第9話 スキルアップ

「おぉ!!増えている!この可動式絶対防御結界は・・・たったの10分だけか。おそらく、これを使って武器として使えるのもしれないな。


スキルレベル3(130/300)

サージポイント60/60

発動条件

・塔内であること

・パーティメンバーがいないこと

スキル

①固定式絶対防御結界

・結界範囲:接触箇所

・結界同時発動数:2枚

・結界発動時間:24時間

・消費サージポイント:1

②可動式絶対防御結界

・結界範囲:接触箇所

・結界同時発動数:2枚

・結界発動時間:10分

・消費サージポイント:10


暁は「聖域スキル」の検証を始め、自分の能力の特性と限界を少しずつ理解していった。


触れた部分に結界を張ることができる。同時に2枚まで展開可能であった。さらに、触れる対象として空間も該当するため、空中に結界を張ることができるのも大きな強みだ。


スキル発動には、まず「スキル解放」という段階が必要だった。このとき、暁の身体が青白く光を放つため、目立ってしまうのが気がかりだ。今後、これを抑えられるように改良することも検討しなければならないと感じた。


結界のサイズも、暁の体と同程度の結界であれば、サージポイント1を使うようだ。自分の体以上の大きさの結界を張ると、2減っていたのを確認した。また、形状にも柔軟性がある。結界の形を四角や円形、さらには曲線を含んだ複雑な形にすることも可能だった。空間に固定された結界は決して動かない。①が固定式であり、②可動式だ。③の部分が何なのかがわからない。スキルレベルが上がっていけば解放されるのだろうか。


この固定式と可動式絶対防御結界の有用性を感じ、心の中で驚嘆した。多彩な応用が効くこのスキルは、まさに強力な力そのものだった。


しかし、彼はすぐにその便利さに伴う制約を思い出した。スキルの強力さゆえに、暁は他のパーティメンバーと組むことが制限されている。また塔内でしか発動しない。これは彼が完全防御を一人で成し遂げられるというメリットの代償だとわかっていたが、それでも孤独という代償は重くのしかかる。


「便利すぎるけど…この力は神々の塔内で、俺が一人で戦うことを条件にされてるんだよな…」


あまりに強力な力ゆえに、他者との協力が封じられる。暁は自分の強さとその代償に、一抹の寂しさと少しの満足を感じつつ、前方に目を向けた。


「…まあ、誰かに頼らなくても、俺はやれる。今までもそうやってきたんだから」


決意を新たに、暁は検証を続けた。


暁はスキルの多様な可能性を探るため、他にもいくつかの検証を行うことにした。


他にも結界の透過性や強度調整の可否などを見ていった。


結界が光や音を通すかどうかを確認するため、明かりや音源を結界越しに観察し、また透過性の調整が可能かを見てみた。自分が結界内にいる状態で視覚や聴覚にどの程度の影響が出るかも調べた。結界は光をほぼ完全に透過するため視界を遮ることはなく、音も聞こえ具合も変わることはなかった。そして、結界の透明度を調整できることが確認できた。完全に不透明にすることは難しかったが、少し濃くすることで敵の視界をぼやけさせる視覚妨害として応用できると感じた。


結界強度の調整は、結界の強度を意識的に調整できるかどうかを確認するため、適当に作った状態と全力で集中した状態で結界を張り、その強度に違いがあるかを検証した。その結果、結界の強度は変わらなかった。集中してようがしてまいが、結界の硬度は変わらないのだ。しかし、防御力を下げたいと念じて作る結界の防御力は落ちていた。この応用により、暁は戦況に応じて使い分けができると考えた。


暁はこれらの検証を重ねながら、自分の聖域スキルをより深く理解し、戦闘での応用範囲を広げることができるのではないかという自信を少しずつ得ていった。そして、新たな検証結果を元にさらに改良を加え、自らのスキルを武器に、未知のダンジョンへと一歩踏み出す準備を整えていった。


サージポイントが30まで減少し、残り30枚の結界を展開できる状況になった。ここでの検証はこの辺にして、モンスターの出現を待つことにした。


その時、穴の奥から「ブーン」という音が微かに響いた。


「ん?おそらく…飛行系の昆虫型モンスターかな・・・?」


暁はスキルを解放し、手を前にかざして自分の前辺りの空間に触れ、自分サイズの結界を展開させた。そうして、襲い来るモンスターに備えた。


「ガ――――――ン!!!」


張り終えた、次の瞬間、何かが超高速で結界に衝突した。しかし、その衝撃はほとんど感じられず、衝突の勢いでその物体は周囲にはじけ飛んだ。結界に張り付いているのは、手足や羽の残骸、体液が飛び散り、地面には転がる魔核が1つあった。


「こ・・・こわ・・・」

おそらく、モンスターは高速で体当たりを仕掛けてきたのだろう。しかし、結界の硬度があまりにも高かったために、自爆してしまったのだ。


(しかし…これは恐ろしいな。常に結界を張っていないと、いつ命を狙われてもおかしくないのか…)


その思いが頭をよぎり、暁は新たな決意を抱く。この能力の強力さとダンジョンの恐ろしさを同時に実感し、これからの戦闘に備えることを強く決意した。


「さて、どうやってこの結界を設置するかだな」


(この結界は現在30枚分の結界が張れる状態になっている。しかし、張れるのは2枚・・・。形状も考えて、これを有効に使ってモンスター討伐を進めたいな・・・)


色々と考えて、これでいくことにした。


1つは自分を守るために張っておく。


もう1つは、何本もの槍のような棘にしてトラップとして少し洞窟の奥に行ったところに設置する。


トラップでダメージを与えられたモンスターの止めを刺してモンスターの死骸を横に置いておく。色々とうまく行かなければ、即逃げて、穴の入り口に結界を張る。


(これでうまく行くといいな・・・)


その後、予想以上の数のモンスターが次々と現れ始めた。小さな昆虫型モンスターから、2メートル近くある獣型モンスターまで多種多様な敵が出現した。


ほとんどの獣型モンスターは突進してくるものがほとんどで、透明のトラップが効果的に機能し、槍で串刺しにしてダメージを与え、容易にとどめを刺すことができた。


高速で移動する昆虫型モンスターには、俺の目の前に配置している透明な結界を利用して衝突を誘発させ、自爆に導くことで効率よく対処することができた。


一番手こずったのは、獲物を狙いながら慎重に移動する昆虫型モンスターだった。


この結界を用いた討伐戦術の最大の鍵は、「カウンター」にある。敵の攻撃が結界に衝突することで、そのエネルギーがそのままダメージに転換され、相手へ跳ね返される。これが自分にとって最大の攻撃手段となっている。


しかし、相手が慎重に行動し攻撃をためらうタイプの場合、この戦法が通用しない。


このタイプのモンスターが現れると、俺はもっぱら戦うのを諦め、穴から飛び出し、自分の家の地下室へ逃げ込んでいた。そして、追いかけられないようにその穴を塞ぎ、モンスターがどこかへ行くのをただじっと待つばかりだ。今の俺にはどう頑張っても、討伐できる術がないのが現実だった。


そんな中、討伐した他のモンスターの死体が次々と積み上がっていく。俺は魔核と使えそうな素材だけを切り出し、残りの部分は放置した。神々の庭では魔核を取り除いた生物の肉体は放置しておくと自然に消えていく。これは庭全体に満たされている「浄化物質」のおかげらしい。この物質は腐敗するものを分解して消し去り、跡形もなくするのだ。


この浄化物質の存在により、安らぎの街では下水施設が整備されていないにもかかわらず、川は常に清流となって流れている。また、塔の防御壁の外と海や土地が直接つながっていないにもかかわらず、この百年間、一度も汚染されることなく保たれている。本当に謎めいた塔だと思う。


夢中になり、手元の腕時計を見ると、朝5時になっていた。少し休んでおかないと学校の授業に差支えがある。


気付けば、スキル値が51まで増えていた。おそらく驚異的なスピードでスキルレベルが上がっていく。


(50体も殺したのか・・・驚異的なスピードだ・・・)


暁は穴からのそのそと出て、穴の上に結界を張った。これで穴からモンスターが出ることはなく24時間以内に戻ってきさいすれば、この家は安全だ。




スキルレベル3(51/300)

サージポイント5/60

発動条件

・塔内であること

・パーティメンバーがいないこと

スキル

①固定式絶対防御結界

・結界範囲:接触箇所

・結界同時発動数:3枚

・結界発動時間:24時間

・消費サージポイント:1

②可動式絶対防御結界

・結界範囲:接触箇所

・結界同時発動数:2枚

・結界発動時間:10分

・消費サージポイント:10



今となってはこの家中に張り巡らされている呪術具の効果も、少しであるが感じれる。家の中が暗かった為、気持ちが沈む感じであったが、少なからず呪術具の影響もあったのだ。


大した影響がない為、このまま呪術具を置きっ放しにしておく方が今後、霧夜を追い詰める為にも好都合であろうと、暁は思った。また、霧夜とまだ対峙することはできなかった。仮にも母親がパーティを組んでいた人間だ。かなりの実力者であることは分かっている。暁のような新米スキルウィーバーが立ち向かって勝てる相手ではない。


力を蓄え、勝てる算段がついたタイミングで奴と叩きのめさなければならない。


しかも、この呪術具の意味。なぜこんなことをする?これほどの多くの呪術具を用意するにしても、個人で何かを企む感じではないように思う。


「組織的犯行・・・シルバーウルフも関わっているのか?」


霧夜本人に犯行動機を聞かないことには始まらない。しかし、霧夜を追い詰める為にも力が足りなさすぎる。今は地道にダンジョン探索を進め、地力をつける以外にない。


戦いにおいて、準備がその勝敗の9割を決する。父母の言々句々が脳裏に蘇る。


「とにかく今は、情報だな。情報が無い事には打つ手が無さすぎる。幸い、こちらのアドバンテージは、相手はこちらが状況を全く掴めていないことだ。なんとか、この状況で相手を出し抜けるように盤上を整えたい」


凜には不便をかけるが、今は家の中で過ごすように伝えた。


「凜、今は家で過ごしてもらうことになる。すまないが、家の外には出ちゃいけない。霧夜にこちらの動きを悟られないように気をつけてほしい。それと凜にはお願いしたいことがあるんだ」


そのように伝え、暁は話を続けた。


「まず、家の中にある資料や手がかりを使って、霧夜に関する情報を整理してほしい。凜のスキル『真贋の眼』を使って、過去の物や霧夜の行動に関するものを調べ、何か有用な情報があれば、すぐに知らせてほしい」


「家にいる間でも、周囲に不審な動きがないか気をつけてほしい。外から誰かが様子を伺っていないか、周りの状況を確認してくれ。もし何か不審なことがあれば、すぐに報告してくれ」


「霧夜の過去の行動や心理を再調査して、どんな反応を示すか予測できるか考えてほしい。凜のスキルが覚醒した今、霧夜の考えや行動のパターンが見えてくるかもしれない。何か手がかりがあれば、それを元に次の行動を考えていくんだ」


「これから長い戦いが続くことになる。体調には十分に気をつけて、無理はしないでほしい。リラックスできる時間を作って、休養を取ることも大事だ。心身が疲れないように、しっかりと自分の状態を管理してくれ」


「どれも重要なことだ。霧夜の動きに気をつけながら、慎重に行動してほしい。凜の力を信じているからな」


暁は今考えられる全ての事を凜に伝えた。凜は静かにそれでいて力強い眼差しで暁を見ながら頷いた。


「それと、僕は今からお母さんの捜索願を出してくるよ」


「??」


凜はよく分からないという表情をした。それをよく分かった暁は説明をした。


「それは僕たちがこのダンジョンでお母さんがモンスターによって殺されたのを知っているから、死んでしまったと知っているんだ。これがもし一般家庭で誰かがいなくなって死んでしまった、と分かれば・・・まず僕たちが疑われるだろうな」


「!!??」


「考えてみな。家の中で一人の人が死んだ。そして、僕たちはその理由を明かさない。しかし、確かにその死んだ人はいない。普通に聴けば、僕たちがお母さんを殺したか何かしたんだと思うよ」


「・・・わた・・・し・・・何も・・・悪いこと・・・」凜は涙ぐみながら声を詰まらせた。


「全部公にすればいいかもしれないけど、ダンジョンの事が話せない以上、お母さんがいきなりどこかへ行ってしまった、と言うのが最善だと思うんだ。正直、あの正気を失った母さんの事情を知っている人たちなら、いきなりどこかへ行ってしまうことも・・・、わかるはずだ」


暁はあまりに自分の言っている事が辛いものであっため、耐えきれずに上を向いた。涙がまた零れ落ちそうになっていた。


凜もコクと頷いた。


「あ、あぁ。そうだな。シルバーウルフギルドに捜索願を出すよ。そうすれば、霧夜にも伝わるだろう。霧夜に隠し通せることはないだろうからな。凜、留守番をお願いな」


「いって・・・ら・・・しゃい」


その言葉を聞いて満足した暁は一人シルバーウルフギルドへ駆けていった。



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