第6話 神々の塔
今、時雨暁が立つこの世界が形作られるまでには、苛烈な戦いと苦難の歴史があった。
100年前、突如として世界各地に見たこともない生物が現れ、人々を襲い始めた。これらの生物は「モンスター」と呼ばれ、次第に頻繁に出現し、多くの都市を壊滅させた。各国政府は軍を派遣して応戦したものの、通常兵器では倒せない強力なモンスターも多く、戦況は絶望的だった。人々は防ぎきれぬモンスターの猛威に、為す術もなく都市を失っていった。
すると、世界中に数十本もの巨大な青い塔が姿を現した。その塔は、後に「神々の塔」と呼ばれるようになった。その内部を探索すると、さらに強力なモンスターが潜み、この新たな脅威を前に、人類は生存を賭けた対抗策を編み出さざるを得なかった。
巨大なモンスターたちが都市を蹂躙する中、核保有国はついに核兵器を投入し、大規模な戦争が勃発した。人々は核シェルターへ避難し、命を繋ぐことに必死であった。核戦争により多くの都市は壊滅し、大地は汚染され、人類は滅亡の淵に立たされることになった。
しかし、逃げ遅れた人々の中でも「神々の塔」から半径約200キロ以内に住んでいた者たちは、モンスターや核の余波といったすべての脅威から奇跡的に守られていた。後に、塔の周囲には透明の防御壁が張られていることが判明し、その地域の住民たちは地球上で唯一の生存者となった。塔の周辺にはモンスターが出現せず、塔内部のモンスターも外へは出てこなかったため、この地域は完全な安全地帯となった。
一方、核シェルターに避難した人々は、核の灰や黒い雨が地表を覆い尽くし、食糧が尽き始めるとともに、恐るべき大量死が発生していった。
やがて核の冬が訪れ、人類は数十箇所に存在する青い塔の周辺に限られたわずかな生存者を残し、ほとんど絶滅状態となった。
生き残った人々は新たな資源を求め、塔の内部を探索し始めた。塔の内部は異次元のように構造が変化し、探索者が挑むたびに新しい姿を見せた。初層には、まだ大人10人ほどで対処できる比較的弱いモンスターが生息しており、人々は木材や食料などを確保するためにモンスターを討伐し続けた。その過程で、不思議な能力「スキル」を発現する者が現れ、「スキルウィーバー」と呼ばれる新たな存在が生まれた。スキルウィーバーたちは塔の探索を進める中で少しずつモンスターに対抗する力を得ていった。
こうして100年が経ち、「神々の塔」は、荒廃した世界における人類最後の希望の拠り所となっている。塔内部の資源や特殊な環境が、荒廃した地上で生きられなくなった人々の命を支えていた。
日本に発生したこの安全区域には、最初は800万人ほどの人々が住んでいたが、電気やガス、水道、医療、治安維持など、全ての社会インフラが止まり、資源が枯渇し、政治体制が完全に崩壊した。これにより社会全体に大混乱が巻き起こった。安全区域は、無政府・無法地帯と化したのだ。モンスターの脅威や核の灰がない平和で安全な区域であるにもかかわらず、人々にとっての次なる脅威は自分たち同士だった。生存のために戦い、殺戮や略奪が横行した結果、最初に病気の者や、年老いた者、力の無い者たちから次々に殺され、死んでゆき、最初の1~2年で人口は500万程にまで急減した。
やがて、自警団や小規模な支配体制が形成され、その中心には塔内部のモンスターを狩る者たちが存在した。そこから、特異な能力「スキル」を持つスキルウィーバーが現れ、街を掌握するようになった。
それから20年が過ぎると、スキル覚醒には「魔核」が必要であることが判明。塔から得たスキルの見返りとして治安維持や探索活動に従事するようになり、街はわずかながら平和と秩序を保つことができた。しかし、防御壁の外は依然として巨大なモンスターが跳梁跋扈し、核汚染が進行した荒廃した地球が広がり、核の冬は今も世界を暗く覆っていた。防御壁の外はもはや人間が住める環境ではなく、時折降り注ぐ放射性灰がその危険さを実感させた。
そして、100年の歳月を経て、人々は少しずつ秩序を取り戻し、スキルウィーバーを中心とした新しい社会が形成された。あまりに多くの犠牲を払い、今の安定した社会となった。今では人口も300万ほどまで落ち込んでいた。塔内部での生活が日常となり、わずかな外界との接触を続けながらも、再び大地が平穏を取り戻し、いつか外で自由に生きられる日が来ることを、人々は密かに夢見ていた。
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