第18話 クラックとローズ


「あ、写生上手くいきました。遊希さんありがとうございます」


「どういたまして」


 以外と苦戦している人が多い。あんまり経験がないのかな?

 時折女の子相手にナンパしてくる奴がいるが、ロレーナが軽くあしらう。


「ねえねえかわいい子猫ちゃん、僕と一緒に素敵な絵をかかない?」


「今そんな時間じゃないんですけど」



 ロレーナ、まじめな優等生って感じだな。ナンパに対して、じろっとにらんで全部追い返してしまった。俺は──以外に褒められたけど、ちょっと恥ずかしくなってしまう。


「遊希さん、写生(しゃせい)とってもうまいんですね」


「わかる、意外と指導うまいね。写生の経験あるの?」


「まあ、少しね」


 ここまで褒められるのは珍しくちょっと照れてしまう。

 それから写生の授業、当然不満はあった。


「なんで絵なんか書かなきゃいけないんだよ」


「そうだよ。つまんねー授業だな」


 一部の生徒たちは不満そうな言葉をブーブーと垂れる。ルーシが、困った様子で対応。ロキは特に何もせず不満そうに腕を組んで、周囲を見ているだけ。


「そんなこと言わないでくださいね。絵をイメージするのはとても大事なんです。基礎的な事だから、しっかり頑張りましょう。分からないことがあったら、アドバイスしますから」


 ルーシの言葉に、不満そうな声を上げている周囲の声が止む。確かに、この写生──全く魔法に関わり合いがないわけではない。


 強力な遠距離魔法を使用するとき、空中で魔法陣を杖で描いて、そこから攻撃を発射というパターンがよくある。それに、術式を浮かべるときにイメージ


 実際にイメージすることも大事だから無駄ではないというのはわかるし、この後はしっかりと魔法を使った授業はある。


 魔法について基礎的な授業という意味で絵は、この授業は十分意義があるとは思う。それにいろんな人と話せるという事でもある。


 最初は評判は芳しくなかったが、ルーシの丁寧な指導や、次第に集中するようなったことも相まって、真剣な雰囲気になっていき愚痴のような言葉はなくなっていった。

 それでも、最後の方まで不平不満を

 特に文句を言っているのが2人。




「うわっ、あいつらもいたんだ。マジ??」


 ロレーナの表情が険しくなった。その視線の先に、2人の人物がいた。


 クラック・ローズペア。話によると、2年クラスではトップ3に入る実力だとか。


 黒髪のツンツン頭。釣り目で長身の男の人。もう一人は、茶髪でチョココロネみたいな髪。ミニスカートで、ハイヒールを履いている女の人。

 自信にあふれた表情で、杖を肩にのっけて周囲に視線を向けている。


「2年生で成績トップなんだけど、すっごい態度が悪いのよね。自分より弱い人をバカにするような発言とか、気に入らないやつをいじめたりするとか」


「たまにいますよね、そう言う人」


 その言葉に、元居た学校のことを思い出す。自分がすごいからって周囲をいじめたり排除したりするやつ。どこの世界にも、そういう奴はいるんだよな。


 呆れて何も言う気がしない。


「そもそも、今授業受けてるのも1年の時にけが人出して単位落としたのが原因だし」


「問題がある生徒ってことね」


「そう」


 ロレーナの言葉をよそに、ローズとクラックは周囲に聞こえるように大声で不平不満を垂らす。


「まったくよぉ、何でこんな事しなきゃいけねぇんだよ」


「本当。意味ないでしょ」


「えーと、意味がないという事はありません。基礎的な」


「うるせぇ!」


 ルーシの言葉を遮り、ただ感情的に我が物顔で当たり散らす。

 そして苛立っていることへの八つ当たりなのか1人の生徒をいじめ始めた。近くにいた、大人しそうな男の子をいじめ始める。絡み始めてから一方的に蹴り飛ばし始めたのだ・


「そうよそうよ、こんな奴と一緒に実習とか、ちょーありえないんですけどぉぉ」


 ローズは、男の子を蹴っ飛ばした後明らかに不満そうに髪をいじくりまわしながら不満をたれる。自分たちだけ再習得という事に苛立っているのだろうか。

 周囲の学生たちは、2人が悪いのがわかっていながらも、実力のある2人に言い返すことができす気まずそうに黙りこくっていた。





 そんな状態の中、1人の人物が腰に手を当てボロボロの生徒に立ちはだかる。


「やめてください。授業中ですよ」


 メデルだった。2人に立ちはだかって2人と対立している。真剣な表情のエステルに対して、クラックとローズは嫌味な笑顔を向けていた。

 まともに、話を聞こうとしてないのがわかる。


「知ってんだよ、お前ロキから使えないっていわれて無視されてるんだって?」


「証拠に、誰も止めようとしないでしょ? 勇者の妹だからって強く言えば引くと思ってたのかよ」


「そういう意味じゃないです」


 メデルが何度真剣な顔で注意しても、クラックとローズはまじめに聞こうとしない。周囲の生徒も、上級生でランクの高い2人に恐れをなしているのか、誰も止めようとしない。まあ、ここで変に止めようとしたら後で何されるかわからないからな。




 何か収まりそうにない。仕方ない、俺が出るしかないか。こういう奴は、一度痛い目に合わせたほうがいいな。






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