第40話 星霞璃月①
アイリスは即座に手に防御結界を展開し、無駄のない動きで星霞璃月の喉元を狙って手刀を繰り出そうとした。だが、その一瞬の動きを読んでいた暁が鋭い声で命じた。
「待て、アイリス!」
その声にアイリスの動きがぴたりと止まる。彼女の冷たい視線は星霞璃月を捉えたままだったが、その背後に秘めた意図は明白だった。アイリスは既に、ダンジョンの情報が外部に漏れた際のリスクを即座に分析し、その結果として、星霞璃月を排除するのが最善と判断していたのだ。
しかし暁は、アイリスの忠誠心を痛いほど理解しつつも、冷静さを保ちながら行動を制した。
「暁君……?」
星霞璃月の声は困惑と不安で震えていた。彼女は状況がつかめず、暁に問いかける視線を送る。
暁は微かに息を整えながら、慎重に彼女へ声をかけた。
「星霞さん……どうしてここに……?」
星霞璃月はその問いかけに怒りを込めて詰め寄った。
「暁君、一体何をしてるの!?」
その迫力に一瞬たじろぎながらも、暁は必死に言葉を探した。
「な、なんで星霞さんが僕の家に……?」
星霞璃月は息を詰めながら答える。
「暁君が家に入っていくのを見て、声をかけようと思ったの。でも、全然反応が無くて、家の中に入って・・・」
言葉を言い終わる前に、星霞璃月の視線が、暁の背後に注がれる。それに気づいた暁が反射的に抱えた袋を隠そうとしたその瞬間――
ゴトッ……!
袋から転げ落ちたのは、漆黒の輝きを放つ魔核だった。その異様な光景に璃月は目を見開く。
「これ……魔核!?しかも、こんなに大量に……!」
璃月は息を呑み、驚愕を隠せないまま暁に詰め寄った。
「暁君、これ一体どういうこと?説明して!」
暁は視線をさまよわせたが、やがて観念したように深く息を吐いた。彼女を真っ直ぐに見据え、言葉を絞り出すように語りかけた。
「星霞さん……、このことは絶対に誰にも言わないって約束してほしいんだ」
璃月は暁の必死な様子に圧倒されつつも、頷いた。
「もちろん。暁君には何度も助けてもらったから、約束するわ。絶対に誰にも言わない」
その返事に安堵の表情を見せながらも、暁の顔にはまだ迷いが残っていた。暁は隣に立つ凜に目配せをすると、凜はそっと彼の腕を軽く叩き、柔らかな声で囁いた。
「大丈夫、お兄ちゃん。話しても平気だと思う」
軽く頷いた暁は、静かに拳を開き、覚悟を決めたように口を開いた。
「星霞さん・・・、僕たちがいるこの場所……ここは神々の塔と繋がっているようなんだ」
彼の告白に、星霞璃月の目が驚愕に見開かれる。空間に緊張が漂う中、暁の話はさらに深く続けられていった――。
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