第27話 アカデミーカップ
「人がいっぱいで、時間がかかるね」
「まあ、アカデミーカップ、色々な人が参加するみたいだからね」
何回か行列に並び、愛奈は気疲れしてしまったみたいだ。まあ、何度も並んでいたからな。
俺達と同じ様に大会に参加する人がいっぱいいたので、何度も行列に並ぶ必要があり時間がかかってしまった。
俺達はアカデミーの入り口の受付で、アカデミーカップの手続きをしていた。
受付役の人から渡された紙にサインをし、規約やスケジュールなどの説明を受ける。それが何回か続く。
「ではこれで最後です。同意であればこの紙にサインをお願いします」
係員の人から、最後の紙を渡される。
受付の人から渡された手紙。薄く光っていて魔力が籠っているのがわかる。
手紙を広げると、キレイな花柄の紙に文字が浮かび上がってきた。
試合会場には運営役の教員や非常勤冒険者がおり、極力危険から皆様を守るよう行動し、
場合によっては試合を中断する判断を下すこともありますが。それでも、皆様に100%の安全を保障するものではありません。それらのリスクを背負ってもなお、試合を戦う意志があるのでしたら手紙に表示されている「はい」の部分を。そうでないなら「いいえ」の部分をタッチしてください。
まあ、剣と魔法を使って戦う以上場合によっては命にかかわるようなことにもなるよな。
一応、愛奈の方を向く。
「大丈夫。遊希くんがいれば大丈夫だよ。信じてるからさ」
「……ありがとう。わかった」
愛奈が、コクリと頷いた。今回こそは、そんな気持ちに応えたい。
まあ、魔王の幹部クラスの奴がいるわけでもないし──しっかりと気をつければ問題はないだろう。
俺達は全員、「はい」の場所にタッチ。タッチした瞬間、手紙は一瞬白く光る。
それを受付の人に私て、手続きは完了。
「それでは、予選リーグのご案内をさせていただきますね」
そして、時間や場所の説明を受けた。戦いは2人ペアで戦うのがルール。
まず予選のルール。
バトルロイヤルに近い形式。参加者全員、胸のあたりに指定のバッジをつける。
そして郊外にある森林地帯の中で戦い、バッジを取られると失格。
バッジにはアカデミーより特別な魔法が掛かっていて、このエリアのバッジが残り4つになったら試合終了。
それから、パートナーのうち、どっちかが失格になるともう片方も失格。
決勝トーナメント以降はアカデミー内のコロシアムを使った戦い。
どちらかが失格になってももう片方が戦える状態なら問題ない。
つまり、予選は愛奈が失格にならないよう気を付けないといけないという事か。
「足引っ張らないようにさ、頑張るからね」
「ありがとう。でも、俺が絶対守るから」
「あ、ありがとう。期待してるね」
愛奈は、ちょっと不安そう。予選だからそうそう強い相手と戦うことはないと思うが、警戒はしておこう。
「まもなく試合会場までの転移魔法が発動します。手配しておきますね」
「わかりました」
そして、しばらくしてから案内を受け、バッジを受け取って胸につけてから広い講堂へ。俺達と同じ様な生徒たちがびっしりあふれている講堂。
その下に大きな魔法陣が出現すると、ペアごとに体が光り出す。たぶん、バッジとリンクして光の色で予選の組み合わせが決まっているんだろうな。俺と愛奈は赤色。
数十秒ほどたつと、魔法陣を描いている先生の「今から試合会場だ。健闘を祈る」の言葉が聞こえ視界が真っ白になった。
しばらくして司会が戻る。そこは、周りを森に囲まれている、人気が全くない森林地帯の開けている場所。そこに、俺達のようなここで戦うであろう学生たちが大勢いる。
それが俺たちの予選を戦うフィールドということか。そして、監督役の先生らしき人がいて詳しいルールの説明を始めた。バトルロイヤルのルール、バッジを破壊されると失格。
「この地図のエリアが試合場所、指定の範囲を超えるとバッジが反応して失格になるから気をつけてね」
「は~い」
手渡されていたルールブックを片手に説明。高度な魔法によってバッジの位置情報と魔法陣をリンクさせているのだろう。戦いに夢中になってエリアから外れないように気を撃つけないと。
歩いて2時間はかかるであろうそれなりの広さがエリア。1時間ほどの移動時間を経てから試合開始だそうだ。試合開始時の位置も、大事だなこれ。
森を歩いているうちに、リズとルヴィアと合流。
「よかったら、組まない? 4人通過なんだし」
「わかりました」
「80人から4人に絞られるんでしょ? 生き残れるかな?」
愛奈は自身のバッジを見ながら不安そうな表情で言う。確かに、この予選。かなり狭き門だ。
バッジを破壊されると失格なルール上、格下であっても不覚を取られて敗退する可能性だって十分ある。
ただ、リズとルヴィアがいるのは幸い。4人いれば、視界の悪いジャングルでも死角をつぶして戦える。組まない理由はない。
「リズちゃん、よろしくね」
リズは、どこか嬉しそう。リズも、実力自体はあるし勝ち進めるといいな。
4人で、何とか決勝トーナメントに進めるようにしていきたい。
「ルヴィア君、よろしくね」
「ああ、よろしく」
彼も、それなりの強さがあるはず。危ない所だけサポートすれば、十分行けるとは思う。
そんな話をしているうちに、手紙に試合開始の文字が映る。
さあ、行こう。
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