第31話 闘技祭初日⑥

星霞璃月はリングから降り、級友たちと勝利の喜びを分かち合った。


「おめでとう!!」

「凄かったね!」

「神代さんの霜獄結界は、半端ねぇな!!」


その言葉に、神代雪乃はほんの少し顔を赤らめながら微笑んだ。「ありがとう。でも、みんなの応援があってこその勝利だよ」


篠崎結衣が皆に微笑みながら感謝の思いを伝えていた。「ありがとう。ありがとうね」


水城未来が一歩前に出て、戦況を冷静に分析していた。「敵の動きが読めたからこそ、戦いを有利に進められたね。私たちの連携の勝利ね」


星霞璃月は少し照れたように笑って、「本当にみんなのおかげだね。ありがとう。けども、まだまだ反省点はあるよ。次の試合に向けて、もっとみんなで強くなろうね」としっかりとした決意を見せた。


しかし、星霞たちはリングの外のクラスメイト達と話ながらも暁の姿を探していた。彼の姿は全く見当たらなかった。星霞璃月は少し不安そうに周囲を見渡した。


「暁君、まだ来てないね」


篠崎結衣もうなずいて言った。「そうね。事前に言ってた通りね。暁君、今日はポーターの仕事があるから、今日は試合には間に合わなかったね」


神代雪乃も頷きながら、少し心配そうに言った。「確か、急に依頼が入って、どうしても行かなくちゃいけなかったんだよね。だから、今は戻ってこれないんだろうけど……」


水城未来が冷静に言う。「そうだね。ポーターとしての仕事も重要だし、神々の塔の探索の途中で戻るのは難しいしね」


星霞璃月は少し納得したように息をついてから、「そうだったね。さぁ、1週間後の次の試合に向けて準備していこうか。彼のことは気にしないで、私たちが次に向けて準備しましょう」


それぞれが次の試合に向けて心を新たにし、もう一度気持ちを引き締めた。その間も、星霞璃月は常に周囲を見回しながら、暁の姿を探した。無事に神々の塔の探索を終えて戻ってくることを願った。


星霞璃月は、次の試合に向けて準備を始めながらも、心の中では暁のことを考えている。試合が終わった後も、暁のことが頭から離れなかった。


(暁君、今ごろは神々の塔の探索をしているのかな……?)璃月は静かにその考えを頭の中で繰り返しながら、仲間たちと話す言葉の合間にも何度も視線を送り、無意識に暁の姿を探していた。


「でも、暁君がいなくても私たちは頑張らなきゃいけないんだよね」星霞璃月は心の中で自分を奮い立たせ、次の試合に向けた準備に集中しようとする。だけど、どうしても心のどこかで気になってしまうのは、暁がどうしているのか、無事に神々の塔の探索を終えているのかということだった。


その中で、星霞璃月はふと思いつく。


(あ、そうだ。暁君にお礼をしないと……)


試合での勝利は当然嬉しかったが、暁が自分たちにとってどれほど重要な存在なのかを再認識していた。暁のサポートなしには、今回の試合でも勝利を掴むことは難しかっただろう。彼が無事に戻ってきたら、きちんとお礼をしないと、という思いが強くなった。


(でも、どうやってお礼をすればいいんだろう……?)星霞璃月は、しばらく考え込んだ。暁はいつも冷静で淡々としているため、贈り物や大げさなお礼は逆に彼に気を使わせてしまうかもしれない。そのことが気になって、星霞璃月は頭を悩ませた。


「たとえば……一緒に食事でも?」璃月はふと思いつき、それが少しだけ実現可能なアイデアだと思った。でも、暁と一緒に食事をとっている自分の姿を想像して、顔を赤くしてしまった。「それもいいけどねぇ」と言いながら、考えを頭から消すようにした。


(ああ、どうしよう。やっぱり……うーん。)星霞璃月は少し落ち着かない様子で、頭の中を整理しながら仲間たちの話に耳を傾けた。すると、ふと水城未来が星霞璃月の表情が転々とするのを見て、何か気づいたように声をかけた。


「璃月、どうしたの? さっきから少し考え込んでるみたいだけど」


星霞璃月は急に顔を上げて、未来に微笑んだ。「ううん、何でもないよ。ただ……暁君にお礼をしたいなと思って。彼、私たちがここまで来られたのに、すごく貢献してくれてたし」


水城未来はにっこりと笑って、「それなら、何かさりげないことで感謝の気持ちを伝えたらどうかな? 暁君、あんまり大げさなことは好きじゃないでしょ?」


星霞璃月はその言葉にハッとした。「そうだね、彼は派手なことが苦手だもんね。じゃあ……次に会ったとき、いつも通りに声をかけて、さりげなくお礼を伝えようかな」


その一言で、星霞璃月はようやく自分の中で答えを見つけたような気がした。大げさなことをするのではなく、普段通りの普通のやりとりの中で、感謝の気持ちを込めて伝える。それこそが、暁にとって最も心地よい方法なのだと確信した。


星霞璃月は静かに頷きながら心の中で決意を固め、次の試合に向けての準備に集中し始めた。暁の無事を祈りつつ、心の中で感謝の気持ちを温めて、仲間たちと共に力を合わせることを誓った。その気持ちが、次の戦いで必ず力になると信じて。



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