第20話 捕らえ方


 そして、俺達は4人で狩りをすることとなった。

 ルーシに指定されたエリアで木に隠れて獲物を待ち構える。


 7~8分ほど陰に隠れてとうとう獲物に出くわす。グリフォン数匹だ。


 グリフォンは地面を掘り返し、地面の中にいるミミズなどの動物を食べている。

 リズが、その姿を興味津々そうに見つめていた。グリフォン、意外と警戒心が強いからな、どう出ようか考えていた矢先──。


「よーし、捕まえるぞ」


 ルヴィアはそう言ってパッと立ち上がった後自身の剣を握ったままグリフォンへと突っ込んでいってしまった。


「ちょっとまって」


 小声で止めようとしたが時すでに遅し。聞こえていないようでルヴィアはグリフォンの元へと走っていってしまった。


 グリフォンは走ってくる音に気が付いたのかいっせいにこっちに視線を送ってきた。それでも走って捕まえようとルヴィアは走っていく。グリフォンは──そんなルヴィアの姿に気付いて、空へと飛び去ってしまった。


「逃げちゃった」


「うっそ」


 ぽかんとしている愛奈に、大きく慌てるルヴィア。

 意外と逃げ足が速いなこいつら。ただ捕まえようとしても逃げられて終わってしまう。

 呆然としているルヴィアの隣に移動して、肩を掴む。ちょっと慰めたほうがいいな。


「グリフォンは警戒心が強くてさ、捕まえるには一工夫必要なんだ」


「すみません良かれと思って」


 ルヴィアが涙目になって、両手を合わせて謝る。まあ、ミスになっちゃったけど、難易度自体高かったし最初は仕方ないだろう。


「気にしなくていいよ。コツさえつかめば、誰だって出来るようになるから」


「は、はい」


「えーと。まだチャンスはあるから、一緒に頑張ろうね」


「愛奈さん、ありがとうございます」


 愛奈が優しい笑みを浮かべて言う。ルヴィアは、それで元気を取り戻したようだ。よかった。

 そして、俺達は再び木影に隠れる。周囲に聞こえないよう、小声で話しかけた。


「いい? ただ闇雲に捕まえようとしても、足が速いやつ相手だと逃げられる可能性が高い」


「でも、それじゃあどうすれば」

 

 困った表情で聞いてくるリズ。確かに、近づかなければ捕まえられない。


「策は、ある。今から教えるから、その通りに動いてくれる?」


 そして俺はひそひそと3人に作戦を耳打ち。


「いいねえそれ。やってみようよ」


「愛奈さんの言うとおり、やってみましょう」


「わかった。僕も協力するね」


 そして俺たちは作戦の遂行にあたる。周囲から適当にウサギを取ってきて、殺してから死体を道端へ。木陰に隠れてグリフォンを待つ。

 しばらくして再びグリフォンが5匹ほどやってきた。よーし、今度は成功させるぞ。


 そしてグリフォンはウサギの肉を食べ始める。最初はゆっくりだが、徐々に夢中になって周囲に視線を置かなくなっていく。


 グリフォンが周囲に気をつからなくなってきた、その時だった。愛奈に耳打ち。


「今だ」


「わかった」


 愛奈は杖をグリフォンに向ける。


「ファイアウォール」


 そして、グリフォンの頭上に炎の壁を召喚。上に逃げられなくなったグリフォンはパニックになり横に移動して逃げようとして──今度は俺の番。


 剣を召喚し、一目散に突っ込んでいく。上に逃げられなくなったグリフォンめがけて横に薙ぎ払い、グリフォンの肉体はまっすぐになった。


「おおっ、すごいです」


「とりあえず、肉を回収しないと」


 そして俺たち全員でグリフォンの肉を回収。

 それからも、何度かグリフォンを狩っていく。


「そうそう、相手が食いついてきたとき、前がかりになってきたときが一番チャンスなんだ。そこを狙って、一気に行けばチャンスは十分にあるよ」


「そうなんですね、すごいです」


 ほうほうと感心するリズ。まあ、要領を得ていないと難しいよねこれ。うまくいって良かった。他はどうなっているのか気になって周囲を確認してみた。


「うわっ、なんだよこれ」


「あ~~逃げられちゃった」


「なんか強くねこれ」


 みんな苦戦中なようだ。

 俺にとっては生ぬるいけど、他のEランクレベルにとってはそれなりに強い敵らしい。苦戦している生徒が多数。


 途中から、グリフォンだけでなくタイガーや比較的獰猛なカオス・ウルフも。それでも、俺達は難なく倒していくが生徒の中には押される人も。


 それを、時折ロキとルーシが助けながら倒していく。


 メデルは、既に数匹捕まえている。強力な魔力を遠くから正確に狩っている感じだ。技術力高いんだな。


「大丈夫ですか?」


「あ、ありがとうございます」


「フン、こんな雑魚に苦戦するとは。半端者め」


 優しく励ますルーシと、対応しながらあきれ果てるロキ。いつも、2人はこんな感じなのだろうか。


 俺は昔もこうだったなと思いながら、彼らの奮闘を見る。こうして苦戦を重ねながら、時々愛奈に助けられ、強くなったら愛奈だけでなく周囲も助けて。


 この辺りの動物は、大体狩りつくした。一体一体は弱くても、こうして集団で襲われると戦いになれない人は苦戦しがちになる。現に何度か、苦戦している同級生を助けた。


「あ、ああすまねぇ」


「遊希君だっけ? ありがとな」


「どういたまして。頑張ろうね」


 そして、この辺りの動物はすべて狩りつくした。ルーシが周囲を確認。


「大丈夫そうね。これで終わりみたい。皆さんお疲れ様」


 ルーシがそう言ってパンと手を叩いたその時──俺は空を見る。


「なんか気配がする」




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