第43話 星霞璃月④

「とうとう明日が闘技祭2回戦目ね」


篠崎結衣が明日の戦闘に向けて最後の調整を行うために、模擬戦を行っていた。


星霞璃月の「月光刃」が煌めく中、彼女の動きは驚くほど洗練されていた。篠崎結衣をはじめ、チームの仲間たちは璃月の様子に目を見張る。


「璃月、前に出るよ!」神楽沙羅が声をかけると、璃月は即座に反応して剣を構えた。


対戦相手は同じスキルウィーバー科の友人たちが即席で、千葉チームを模倣した完全防御型の布陣を敷いてくれている。彼らも同様に防御には定評のあるメンバーたちだ。全員が防御系スキルを持っており、5人集まれば、かなりの強固な防御とカウンターができる。四方を囲む防御が強固で、攻撃の隙を全く見せない。


「さぁ、どう崩す?」神代雪乃が冷静に観察しながら問いかける。


「正面突破でいく!」璃月は鋭い声で答えた。


「大丈夫?結構ガチガチだよ?」水城未来が少し不安げに尋ねるが、璃月の目には迷いがなかった。


「やれる気がする!」璃月が叫ぶと同時に、全身に月光のような輝きが宿る。「行くよ――『月光刃』!!!」


彼女が繰り出した一撃は、これまで見たことのない速さと鋭さを持っていた。月光のような刃が空を切り裂き、友人チームの防御結界に直撃する。


「……っ!」


激しい音とともに5人が張っていた防御壁が粉々に砕け散り、その余波で友人チームのメンバーは後方に吹き飛ばされた。完全防御を誇っていた布陣が、一瞬で崩壊する。


「う、嘘だろ……」友人チームのリーダーが呆然と呟いた。


篠崎が思わず目を丸くして言った。「璃月、調子いいね。何かあったの?」


璃月は一瞬目をぱちくりさせ、笑顔を浮かべながら答える。「そうかな?いつも通りにやっていると思うよ」


神楽沙羅は目を細めながら指摘する。「いやいや、なんか体の使い方と動きがかなりスムーズじゃないかな?前より全然速いし、力も出てる感じがする。明後日の試合が楽しみだね!」


璃月は笑いながら剣を振り、友人チームを見据えた。「そうね!必ず勝つよー!」


そして彼女はもう一度力を込め、剣を大きく振り下ろした。「はぁぁああああああ!!!!」


剣から放たれた光は、再び圧倒的な力を見せつけ、友人チームの最後の守備陣を完全に粉砕した。


模擬戦が終了し、友人たちが脱力した様子で肩を落とす中、璃月の仲間たちもその力に驚きを隠せなかった。


「……あれ?月光刃、こんなに威力あったっけ?」神楽沙羅が首を傾げながら言った。


神代雪乃も頷きながら口を開く。「確かに、以前よりも力が増している気がするわね。」


水城未来は少し笑いながら璃月に近づいた。「もしかして何か特訓でもしたの?それとも暁君に刺激されたとか?」


璃月は照れくさそうに笑いながら答えた。「えっと、特訓ってほどじゃないけど……最近ちょっとだけ、自分の体の動かし方とかを意識するようになったかも!」


篠崎は腕を組みながらうなずく。「明らかにそれだけじゃないよ。とにかく、今の調子を維持していこう。明日の試合、きっと勝てる」


璃月は満面の笑みを浮かべて答えた。「うん!みんな、絶対に勝とうね!」


模擬戦を終えたチームは、それぞれに士気を高めながら次の試合に向けて準備を進めていくのだった。




◇◇◇◇




それぞれが準備を終え、模擬戦に付き合ってくれた友人チームに感謝の言葉をかけた。彼らが「この後一緒にお茶でもどう?」と誘ってきたが、忙しい為断ったので、トボトボと帰って行った。


彼らの背中を見ながら、璃月は自分の手を見つめながら、内心で驚きを隠せなかった。


(たった一日、一緒に行っただけでこれほど強くなるなんて……)


彼女が驚いた理由は三つあった。


一つ目は、暁とアイリスの動きを見ていたこと。

ダンジョンでの彼らの戦闘は圧巻だった。攻防の隙間を見逃さず、次々と敵の動きを封じていく連携は、まるで一つの生き物のようだった。璃月はその動きを間近で見ながら、無意識のうちにその戦い方を自分の中に取り込んでいた。


「このタイミングで攻撃するんだ……」

「こうやって、相手の反応を誘導しているのね」


彼らの戦術を理解し、自分の戦いに応用することで、璃月は短期間で劇的な成長を遂げていた。


二つ目は、暁からのアドバイスだった。

「璃月、スキルの力に頼るんじゃなくて、自分の動きを信じるんだ。剣を振るうときは、迷いを捨てて『絶対に当てる』と心で決めてから動く。それだけで、今よりずっと速く、強くなれる。璃月は周囲の事を気にしている感じがするから、力を十二分に発揮できていないと思うんだ。周囲を気にせず、思い切り剣を振り切るのがいいよ。後のフォローは周りがするからさ」


その言葉を実践した結果、璃月の動きはこれまで以上に鋭く、力強いものになっていた。攻撃するたびに迷いが消え、全身が自由に動いている感覚があった。


三つ目は、スキルレベルの向上だった。

暁がダンジョン探索でランクEの魔核を大量にくれたおかげで、璃月のスキル「月光刃」のレベルはついに11に突入した。


「まさか、あんなに大量の魔核をもらえるなんて……。暁たちは平然と集めていたけど、あの量は正直異常だったわ……」


あの日、ダンジョン探索で手に入れた魔核は驚異的だった。


ランクF魔核を103個、ランクE魔核を78個、そして、ランクD魔核が2個も!


ランクDの魔核を手に入れるなど、璃月にとっては想像もつかない偉業だった。普通の探索者なら、討伐どころかランクDモンスターに接近することすら困難だ。それを暁、アイリス、そして凜が軽々と成し遂げていた。


「ランクDモンスターなんてどうやって討伐するのか、考えるだけで途方もないのに……。暁たち、本当に常軌を逸していたわ……」


彼らの卓越した戦術と圧倒的な力を目の当たりにした璃月は、自分との実力差を痛感すると同時に、目指すべき高みを見た。


スキルレベルが10を超えたことで、「月光刃」の威力は目に見えて強化された。剣に宿る光は以前よりも鋭く輝き、放たれる斬撃は模擬戦で友人チームの防御陣を一撃で粉砕するまでに至った。


斬撃が敵の陣形を切り裂いた瞬間、周囲からどよめきが起っていたことを思い出す。

「これがスキルレベル11の力……。私、こんなに強くなれるなんて……」


璃月はその力を実感するとともに、少しの畏怖も抱いた。それは、今までの自分では想像できなかった新たな自分だった。


璃月は深呼吸をして、心を落ち着かせた。胸の内に湧き上がるのは、これまで以上に大きな自信と揺るぎない決意だった。


(暁君、アイリスさん、凜ちゃん、ありがとう。けど、私はもっともっと強くなるわ。きっと、あなたたちの力になれる存在になるから)


彼女はそう心に誓うと、明後日の試合に向けてさらに念入りに準備を進めていった。

璃月の目には、まっすぐな光が宿り、その背中には強者としての風格が漂い始めていた。


______________________________________


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防御結界無双 カフェラテ @kaferate

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