第28話 ブンブン
戦いが始まる。今のところ生徒の気配はない。初めから激戦にならないよう、人気の少ない所を選んだからだ。
視界が悪いジャングルの中、安全なところがあるといいな。そう考えていると、リズが話かけてきた。
「とりあえず、ブンブンに入りましょう」
「ブンブン?」
ああ、ジャングルならあるはずだ、ブンブン。
王国内のジャングルの中には「ブンブン」という名前の小屋がある。本来ならハンターや移動者の人が使うものだが、あるなら使わない手はない。ジャングルと違って周囲を見れるし、夜になったら寝られる。
長期戦になれば体力面の気配だって重要となる。安心できる場所があるのは、心強い。
「油断したりしなければ、十分勝てるよ」
「ありがと」
そしてしばらく歩いてブンブンに到着。2階建ての、木造の質素な小屋。
気配を探って、誰もいないのを確認してから中に入る。
「一応、中も警戒しておこう」
「そうだね」
中に入ってからは、俺が先頭に入ってゆっくりと中を確認。埃被ったリビングや廊下。特に隠れる場所がありそうなところや物角を確認。
変な動物はいない、中で待ち伏せている人もいない。
「誰もいなさそう。2階に荷物置こうか」
「わかりました」
コクリと頷くリズ。2階の方が外の様子がよく見えるし、生徒が襲って来るであろう玄関からも遠い。
土で薄汚れている階段を登ると、2階に大きい部屋があった。よし、ここを拠点にしよう。
荷物をまとめた後、半分窓の角に隠れてブンブンの窓から周囲を見渡す。
転生時の村のような、鬱蒼としたジャングルがとこまでも続くフィールド。上を見上げれば何層にも重なる樹木で地上は薄暗く、木々があちこちに生い茂っていて視界は最悪。
逆に言えば、草木に隠れて奇襲するのにはもってこいの場所。確実に、視界の悪さを利用して奇襲を仕掛けてくる奴が出てくる。
「遊希君、大丈夫かな?」
愛奈が、不安そうに杖を掴んで訊いてくる。確かに。バッジで勝敗が決まる以上弱い相手でも奇襲を喰らって──という可能性は十分ある。
それに気を付けよう。とはいえ探知魔法を使ってはいるから敵が近付いてくればすぐにわかる。
「大丈夫。俺の魔法で探知するから」
そして、俺は目をつぶって気配を探る。東側に、数人いる。魔力はあまり強くなさそう。
「東側に数人いる。木陰に隠れて、迎え撃とう」
「わかった」
さっきからこっちに向かって来ている。こっちのことを、探知魔法で探知しているかもしれな。待っていると、遠距離攻撃を見舞う恐れがあるし、相手の好きなタイミングで攻められてしまうという事でもある。
向かっていくしかない。
数人の生徒たちが小屋前に現れる。
俺達はブンブンかっら飛び出して、愛奈やリズを気にかけ戦う。
上手くDランク程度の力を使いながら、生徒たちのバッジを破壊。
リズの方も、何度か危うい場面を見せるもののルヴィアがギリギリで防ぐ。そしてリズの攻撃が炸裂。
涅槃なる力・煩悩なる世界から閃光と共に解き放て
──スカーヴァティ(Sukhavati)・フルボルテックス──
真っ赤な、電撃上の強力な攻撃が炸裂していく。
リズの攻撃は、放つたびに大爆発を起こし、周囲にいた生徒たちを丸ごとふっとばしていった。
中には障壁を張って防ごうとする者もいたが、リズの攻撃はそれを破壊してその生徒のバッジを破壊。
粗はあるけど、かなり巨大な攻撃。威力だけならBランクレベルはありそう。
やっぱり、リズはポテンシャルがあると感じる。鍛えれば、相当強くなる。
まあ、粗削りで無駄に周囲の木々を破壊しているんだけど。制御方や、戦い方に関してはまだまだ改善していかないと。
それからも生徒たちが襲ってきた。魔力からしてE~Dランク程度、これなら大丈夫そう。
時折、生徒同士が戦っているのか悲鳴のような言葉か聞こえる。すでに戦いになっているグループがあるのだろう。
倒して、休憩して。それを繰り返して20人ほど倒したところで、日が暮れ始める。
このルールどれだけ倒しても評価や先の戦いが有利になるわけではない。それなら、そこまで突っ込んでいく必要はない。
ブンブンで一晩過ごすこととなる。中に、人が隠れていないことを確認して、うっすらと明かりをつけて食事。
食べられる木の実と非常食のパンや干し肉、ドライフルーツを4人で食べる。
周囲に警戒を配りながら、今日の戦いについて愛奈が話始めた。
「とりあえずは、お疲れさま」
「そうだね」
「うちら、10組くらい倒してない?」
「そうだね。たぶん、このペースで行けば明日には終わりそうだね」
今日は、ここまでになりそう。一応警戒はしておくか。
みんな、俺たちの事を警戒しているようでジャングルに隠れて奇襲しようとしてきたり、集団で四方八方から襲ってきたり策を講じてきた。
明日も、こんな感じなんだろうけど今日を勝ち抜いている分実力のあるやつが来るはずだ。
付け焼刃のチームワークだけど、みんなで決勝トーナメントに行きたい。
愛奈が、明るく周囲に話しかける。
「でも、ルヴィア君もすごかったと思うよ。何度攻撃を受けても返り討ちにして、ちょっと危ない所もあったけど、上手く攻撃に変えて──買ったじゃん」
「まあ、色々と練習してたからね」
ルヴィアは苦笑いして言葉を返す。彼、単純に魔力が強いだけでなく時折手慣れた技を使って来る。本人は謙遜しているが、かなり経験深いというのがわかる。
ランクはCだと言っていたが、本当の実力は確実にそれ以上だ。これなら、問題はなさそう。そう考えて、事が起こった。
パリパリ──。
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