第10話 王都到着
ティンバーから数日ほど旅を続ける。王都クライストに近づいてきたせいかすれ違う人をちらほらと見かけるようになった。
俺は軽く会釈、愛奈はにこやかに挨拶をしてすれ違う。愛奈が話しかけると、男の人は顔を赤くしてあいさつし返したり。女の人だと、軽くお楽しいお話の時間になったり。
何処へ行っても、愛奈は誰からも好かれるよなって思う。
そして、俺たち2人がたどり着く。
王都クライスト。門番の人にアカデミーへの試験のスカウトの紙を見せると許可が下り、門の中の王都に入る許可をもらえた。
門をくぐり中に入った瞬間に見えたのは、今まで見てきた街とは違う、とても賑やかな街。
「王都、にぎやかだねぇ。すごい」
「うん」
今まで見た街とは規模も人の多さも全く違う。愛奈は、こういう人が多い所とか好きそう。みんなと一緒なのが好きな感じだから。
にぎやかで、色々な人がいる。
興味津々そうに周囲を見ている愛奈に話かけた。
「とりあえず、宿探そうか」
「ああ、そうだね。ふかふかの布団で寝たいし」
長旅の疲れもあり、愛奈もどこか疲れているように見える。今度は、絶対宿で泊まりたい。
多くの人でごった返している繫華街を通り過ぎて、ホテルだが並んでいるエリアへ。今回は空いている場所があればなと思ったが、王都だけにホテルはそれなりにあったようで、すぐに空きのあるホテルが見つかった。
「じゃあ、ひとまず休んでからなんか食べに行こうか」
「そうだね」
ホテルで一晩休んでから、近くのギルドへ行って貴族からの推薦状を見せる。推薦状の受付は、ギルドでやっていると記してあるからだ。
アカデミーには、合格した者しか入ってはいけないという事らしい。
受付の人から、入学試験の場所を伝えられた。どうやら、ただどんなことをするかは当日になってみないとわからないとか。ちょっとドキッとした。
「どんな試験なのかな? なんか楽しみ」
「まあ、魔法に関することだとは聞いてるよ」
何度も生まれ変わった中で、アカデミーの試験について聞いたことがある。毎年違うが、魔法の能力やポテンシャルを図るやつばかり。
それなら、俺も愛奈も十分に勝機はある。
愛奈はとてもドキドキしていた。2人で、合格を掴もう。
そして数日後、俺達は入学試験のため、アカデミーから指定された場所へと足を運んだ。
にぎやかな王都の街とは裏腹に、郊外にある試験会場に指定されている王立学園(アカデミー)の第3演習場。
緊張の雰囲気がこの場を包んでいた。
街の外れの広い土地。街の数ブロック分で広々とした場所。
人の正確な数はわからないが──7~800人といったところ。
この中から入学できるのは7~8人くらいと聞いたのだから大変狭き門だ。ちなみに、最初はこの5倍の志望者がいた。
ほとんどが一発逆転というか、ダメ元みたいな感じの下級貴族や一般層の人で、魔法が使えないため門前払い。
逆に言えばここにいる人は、魔法を使えるという事だ。大なり小なり。
そして、この場所の中心に一人の人物がいた。
角刈りで、茶色いシャツを着たラフな服装で仁王立ちで立っているおじさんの人。
年齢は40代前半くらいか。
彼から発せられるオーラ。Cランク程度はありそう。雰囲気的にも、この人が試験官っぽいな。
そして、時間になるとおじさんがあくびをして、パンと大きく手を叩いて叫び始めた。
「よーし、時間だ。試験始めるぞ」
いよいよ試験が始まる。どんな試験なのだろうか──俺もそうだが、愛奈も合格しなければならない。
上手く経験が足りない愛奈を、支えていかないと。2人で絶対に合格するんだと、覚悟を決めて強く拳を強く握る。
そしておじさんは腕を組んで言った。
「この広場で4組に分かれて全員でバトル。1グループにつき勝ち残った2人計8人が入学。以上」
それだけ? いわゆるバトルロイヤルってやつか。愛奈自身もここにいる奴らより抜きんでた強さがあるし、俺と一緒に戦えば問題ないだろ。むしろ、変則的なことをされることの方がまずかった。しかし──。
「は?」
「なんか手抜きじゃね?」
「もうちょっと厳正に審査してくれよ」
余りに簡単な内容に、周囲から不満の声が漏れる。確かに、これなら簡単な内容だけど──それだけ、と彼らが考えるのもわかる。人生を左右する試験なのだから。
クライスト・アカデミーをもし卒業することができると、上流貴族に仕える国家魔術師。
魔法学や神学、考古学など、魔法や学問を究める職業に就く進路などにつく道が開けるようになる。
どれも安定した高収入と、高い名誉を両立させた職業だ。
また、それが出来なくて冒険者となったとしても、アカデミー出身の特別冒険者は一般冒険者と比べ、報酬が10倍近くの差となる。また、アカデミー出身となれば高ランクパーティーからのオファーが来やすくなりそれだけ名誉を得やすくもなる。
いずれも、一般人とは比べ物にならない報酬が手に入る将来が待っている。
だから、それだけ確率が低い狭き門でも彼らは必至なのだ。これからの人生がかかっているのだから。
そんなだから、手抜きともいえる選抜方法に不満をたれているのだろう。
まあ、俺はじゃんけんみたいな運ゲーじゃないから別にいんだけど。こいつらを圧倒できるくらいの実力じゃないと、どのみち卒業なんてできないし。
ブーブーと、周囲から不満の声が湧きあがっている中面接官の男は一度舌打ちをした後大声で叫んだ。
「うるっせぇ、クソガキども」
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