第11話 闘技祭

担任の教員が教室に入ると、すぐにその場の空気が一変した。彼は黒板に「闘技祭」と書き、クラス全体に向けて発表を始めた。


「今から2か月後、9月に例年通り、闘技祭が開催されるぞ。スキルウィーバーとノンスキルウィーバーがそれぞれの大会で、個人戦とパーティ戦に分かれて競い合う。今年も、あの熱い戦いが繰り広げられることになるので、全員、気合を入れて挑めよ!!」


クラス全体がざわつく中、暁は少し身を乗り出してその話に耳を傾けていた。「闘技祭」と聞くだけで、彼の心は高鳴るものがあった。この大会は、ただの競技ではない。スキルウィーバーとノンスキルウィーバー、異なる力を持つ者たちそれぞれで戦うことで、その実力を証明し合う場でもあったからだ。


「スキルウィーバーたちは実際にスキルを使用して戦うが、ノンスキルウィーバーたちはデモ戦闘で指揮官として戦う。つまり、お前たちノンウィーバーにとっての闘技祭は、お前たちの頭脳を駆使して戦うことが求められる」担任が言葉を続けると、クラスの中でさらに話し声が広がった。


「つまり、俺たちノンスキルウィーバーは、頭脳戦だな」一人の生徒がつぶやくと、他の生徒たちも頷きながら同意する。


「その通りだ」担任はにっこりと微笑んだ。「スキルウィーバーとノンスキルウィーバー、どちらにも勝つための条件がある。それぞれの役割を果たすことが大事です」


暁は少し考え込んだ。「さて、この闘技祭に参加するメリットは・・・」そう考えていると、担任の説明が続いていった。


「そして、最も重要なのは知略だ」担任はノンウィーバーの競技の説明に差し掛かると、クラスメートたちは一斉にその言葉に耳を傾けた。「1対1の軍隊指揮シミュレーションゲームだ。歩兵、騎兵、弓兵、砲兵など、様々なユニットを用意し、それぞれに強みと弱みを設定する。ランダムな地形が与えられ、その中の高低差や障害物など、地形を読み解く。天候も変わり、雨、雪、霧など、天候が視界や移動速度に影響を与える。敵軍を全滅させるか、旗の奪取を行えば勝利だ。補給線、兵站基地など、後方支援も戦略に大切で、異なるユニットを組み合わせることで、強力なコンビネーション攻撃を繰り出すこともできる・・・」


ノンウィーバーの生徒たちは、このシミュレーション対戦の全てが、そのまま神々の塔の攻略に繋がることがよく分かった。自分が指揮官として戦う時、自分にできることは何か、そしてどう戦うべきか。その答えを見つけることが、この戦略戦の鍵になると感じた。


そして、続けて担任から大会参加に関する手順が説明された。


高校内代表選の開催

デュアル高校内で代表者を決定するためのイベントを開催。このイベントは、①スキルウィーバー科個人戦出場者、②ノンスキルウィーバー科個人戦出場者、そして③スキルとノンスキルウィーバー科混成チームでそれぞれのカテゴリーで競い、高校代表を選出。


選考方法に関しては、スキルウィーバー科個人戦では、戦闘訓練を兼ねた模擬戦や戦闘技術の試験が行われる。ここでは、スキルの発動のタイミングや駆け引きが重視され、パフォーマンスが優れた者が代表に選ばれる。


ノンスキルウィーバー科個人戦では、戦略ゲームでの指揮力が試される。指揮官としてシミュレーション戦闘を行い、いかに適切な指揮を取れるかが評価基準となる。


今回新しく導入される、スキル・ノンスキルウィーバー混成チーム戦では各チームがスキルウィーバーがチーム戦を行う。この戦いでは、スキルウィーバーが前線で直接戦闘を行い、ノンスキルウィーバーがその動きを後方から指示するという構成が基本となっている。ノンスキルウィーバーの指揮が優れていれば、チーム全体の連携が整い、スキルウィーバーたちの強さがさらに引き出される。


混成チーム戦で特に重要なのは、戦場全体を俯瞰できるノンスキルウィーバーの指揮能力と、指示に応じて迅速に動くスキルウィーバーの判断力だ。このため、指揮官の的確な判断や瞬時の対応が勝敗を分ける。指揮官の指示を無視して独断で動けばチームの陣形が崩れ、相手に隙を突かれる可能性が高まる。


各校の代表者は各カテゴリーから1人もしくは1チームのみの選出となり、その後、各校の代表者が対戦することになる。対戦は、スキルウィーバー科の高校同士、ノンスキルウィーバー科の高校同士、または両科が混在するカテゴリーで行われる。


各戦闘が終わると、戦闘力、戦略、連携を基にした評価が行われ、順位が決まる。大会では、勝者が次のラウンドに進むシステムを採用し、最終的な優勝校が決定される。


優勝校には、特別な賞金や名誉が与えられる他、財閥ギルドなどからスカウトが訪れるなど、将来的な進路にも大きな影響を与える重要な大会となっている。


このような理由でこの新大阪都市で高校生を中心とした闘技祭が行われているのだが、またそれに加えて、代表者たちが成長を促す目的もある。戦闘を重ねるごとに、連携力やリーダーシップが向上し、最後には各校の特徴が際立った戦いが繰り広げられるのだ。


だいたいの説明を聞いて、暁は自分がこの闘技祭に参加するかどうかを考えたが、答えは明白だ。考えるまでもない。


今の段階で自分がスキル発動できるなんてことを暴露することに何のメリットもなかった。それに、今はどれだけスキルレベルを上げることができるか、それが目下最大の目標だ。学校の闘技祭に構っている余裕はない。もちろん将来のギルド就職に関しては、一抹の不安は残るが、それまで1年もあるわけだから、今焦る必要はない。


そう思いながら、後の担任の説明を聞き流しながら、家に帰ってからのダンジョン探索のことを考えていた。




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