第28話 闘技祭初日③
アナウンサーは大きな声で叫んだ。
「鷹沢チーム!凄まじい勢いだ!!」
鷹沢チームはこれまでと同じく、超速攻型で試合を決めるつもりだった。彼らのリーダー、鷹沢が先頭に動き、全員がアタッカーとして一斉に前線へと突進していく。まさに圧倒的なスピードと火力を誇る動きだ。その動きはまさに電光石火。一瞬で星霞チームとの距離を詰め、猛攻を仕掛けてきた。
「しつこい男は嫌われるわよ!」
神楽沙羅は、風刃疾走のスキルで敵をかく乱し阻もうとした。ホイッスルと同時に飛び出した神楽沙羅に対して、鷹沢たちは一斉に攻撃を仕掛けた。鷹沢チームの圧倒的な速度に圧倒され、4つ目の攻撃までは受け流し回避できたが、最後の5人目の攻撃が神楽沙羅の死角から飛び出し、鋭い斬撃が神楽沙羅の足にクリーンヒットし、横に吹き飛ばされた。
バン!!!!!
ピッ!「68」
神楽沙羅の腕の数値が100から68に変わった。衝撃はあったものの、痛みは全く感じなかった。
「おぉ、良い一撃が入ったな。LP30は削れたか?」
「くっ、速い!」
アナウンサーは「最初のアタックは鷹沢チーム!神楽選手LP68だ!」
アナウンサーは、自分の目の前に並んでいる数値を見ながらLPの状況を全体に伝えた。
神楽沙羅が叫ぶ間もなく、鷹沢チームの一人が追撃を開始し、他のメンバーは神楽沙羅を無視して突進してきた。
篠崎結衣は漆黒の守護を展開し、素早く動き回る鷹沢チームを閉じ込めた。突如現れた漆黒の守護に鷹沢たちは激突した。
ガン!!!ガン!!!ガン!!!ガン!!!ガン!!!
しかし、その柱に鷹沢たちは冷静に攻撃を加え、巨大な黒い柱は次第にひび割れ、見る間に破壊されていく。篠崎結衣は更に漆黒の守護を展開し続け、鷹沢たちの攻撃力を削いでいこうとするが・・・
「おらおらおらおら!!!こんなもん、直ぐに壊してやるよ!!!」
「はははは!!脆い脆い!!これが篠崎の漆黒の守護か!こけおどしだな!」
アナウンサーからは、「戦闘が始まってすぐに猛烈な攻防戦が続く!!星霞チームも一歩も引いていない!!」との解説が学校全体に響いた。
破壊されていく漆黒の守護と、風刃疾風でリング状を縦横無尽に動き回る神楽沙羅。
星霞璃月は全体の流れを冷静に俯瞰しながら、片手剣の周囲に十何個もの月光刃を発動して漆黒の守護の合間を抜けるように放った。しかし、鷹沢たちは星霞璃月の狙いを先読みし、漆黒の守護の破壊された隙間から入ってくる月光刃を正確に避けていく。
「ちっ!読まれているわ!」
星霞璃月は冷静さを保ちながらも、怒涛の勢いで迫ってくる鷹沢たちに焦りを感じ始めていた。
神代雪乃が冷静に霜獄結界を発動し、鷹沢たちの動きを鈍らせようとするが、鷹沢チームはそれすらも回避するほどの敏捷性を見せつける。
「デバフが奴らに追い付かないわ…」
神代雪乃が小さく呟いた。その冷気すら突破され、鷹沢チームは次々に生成されていく漆黒の守護柱を破壊し続けた。
「邪魔なんだよ!!!烈火刃!!!」
鷹沢が振るう大剣の一振りに、巨大な炎が纏い、触れる大量の漆黒の守護柱を一刀両断していく。そして、鷹沢が一人、星霞チームに辿り着き、巨大な木剣を横薙ぎした。
「あっ!!!!!!」観客からも声が漏れた。
「これはピンチか!!??鷹沢選手が星霞チームに強烈な一撃だ!!!」アナウンサーが拡声器の魔道具を握りしめながら叫んだ
しかし、水城未来が水鏡加護のスキルで、味方を覆い、幻を使ってチームの位置を隠していた。鷹沢は星霞の幻影を切り裂いたに過ぎなかった。
「どれかが本物なんだろ!!全部潰してやるよ!!!おら!おら!おら!おら!おら!」
鷹沢は構うことなく、スキル烈火刃を周囲に放ち続け、何十とある幻影の星霞たちを猛烈な勢いで霧散させていく。水城未来が出現させる幻影の数より、破壊されていく数が圧倒的に多い。水城未来のサポートも十分に機能せず、星霞チームの劣勢は続いていた。
「こんなもんか!?お前らは!!歯ごたえねぇな!!」
鷹沢たちの周囲は業火に包まれ、リングの一角は炎上していた。他のメンバーも続々と漆黒の柱を破壊し、幻影破壊に参戦した。
鷹沢の攻撃は勢いを増し、まるで嵐のように星霞チームを飲み込もうとしていた。漆黒の柱を破壊しながら進む、他の鷹沢チームメンバーは、とうとう柱の生成スピードを追い越した。
鷹沢が冷笑を浮かべながら叫ぶ。「これが超速攻型の攻撃だ。お前らに勝ち目はねぇんだよ!!」と言い、目の前の幻影と柱を全て木端微塵にした。
星霞チームのメンバーが各自の防御と反撃を試みる中で、観客席からは息を呑むような緊張感が漂う。
アナウンサーは心配そうに「ほ、星霞チームは大丈夫でしょうか・・・?」とリングを見つめた。
しかし、どの幻影も本体の星霞たちではなく、そこにもう既に星霞たちはいなかった。
「さすがね…」
星霞たちは既に、元々いた場所にはおらず、リングの反対側に移動していた。
「けどもせいぜい、そこで力を出し切ることね」星霞は臨戦態勢を解かずに遠くから鷹沢チームの推移を見守っていた。
鷹沢たちは周囲を見て、不自然に風景が歪んでいる部分を見つけた。
「鷹沢さん!おそらく、あそこです!!」
「おう!!お前ら逃げ回るだけか!?さっきの威勢はどこ行ったんだよ!!」
「鷹沢チーム、怒涛の追撃だ!!星霞チームは大丈夫かーーーー!!??」アナウンサーの絶叫が響き渡った。
更なる勢いを増し、再度鷹沢たちは鷹沢を先頭に一本の牙のように星霞チームに襲い掛かった。
そこに、神楽沙羅は再度風刃疾走で後方からの攻撃を仕掛けた。
「ここだ!!」
しかし、周囲を警戒しながら動く鷹沢チームメンバーに先に見つかり、逆に反撃を受け、足を掴まれ、リング状に叩きつけられた。
ピッ!「65」「クハッ!!」
神楽沙羅の上を鷹沢のチームのメンバーが馬乗りになろうと襲い掛かった。
「バーカ!!見え見えなんだよ!!女は前線に出てくんな!!出てきていいのは、男の下だろうが!!はははは!!!」
「くっ、避けられない…!」
神楽沙羅が馬乗りになられそうになった、その瞬間、篠崎結衣が漆黒の守護を神楽沙羅と鷹沢チームメンバーとの間に間一髪、漆黒の柱を展開。
「くそっ!!」
すぐにはその柱は粉砕できず、その間に神楽沙羅はその場から脱出した。
「ありがとう。助かった」神楽沙羅は、篠崎結衣に小さくお礼を言った。
水城未来は水鏡加護スキルでなんとか幻影を駆使して全員を守ろうとするが、鷹沢はチーム一体となって、猛烈な勢いで幻影を破壊し尽くしていく。
その時、鷹沢の放った一撃が水城未来の元に迫り、躱すことができずその衝撃で水城未来は側方に吹き飛ばされる。
ピッ!「30」一気に70ものダメージが水城未来に通った。
「きゃっ!」
アナウンサーは驚愕の表情で、LPカウンターを見て絶叫した。「大ダメージ!!!ダメージ70!!」
「よし!!当たったか!!めんどくせぇスキルだぜ」
「お前うぜぇよ!!ここだ!!!!」
鷹沢チームの一人が床に倒れ込む水城未来を捉え、彼女の体に蹴り上げた。凄まじい勢いで彼女の体はリングの外へと強烈に吹き飛ばした。幻影が全て霧散し、水城未来は闘技場の床に叩きつけられる。
「未来!!??」璃月の顔が一瞬険しく歪む。
「ごめん・・・」
魔導具によってダメージはLPシステムによって守られ、無傷であるものの、水城未来は悔しそうに地面を叩いた。
アナウンサーは水城未来を見て言った。「一人ダウン!!現在5対4!」
追い討ちをかけるように、もう一人の鷹沢メンバーが神代雪乃に襲いかかり、周囲の冷却をモノともしない猛攻を繰り出す。篠崎結衣は必死に漆黒の柱を立て続け、鷹沢たちの侵攻を押しとどめていたが、その攻撃の圧力に耐えきれず、神代雪乃もまたリングの外へと吹き飛ばされた。
「ダメ――――――!!!」
吹き飛ばされる神代雪乃を篠崎結衣が後ろから手で支え前に押し出し、神代雪乃が受けた勢いを、そのまま篠崎結衣が代わりに受け、リング外に吹き飛んでいった。
ドン!!!篠崎結衣はリングの外に転がった。「くっ!!」
神代雪乃は顔しかめ篠崎結衣を一瞥し、鷹沢たちを睨んだ。
「これで二人脱落!しゃぁあぁぁぁあああ!!」
鷹沢は歓喜の声を上げて、士気を上げていった。
アナウンサーは叫んだ。「2人目もダウン!!5対3!星霞チームピンチだーー!」
星霞チームは絶体絶命の状況に追い込まれた。残るメンバーは星霞璃月、神楽沙羅、そして神代雪乃の三人。しかし・・・
「フッ・・・」星霞璃月は不敵笑った。
リング外で倒れた水城未来と篠崎結衣は、わずかに微笑みを浮かべながら、璃月に向けて頷く。その視線は信頼に満ちていた。
「さすがに簡単には行かないわね・・・けども・・・」星霞璃月の穏やかな表情に決意の色が宿る。星霞チームの反撃の狼煙が、静かに上がろうとしていた。
「ここからが本番よ!」
「本番??!!ははははは!!!もう終わりだよ!!5対3だ!勝ち目はねぇ!」
もう既に幻影のない状態であり、明確にどこに星霞たちがいるかが視認できている。
その中、突然神楽沙羅がどこからともなく現れ、鷹沢たちに攻撃を仕掛けた。
小太刀を自在に操り、鷹沢たちの間を通り抜けていった
ピッ!「92」ピッ!「95」ピッ!「94」ピッ!「91」ピッ!「98」
通り抜け様に全員に一撃を素早く与え、鷹沢たちのLPを削って行った。
「ざまぁ!油断しているからよ!」
「さっきから、ちょこまかとイラつく奴だ!!一気にこいつをぶち殺すぞ!!!」
その鷹沢の大号令で、鷹沢チームは神楽沙羅目掛けて一斉攻撃を始めた。
「おら!おら!おら!」
ピッ!「54」ピッ!「52」ピッ!「50」ピッ!「48」ピッ!「44」ピッ!「41」
「へへへへへ。ジリ貧だな!!お前もう退場だぜ」
「グチャグチャうるさいわね。調子の良い事言っている割には私を捕えられていないわよ!!!」
「うるせぇ!!このジリ貧女が!!」
闘技リングの場内に響き渡る観衆の歓声は、まるで波のように押し寄せ、響き渡った。初戦から白熱の攻防戦が繰り広げられ、生徒、保護者、教員、ゲストたちは、大興奮状態だった。
リングの端に追い詰められ、圧倒的に劣勢になっている星霞たちだった。しかし、気付くと、鷹沢チーム5人が一斉に神楽沙羅に攻撃を仕掛けているが、神楽沙羅は全ての攻撃を回避し続けていた。
「すごい!!」
「どうやって5人の攻撃を全て避けられているの?!」
「ギリギリで避けている!!」
「キレイ・・・まるで女神が躍っているようだわ」
「微かだが、当たっている・・・全てかすり傷だろうが、このままだと持たないぞ・・・」
アナウンサーも同様に目を丸くして神楽沙羅の絶技を見つめる。「き、驚異の回避能力!!これが回避タンクの真骨頂だ!!!」
観戦者からは口々に、神楽沙羅の人並外れた回避の絶技に魅入られた。
「こいつ!!!」
「なんで当たんねえぇんだ!!!!」
「くそくそくそ!!!」
星霞は後ろから神楽沙羅の驚異の回避行動を見ながら、特大の月光刃を放てるように力を溜めていた。
(沙羅がただ回避だけに集中していたら、これぐらいのことはできるわ。これが彼女の本来の戦い。回避タンク・・・。下手に私が攻撃を仕掛けると、ターゲットが分散する。攻撃のタイミングが難しい・・・けども、沙羅も全てを避けられているわけじゃない。早くしないと)
神楽沙羅も俊敏に全ての攻撃を回避はしているものの、少しずつ削られている感覚はある。
(ぴえぇーーん!!璃月!雪乃!早くして!!)
外面ではクールな表情を崩してはいないが、内面では神楽沙羅はかなり焦っていた。
円形のリングの端で、星霞チームは確実に苦境に立たされている。リングの表面は戦闘の熱気と周囲の熱狂的な歓声とは裏腹に殺気が飛び交う冷気が漂っているようだった。
神楽沙羅は攻撃することを捨て、鋭い刃を振るいながらも、敵の嵐のような猛攻を防ぎ続けていた。鷹沢たちは5人が全員で次々と斬撃や水球などを放つが、神楽沙羅は自分のスキル風刃疾走を脚と眼に局所的に集中させ、完全に回避だけに特化した仕様にしていた。
神がかり的な反射神経と俊敏さで、敵の圧倒的な攻撃をギリギリのところで躱し続ける。
神代雪乃は、この圧倒される戦況の中でも冷静な表情を保ち、霜の結界を広げ続けていた。
星霞璃月は冷静に深呼吸をした。耳をすませば、リングのあちこちに、「ピキ、パキ、パキ」と小さな音が混乱の中で響いていた。星霞璃月は神楽沙羅に「もう少しだ!耐えて!」と叫び、神代雪乃は冷気を深めていた。
神代雪乃の指先が微かに震えた。「行ける」神代雪乃は星霞璃月に合図を送った。
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