第21話 奇襲
強い魔力の気配。普通の動物ではありえない強さ。そして──その正体が現れた。
「え? あれハーピィじゃねえか」
生徒の一人がそう言うと、俺はその姿を見る。北の空から来た群れ。あれは──ハーピィ。
ハーピィが出現。女性の顔つき、人間の数倍はある大きな肉体、巨大な翼。
しかし、普通のハーピィとは明らかにまとっている魔力のオーラが違うのがわかる。
「なんだあれ、ハーピィって体が真っ黒だっけ?」
「んなわけあるか。初めて見たぞあんなの」
普通なら白いはずの翼は、真っ黒。目つきはいつもより悪く、何より明らかに、闇の力を纏って強化されている。あ
Cランククラスじゃないととても勝てない強さ。しょうがない、俺達も加勢するか。
仕方ない──愛奈、リズの方を向く。
「あれは、ダークハーピィだな。普通のハーピィよりも、闇の力で強化されている種別。強いし人を襲うから気を付けて。行くよ、あいつを倒す」
「わかった」
「わかり──ました」
そして俺たちは連携してダークハーピィたちを倒していく。さっきまで一緒にグリフォン狩りをしていたおかげで連携はとれている。
俺とルヴィアが前線で襲って来るダークハーピィたちを倒していき、愛奈とリズが遠くからサポート。
そんな戦いで、快調にハーピィを何匹か協力して何匹か倒す。リズも愛奈もルヴィアもしっかり実力を発揮してくれたおかげで、難なく一掃することができた。
周囲を見回したが、この辺りのハーピィは一掃したみたい。他の苦戦している人たちの手伝いをしようかと周囲を見回したその時、愛奈が肩を叩いてきた。
「変わった馬車があるんだけど、あれ何?」
愛奈の視線の先にあったのは、数台の馬車だった。
そのうち1台以外は警備用だろう。警備役の兵士の人がいる。
そして、1台は明らかに違った。豪華そうな飾り、そして存在をアピールするかのように旗が立っていた。
何と、あの馬車の上に小さく掲げられている旗。
緑と赤色の下地、金に王冠。
4大貴族の1つフランク家だっけ。貴族の関係者でも乗っているかなと考えていると、近くにいたロキとルーシが何やらひそひそと話している。ルーシは、ちょっと焦り気味な様子だった。
「ロキ様、あれ。レナーテ様ではないでしょうか」
「……そうだな。こんな時についてない」
その会話は周囲にも伝わり、生徒たちは動揺した様子でひそひそと話を始めた。俺はわからなかったがロレーナが説明してくれた。フランク=フォン=レナーテ。14歳の、フランク家の娘さんなのだと。かわいらしい美貌で周囲から人気を集めていて評判なだとか。
「重要な貴族の人なんだってさ」
「そうなんだ」
「運が悪すぎだろ。偶然通ったところに襲撃なんて」
確かに、運が悪かったと言い見方もできる。
国にとって重要な地位の人になると、暗殺などを恐れてスケジュールやどこに行くかなどが一般層には情報が伏せられていて
秘密になっているゆえに、俺達も居場所や移動ルートを知らない。ただ……本当に偶然かは気になる。情報が洩れていていつ可能性だってある。それは、後で調べることだ、今は目の前の敵に対処するのが先決。
「ちっ運が悪い。ルーシ」
「……分かりました」
ロキとルーシが険しい表情で互いに顔を合わせ、コクリとうなづく。ルーシは、ちょっと複雑な表情。
そして、走ってレナーテの方へと行ってしまった。
「ロキさん──なんで??」
隣の同級生が困惑した表情で言う。
「仕方がないんです。貴族たちに被害を及ばせるわけにはいかないですし、あのハーピィだとまともに戦えるのは──あの2人くらいですし」
ロキの妹メデル=クロースが複雑そうな表情で返した。確かに、主要貴族の跡取りが死んだら、国家として一大事だ。
それだけでなく、彼らを見殺しにしたという事実が知れればロキもただでは済まない。何らかの処罰が下る可能性もある。
「仕方ねぇ。俺達は俺達で、戦うしかねぇな」
「私だって、戦います。いつまでもお兄様に頼ってばかりいられません」
メデルは、一瞬戸惑うような表情になり一歩引いた後顔を振ってこぶしを握った。やはり、強さを知っているのか怯えがある。
「行きましょう。私たちも」
「え、ええ……戦いましょう」
メデルは動揺する周囲を鼓舞するように言った後、先頭に立ってハーピィに立ち向かおうとする。
その瞬間、地面から何か気配を感じた。慌てて下を向くと、地面が淡く光り始めた。
何があったのかと警戒すると、地面に光る線が現れる。全体を見ると、それが星の形をした魔法陣だったことがわかる。
魔法陣の光が強くなると、人型の光が出現。それは──実体となり正体が判明。
「なんだよ、いきなりゴブリンが出てきたぞ」
魔法陣があった場所から、いきなり数えきれないほどのゴブリンが出現。その姿に、生徒たちは驚く。
しかし、驚いてばかりもいられない。ゴブリンたちが、棍棒をもってハーピィと一緒に生徒たちに襲ってきたからだ。
ロキとルーシ、メデルの周りにもあふれんばかりのゴブリン。レナーテの所に行くことができない。
とりあえず、隣にいるメデルと戦おう。
メデルは杖を持っている──という事は遠距離攻撃を使うのか? そう考えてメデルを援護しようとする。
「待て、俺が援護する」
「いりません。遊希さんは別の人を援護してください。皆さんも、私はいいですから」
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