第19話 ダンジョン探索②
(もし僕の防御結界が、奴の攻撃に耐えられなければ、もう勝つ見込みはゼロだ。しかし、奴の攻撃に耐えられているのであれば、勝てる!)
ドドド―――――――――ン!!!!!!!!!!!!!!!
ブラッドアラクネの全長5、6メートルもの巨体が防御結界に激突した。防御結界は壊れることなくその場に存在を続けた。ブラッドアラクネは猛烈な勢いでの体当たりであった為、まさか自分の攻撃に耐えうる存在があろうとは想像もしなかっただろう。1メートルほどの結界は、ブラッドアラクネの体内を抉っていった。
キャシャシャシャシャギャジャジャジャアジャジャ!!!!!
ブラッドアラクネの胴体に大きな裂傷が生まれた。痛みに悶えるブラッドアラクネはその場で絶叫を繰り返し、当たり構わず転げまわっていた。轟音を伴い、ダンジョンの壁にぶつかっている。
その際に小さい防御結界が所々にあったものがブラッドアラクネに激突し、更に体をズタズタにしていった。
暁は振り返り、こちらに向かってこないことを確認した。
(いけたのか・・・?聖域スキル、凄い・・・)
そして、暁は再度ブラッドアラクネに向かって突進した。
「ここだ!!!!!」
暁は長い棍を可動式防御結界で覆い、思い切りそれを転げ回るブラッドアラクネの頭部に投擲した。棍は頭部を貫通し、ブラッドアラクネの体の奥深くまで深く貫いていった。ブラッドアラクネの体は小刻みに振動をして、とうとう沈黙した。
「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」
はっきり言って生きるか死ぬかのギリギリのところだった。何か少しでも違っていたらそこで横たわっているのは暁自身であることを、暁自身がよくわかっていた。
ブラッドアラクネが沈黙し、これ以上動かないことを確認するのに十数分かけた。まさかこの状態からもう一度暁を狙って殺そうとしているかもしれない。
ジリジリと待ちながら、ブラッドアラクネの様子をじっと見ていた。近くの石を拾い、可動式防御結界を纏わせ、思い切りブラッドアラクネに投擲した。
石は同様にブラッドアラクネの胴体を貫通したが、反応は全くなかった。
「ふぅ・・・どうやら完全に討伐できたようだな・・・」
残心を解いて、暁は地面に座り込んだ。
ブラッドアラクネの死骸に近付き、手に可動式結界を薄く鋭利な形状に変形させ、ブラッドアラクネを解体し始め、体内にある魔核を探した。
ドロドロと様々な液体が流れ落ち、それらが地面に落ちると、ジュゥと音を立てて、地面を溶かしていく。
「毒液か・・・こんなものも持っていたんだな」
おそらくだが、毒液で獲物を殺した場合、捕食できる肉の部分が減ってしまう。だから、できるだけ粘糸で絡めとって拘束してゆっくりと食すのがブラッドアラクネの戦法なんだろう。
しかし、その戦法と敵のスキルを見誤ったのが、今回のブラッドアラクネの敗因だろうな、と暁は心の中で呟いた。
体を可動式防御結界で覆い、どんどんブラッドアラクネの体内を探索していった。毒液が暁の体に零れ落ちていくが、全く影響をする事なく、暁はどんどん奥へ入っていく。そして、とうとう魔核を発見した。魔核は肥大した腹部の中にあった。巨大な透明な紫色のボーリングの玉サイズの岩が出てきた。
「す・・・凄い・・・たしかブラッドアラクネはランクCのモンスターだ。こんなモンスターを僕単独で討伐できたなんて・・・。ランクCモンスターなんて、普通レベル200ぐらいのスキルウィーバーが10人かかって倒せると言われているのに・・・聖域スキルの性能が破格すぎるんだ」
暁はブラッドアラクネの体から脱出し、さっそくその岩を地面に叩きつけ破壊した。大量の霧状の物質が噴出し、全て暁の体へと吸収されていった。
時雨暁
スキルレベル20(192/2000)
サージポイント800/800
発動条件
・塔内であること
・パーティメンバーがいないこと
スキル
①固定式絶対防御結界
・結界範囲:接触箇所
・結界同時発動数:30枚
・結界発動時間:24時間
・消費サージポイント:1
②可動式絶対防御結界
・結界範囲:接触箇所
・結界同時発動数:20枚
・結界発動時間:10分
・消費サージポイント:10
③・・・
かなりレベルが上がった印象だ。おそらくランクC魔核は、ランクD魔核の100個分ぐらいの価値はあるだろうから、一気にスキルレベルが上がった。
こんな経験を何度もしないと、スキルレベルが上がらないのかと思うと、気が遠くなる話だと、暁は思った。
「そうだ、子供のワイバーンだ」
天井部に眼をやると、既に意識を手放していた子供のワイバーンがいた。
跳躍し、子供のワイバーンの所へたどり着いた暁は、絡みついた糸を手早く切り始めた。糸は粘着性が高く、切り離すのに苦労したが、やっとワイバーンの体を自由にすることができた。暁はワイバーンの体を抱きしめ、安全に地面にまで運んだ。「お前、生きてるな?動けるか?」と体を優しく擦りながら意識の有無を確認したが、ワイバーンは意識なく震えているだけだった。暁はその体を支えつつ、床に静かに下ろした。
再び天井の巣に眼をやると、巨大な糸の塊が何十個もあることに気付く。そしてその一つが、この子供ワイバーンの親だ。
「たしか、あれだったな・・・」
糸の中が白い体になっている糸の塊に向かって跳躍し、なんとか天井の蜘蛛の巣と整合されている部分を切っていった。
ド――――――ン!!!!!
切り離された巨大な糸の塊はダンジョンの床に落下し、ダンジョンを揺らすかのような音を立てた。
次はその糸を、親のワイバーンの体から引きはがす作業だが、これもかなり大変だった。
作業の間も何度も何度も可動式防御結界を発動させては解除、発動させては解除を繰り返していた為、もうサージポイントが半分ぐらいまで減っている。
数十分間は作業をしたのだろうか。後ろでは子供のワイバーンが首だけをこちらに向けて見ていた。
「キュキュキュ・・・」
力なくこちらに向かって何を言っているようだ。子供のワイバーンは傷ついた体を引きずって、既に息絶えている自分の親のワイバーンの体に自分の顔を擦りつけている。
「・・・」
暁はその光景を驚きながら見ていた。
(親子の絆・・・?モンスターにそんな知性があるのか?)
そして、突然子供のワイバーンは、親ワイバーンの体に噛みつき、肉を噛み切った。
「!!??」
それから、ガツガツと胸の骨を割り、体内の内臓に頭を入れていく。
ガツガツガツガツガツガツ
そして、血みどろの頭を出すと、口の中に大きな魔核を咥えて出てきた。
「キュー」
声は愛らしいが、見るからにグロテスク。そして次の瞬間「ガキッ!!!」と口の中の魔核を噛み砕いた。
中から出てくるエネルギーを吸収し、子供のワイバーンが暁に向かって歩いてきた。
暁は一瞬身構えたのだが、ザザザザッと、ダンジョンの奥から何かが大量にこちらに向かって来る音が響く。音からして、おそらく先ほどのブラッドアラクネに準ずるような蜘蛛が向かっているのだろうか。
「やっぱり簡単には終わらないな・・・」
暁は咄嗟に固定式の結界を発動し、空間に十数もの防御結界を設置し、暁はダンジョンの入り口の方向に向かって走り始めた。1匹なら何とかなるのだろうが、多数であれば分が悪い。
後ろからは、暁を追ってワイバーンも空中を飛び、退避をし始めた。
蜘蛛が結界に衝突し絶叫する声が響く中、暁は安全な場所を探しながら走り続けた。
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読んでいただいて本当にありがとうございます(TT)
レビュー★★★をお願いします。(><)今後の創作の励みになりますm(_ _)m
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