴィアが耳打ちしてくる。
「ルヴィア、剣術は強いんだけど魔法適正が全くないんだ。それで、貴族の人から疎まれてて、立場が狭いんだよ。周囲から疎まれてしまっている感じなんだ」
「本当なのか」
別に、貴族の世界では珍しいことじゃない。
魔法至上主義。保守的な貴族たちにありがちな思考回路。
そもそも、この世界では魔法というのは神様から与えられし者という考えが強く。魔法適正がないというのは、神様から選ばれなかったものであり、価値の低い人間。たとえ、努力してそれを補う強さを手に入れたとしても。
地位が低く扱われてしまう傾向がある。エステルも、そんな感じに扱われているみたいだ。
しかし、エステルはそんなことを気にも留めていないのか堂々とした姿をしている。
「本当だが、戦いにおいてそんなことはどうでもいい。私は、真剣に勝負したい。真正面から戦って、勝利をつかみ取りたい。剣を交えてもらえないだろうか」
後ろもエステルのパートナらしき女の人。黒髪のロングヘアの女の人。気配からして、Dランクレベルとでもいうか。
まあ、そのまま戦っても愛奈と俺なら問題なく勝てそうだ。けど、この人がそこまで戦いというのなら──答えは一つだ。
俺は、強気に笑みを浮かべてコクリと頷いた。
「剣術勝負、受けるよ。純粋に剣で勝負ね」
「身勝手な要望を引き受けて頂いて、大変感謝している。全力で戦わせてもらうぞ」
「全力で来なよ。それを受け止めて、勝つから」
本来、弱点を突くというのは戦いにおいて定石、相方もそこまで高いランクではなさそうだし、高ランクの遠距離攻撃を放っていけばエステルは対抗手段を持てず、こっちが一方的に殴り勝てる展開になる。
けど、エステルがここまで一生懸命戦っていて、剣術を磨こうとしている。その気持ちに答えたい。エステルの全力を真正面から受けて勝ちたい。
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