第14話 アカデミーに入って、食事


「フン。同じ人間のくせに、正義の味方気取りかよ」


「それとも何か? ここでこの子を救って、好感度上げて手籠めにしようとしてるとかか?」


 こいつらの言う事など気に留める必要はない。恐らく、普段からそういう思考回路なんだろう。だから、俺がそう考えているという発想になる。


「引けよ──なんなら決闘してもいいけど?」


 俺は強くにらんで、じっと見つめる。御託はいい、こういう奴は自分では勝てないやつだとわかれば、二度と襲ってこない。


 そして手に魔力を込めて、そっと触れた。ちょんと押しただけで2人の体は大きく吹き飛び、後方にある壁に叩きつけられる。


 2人は立ち上がると、俺の強さを理解したのだろう。俺をにらみつけながらも、数歩引いた。戦おうとまでは、しないのだろう。


「けっ、ヒーロー気取ってんじゃねぇよバーカ!!」


 そう捨て台詞を吐いて、踵を返してここから去っていった。

 二度と突っかかってこなくていいから。

 俺は、涙を流しているリズの隣に立って、髪を優しく撫でた。愛奈も、優しく背中をさすっている。

 リズが感じていた恐怖を、少しでも解きほぐせるように──髪を優しく撫でる。そっと背中に触れて、リズの背中が震えていることに気付く。相当、傷ついていたんだなというのがわかる。


「大丈夫?」


「はい。ありがとうございます」


「私たちがいるからさ、安心してよ」


 愛奈が背中をさすると、リズはただ涙を流していた。この前の教会の時もそうだけど、奴隷の時も一人でいるときもずっとこんな扱いを受けていたんだろうな。


 何とか、リズの悲しみを癒してあげないと。すぐには無理でも、少しずつこの呪縛を解いてあげれればいいなって思った。


「私たちが付いているから──困ったら私の所に来て」


「はい、ありがとうございます」


 リズは、愛奈にすがるように抱きついている。何とか、リズの力になるようにしていかないとなぁ。




 それから、俺達はアカデミーの中に入っていった。入るなり、今まで見たことがないような規模と大きさ。そして芸術的ともいえる内装に驚く。

 それから、広々とした庭園にまるで教会の大聖堂のような外見。神様を表現したような銅像もある。


 神秘的な印象を受け、外見だけでアカデミーがこの国でどれだけの権威を持っているかが理解できる。


「凄いねこれ」


「うん」


 中に入って受付へ。ギルドで受け取った合格通知を渡すと、すぐに手続き。

 同じように合格手続きする人が多くて、2~3時間程かかってしまった。


 それから、入学式の日程や場所。与えられた部屋について説明を受ける。アカデミーは地方からも貴族出身の入学生が大勢くる関係で学生寮があり、俺達もそこで暮らすことに。これで、毎日宿で暮らす日々とはおさらばだ。


 それから、荷物をまとめて学生寮に引っ越し。


 狭い部屋に俺たち2人。2人1部屋で使ってくださいと指示があった」


「ベッド、一緒だね……」

「仕方、ないのかな。寝るときは、俺だけ床に寝たほうがいいかな?」


「え、疲れが残っちゃうでしょ。いいよいいよ。遊希君なら大丈夫だって信じてるから。離れて寝ればいいよ」


「そ、そう。ありがとう」


 一緒の布団か、離れて寝るとはいえ、緊張するよな。変なことにならないように気をつけないと。

 因みに、広くて豪華な部屋は貴族出身の人が使っているらしい。それでも、宿暮らしよりはよっぽどいい布団で寝られるんだから。荷物整理が終わり、夜になる。


 ずっと集中して作業をしていて、昼から何も食べていなかった。お腹空いたなと考えていると、愛奈のお腹の虫が鳴って愛奈は恥ずかしそうに顔を赤くして、お腹を押さえる。



「ここ、食事無料なんでしょ? 食べに行こうよ」


「そうだね」


 話を聞いたところによると、学院内に食堂があり1日3食までは無料で食べられるそうだ。おまけにここの食堂、貴族の人が使うとのことでとても味がいいとか。とても楽しみ。



 アカデミー内の食堂、俺たち2人はそこへ向かう。

 愛奈と一緒に部屋から出て、リズと合流。赤絨毯が敷かれた道を進んでから広々とした道を進んでいって、広いお店にたどり着く。ちなみに、リズはルヴィアと一緒の部屋なのだそうだが、ルヴィアは用事があると言ってどこかに行ってしまったらしい。


「けど、色々気遣ってくれたり優しくしてくれたり、とってもいい人でした」


「そう、それはよかった」


 まあ、ルームメイトがいい人なのは何よりだ。リズも、いい関係が気づけるといいな。何かあったら、相談に乗ってあげるのもいいかもしれない。それから、愛奈とリズが楽しそうに話しているうちに食堂へとたどり着く。


 食堂は、しゃれているシャンデリアに広々とした空間。上流層がいるべき場所という印象。

 とても雰囲気がいい。


「ここ、席空いてそうだしどう?」

「いいねぇ」


 愛奈がコクリとうなづいて、店に入る。

 店員に尋ねたところ、4人掛けの席に案内され腰かけた。


 俺と愛奈が隣同士に座って、向かい側にリズを座らせようとするが──。


「どしたの?」


リズはなぜか床で跪いたので、首をかしげて尋ねる。


「どうしましたと、言われましても」


愛奈が不思議そうに、きょとんなった。リズも、戸惑っているのがわかる。


「いや……座らないの?」


「座って、いいんですか?」

「いいんだよ、何でかしこまってるの?」

「奴隷の分としての鉄則で、緊急のご用意があればすぐ動けるように……というのが常識になっておりまして」


愛奈の質問に、あわあわと答える。う~~ん、何とか奴隷だったころの癖を何とかさせないと……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る