第5話 ダークフルード
「旋風一閃・轟く嵐が飛竜乗雲となり、打ち抜け テンペスト・アタック」
真っ白な光を纏った大きな竜巻が杖から出現。それがドラゴンに突っ込んでいき直撃。うん、いい一撃だ。
大きな爆発音。攻撃が直撃したものの、ドラゴンを倒しきれていない。今の愛奈だと、まだ数発は必要だろう。愛奈にはまだ回復の仕事がある。こっちはもう大丈夫、愛奈に回復を任せて、あいつは俺が仕留める。
すぐに愛奈に駆け寄った。
「ありがと、あとは俺がやる。愛奈は残党と傷ついた村人の回復をお願い」
「うん」
そして再び愛奈と入れ替わってドラゴンと退治。愛奈の一撃で、大分ダメージを受けている。次の攻撃で、終わりだろう。
愛奈は、役割を理解したのだろう。ヒーラーは村で3人しかいないし、その中でBランクは愛奈だけ。大勢の怪我した人を助けられるのは、愛奈しかいない。
真剣な表情になり目をつぶって、体制を低くしてささやいた。
「カルマ・チェンジ」
愛奈の、真の力が来る。
──慈愛に満ちたる神秘の闇・カオスの力降り注ぎ・無限の光を紡ぎ出せ──
ウルティマカーマ・ダークフルード・ロッド
愛奈の武器が変わる。杖に触れたところから、大きな杖が光り出し、黒っぽくなる。
それだけでなく、愛奈を纏う灰色のオーラのようなものが現れた。
さっきよりも、一回り大きくなり、先端の大きな玉は黒く変色。まさに、闇の力といった感じだ。ヒーラーとしての、愛奈の姿。「ダークフルード・ロッド」。
これが、愛奈の強みでもあり──同時に弱点にもなっている。
ヒーラーと魔術師。聖女として2つの役割をこなせる特殊な体質。強くなると1人でBランクレベルの遠距離攻撃と回復を兼ね備えているのが最大の強み。
しかし、チェンジする際1秒ほど無防備になってしまう欠点がある。後、遠距離攻撃と回復を同時に行えないこと。
ここを付かれて、愛奈は何度も俺の目の前で命を落としてきた。Aランクレベルの敵でない限り問題ないが、万が一という事を考えると、体が勝手に動いてしまう。
それくらい、愛奈の首が吹っ飛ばされたのがトラウマに残っている。
今はまだ大丈夫だが、強い敵との戦いになったら、絶対警戒しよ。さて、ドラゴンを倒さないと。
「グルルルル」と声を上げているドラゴンを見る。こっちをじっと睨んでいて、攻撃のタイミングをうかがっているのがわかる。
次で決める。圧倒的なのもよくないけど、早く村の人たちを助けに行きたい。
集いし思いの象徴が、新たな未来を切り開く! 突き抜けろ
スターダスト・ストーム・エアレイド
黄色で、星の形をした無数の魔力砲。それが俺の指示で一気にドラゴンへと飛んでいき、
俺の攻撃がドラゴンの左の翼に直撃。障壁を出されたが一瞬で破壊。
攻撃が直撃したドラゴンは、飛行状態を維持することができなくなり、大きな奇声を上げながら森の中へと落下。
急いでその場所へと向かっていく。飛べなくなったとはいえ、まだ攻撃を仕掛けてくる可能性がある。
証拠に、近づくとドラゴンはこっちを向いて口を大きく開け始めた。そして、口の中が灰色に光始める。
「やべぇぇ、光線が来るぞ」
その光景に慌てふためく村人たち。確かに、口の方向には彼らの村がある。
攻撃が通れば村は壊滅。この攻撃を、通すわけにはいかない。
「シューティング・ブラスト」
俺の放った魔力が一気にドラゴンへ。ドラゴンの肉体は攻撃に耐えきれず大爆発。これで終わりだ。
ドラゴンはそのまま地上に落下。俺はその首を斬り落とす。これで勝負は完了。後は残りの残党を倒すだけ。
それから、周囲を見る。村の冒険者たちが──まだガーゴイルと戦っている。
まずはひげを生やした筋肉質の男。Dランクの冒険者だっけ。
肩から血を流して、ガーゴイルと互角の戦いをしている。
そして彼が斧を振り上げ、ガーゴイルがそれに突進してきた。まずい、この殴り合いで負けたら彼の命はないだろう。慌ててその間に入って、ガーゴイルの首を一刀両断。
「おお兄ちゃん、ありがとな」
「気にするな」
本当に気にしてる暇はない。まだまだガーゴイルと戦って、苦戦している人を助ける。助けて、傷が深い人から順に愛奈の術式で回復させる。
しばらくして、何とか敵を全滅させることができた。
村人たちに、安堵な空気が流れ始める。
「おう、遊希助けてくれてありがとな。いつも強いな。助かってるよ」
「ああ、この村で埋もれてるにゃあもったいないくらいだぜ」
村の冒険者たちが近寄ってきた。ドラゴンを倒したという事に、驚いているのだろう。まぐれだとか言って適当に答えるしかない
因みにBクラスの力を持っているという事になっている。術式も、王都から来た商人の人に教わったと説明してある。
変に詮索されても、面倒だからだ。
「けどすげぇな遊希君。あのドラゴンをほとんど自分1人でやっつけちまうなんてよぉ」
「ああ……まぐれだよ。たまたま。まあ、みんなが無事で何よりだよ」
「まあ、愛奈ちゃんがしっかり回復してくれたしな。彼女も、ほんとに優秀だよ。流石聖女だ」
「愛奈だからね。あ、大技が来るぞ」
俺は自分への話を打ち切って、視線を周囲に向けた。周りは、色々な場所からやってきた怪我をした人たち。ただうずくまって、痛みを耐えている人だったり、出血がひどくて急を要する人、それがまだ20人はいる感じだ。愛奈が、彼らを救う時間か。
そんな多数のけが人に、愛奈は体勢を低くして両手をクロスさせる。そして、目をつぶってささやく。
アライバル・マイトリー
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