第25話 愛奈の笑顔・理事長の元へ
次の日、魔法歴史学の授業を終え昼休みにはいったところ。
昼食を食べようと食堂に行くと、何やら掲示板の前にみんな集まっている。ざわざわとした、何か話しているような声。そして、こっちを来るなり俺たちの事を話し始めた。
「あ、あいつだ」
「彼、呼び出し?」
俺達の事なのか? きょとんとする俺と愛奈。なにがあったのか気になって掲示板へ。
掲示板に張り出された紙を見て、唖然とする。
以上の2名は理事長の所に来るように。
そして、そこには俺と愛奈の名前。
あちゃー、思わず額に手を当てる。めちゃくちゃ目立ってる。周囲の視線が俺たちに集中している。愛奈は、ただ苦笑いしていた。
「大変なことに、なっちゃったね」
「本当だよ」
食事中も、とっても視線が気になった。
理事長、俺たちにどんなことを話すのだろうか。
授業が終わり、緊張が走る。理事長、変な事にならないといいけど。不安に持っていると、
愛奈が話しかけてきた。
「えーとさ、さっきメデルちゃんから聞いたんだけどあの子、学園長の事知ってるみたいよ」
「あの子か、ありがと」
愛奈が指差したのは2つ前の席にいるクラン君。だっけ。小柄で茶髪の、おかっぱ頭
確か、いつも友達と話すようなことはなく一人でいるよな。窓側だけに、ずっと景色を見ていたり──なんていうか、昔の俺みたいだ。俺も友達なんて無縁の存在で、教室ではいつもああだったな。
とりあえず、話しかけるしかないか。
俺がどう切り口で話しかけようか悩んでいると──隣にいたはずの愛奈がいない。
ビックリして周囲に視線を向く。
愛奈がすたすたと、机の方へと歩いて行ってしまった。
羨ましいな、コミュ障の俺は会話する内容を考えなきゃ会話が成り立たないが、愛奈はそんなことせずに自然体で会話が成り立つ。何か、羨ましいな。
そして、男の子隣に着くと体育すわりになって目線を合わせてから の肩を叩く
振り向くと、にっこりと笑顔を向けてから
「ちょっといいかな?」
笑顔のまま両手を頬に置いてじっと男の子を見つめる。
男の人は顔をほんのりと赤く染め、言葉を返す。
「……うん」
堕ちたな……。
愛奈はこうして男を虜にして、何人か同級生を玉砕させてたんだっけ。
何というか、愛奈ほど笑顔が似合う人はそうそういないよな。かわいらしいのもそうだけど、普段から内気だったり、あまり話したことがないような相手にも屈託ない笑顔を見せてくる。だから、人気もあって周囲からも好かれていたんだよな。
いつものように両手を後ろで組んで、再び笑顔を作った。男の子は、顔を真っ赤にして愛奈を見ている。ああ、堕ちたな。
罪作りだよな。
そして、しばらく話した後愛奈は両手を合わせて「ありがとう」と小声で言ってからこっちに戻ってきた。
「色々聞いてきた」
「あ、あ、ありがとう。じゃあ、部屋まで歩きながら話そうか」
「うん」
クラン君は、顔を真っ赤にしてぽかんと口をあけながらじっと前を見ていた。彼、しばらく愛奈の笑顔が頭から離れないだろうな。お気の毒に。
緊張しながら、階段を登り理事長の部屋へ。
理事長からの呼び出し。何かまずいこととかしちゃったかな。不安な気持ちでいっぱいになる。
「なんか、普段はあまり人前に出ないんだって。若い女の人だとか」
「そうなんだ。雰囲気とかはわかる?」
「なんかミステリアスで、何考えてるかわからないって感じなんだって」
「つまり、癖が強い人ってことか。うまくやれるといいな」
赤絨毯の道を進んで、一番奥の部屋。両開きのドアには、見たこともない古代文字が描かれている。愛奈はそれを見るなり、キョトンとしてこっちを向いた。
「えーと、遊希君これ読める?」
「俺もよくわからん」
どこかの、俺の知らない国の文字だろうか。それとも、古代文字の類なのか。とにかく入ってみよう。
どんな用事かわからないけど、いい印象を持ってもらうに越したことはない。
ごくりと息を飲んで覚悟を決めてから、コンコンとノック。
「入れ」
女の人の、ぶっきらぼうな声。一度愛奈と顔を合わせる。愛奈がコクリとうなづいて、俺は覚悟を決めた。
キィィィと扉が開く。
「失礼します」
一度頭を下げて、その姿を見る。2人の女の人がいた。1人は、白いドレスに三つ編みで小柄、ピンクの髪の女の子。この前ゴブリンたちに襲われて、助けたお嬢様の女の子、レナーテだ。
そしてもう一人。彼女は初めて見た。スカーレッド色のロングヘア。緑と紫を基調としたローブ。
背が高くて、スタイルのいいお姉さんという感じ。胸元がぽっかり開いたタイプのローブで、なんかセクシーだ。思わず、ドキッとしてしまう。ただ、愛奈がいる手前視線が吸い寄せられないよう気を付けないと。女の子は、視線に敏感だというし。
「わがアカデミーの理事長を務めるノーデンス・ジェニファーだ。宜しくな」
「こちら、私が光希愛奈、遊希です。よろしくお願いいたします」
理事長、地位が高い人なんだ。これはしっかり対応しないと。
俺が何か返そうか考える間に、愛奈が返してしまった。
それから握手をして、ソファーに座る。ジェニファーはおほんと咳をした後、手を組んで肘をつき話始める。
「さて、先日は魔物たちの奇襲から要人たちを守ってくれてありがとう。そなたたちの活躍、見せてもらったぞ」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながら言葉を返すと、隣にいたレナーテが頭を下げた。
「先日は、襲われていた所を助けていただき、誠にありがとうございました」
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