第28話 コガネの問題がある実力
姿を変えたコガネが俺の目の前に現れる。
姿は狐獣人である。
俺が理想とした狐獣人である。
髪の毛は金髪のストレート。頭の上に狐の耳がある。顔立ちは少し幼さを感じる。しかしそれは人間の顔立ちだ。
背は160センチくらいで、胸は小ぶり。瑞々しい張りのある肌をしており、お尻からは九本の尻尾が見える。
地球の創作物でよくある狐獣人である。
俺はマリアを見る。
「主様の性癖に合わせてみました」
マリアは胸を張って笑っている。
本当にいい仕事をした。これは股間にくる。
「ご主人様?」
状況にあまりついてこれていなかったトモエが、俺に話しかけてきた。
「……何をなさるつもりですか?」
そんなことは決まっているじゃないか!
「トモエ!しばらくの間、誰も入ってこないようにしてくれ!」
俺は媚薬をガスにしながら、トモエに命令する。
幸いここは孤児院で隔離された部屋である。
管理者もいずれ戻ってくるかもしれないが、しばらく楽しむ時間くらいはあるはずだ。
《心配するな。管理者はもう二度と戻ってくることは無い》
コピーの言葉を受けて、俺はゆっくりと楽しむことを決めた。
ここには理想の獣人がいる。
我慢する理由など、どこにもない。
なら俺は俺の本能のままに突き進むのみ。
「コガネ!トモエ!マリア!
みんなで絆を確かめ合おう!!」
妖精の力で結界を張りつつ、俺たちは4人で裸の付き合いをすることにした。
******
さて倫理とか全て飛ばして、俺たちは楽しんだ。
年齢?ここは異世界だ。地球の法律は適用されない。
あの後、孤児院は大変だった。
管理者が急な病で亡くなったらしい。その引継ぎなどで職員は大慌てになっていた。
俺たちはコガネの礼もあり、多少の寄付をした後に孤児院を去ることにした。
名目は管理人に対するお悔やみの気持ちである。
ちなみにコガネたち9人の狐獣人については、全員が亡くなったことにして報告をしている。全て管理人が片付けたと言えば、職員は納得した。
普段から管理人は、色々やっていたようだ。
コガネ?彼女は既に姿が違う。同一人物と分かるものは、事情を知っている俺たちだけだ。
これで俺たちには、魔法使いの仲間が加わることになった。
「それでコガネの魔法使いの実力は、どの程度のものなのですか?」
トモエがマリアに対して問い掛けている。
ここは帝都の外にある森の中。妖精たちに見張りをさせて、俺たちはのんびりと話し合っていた。
「どうして私に尋ねるのですか?」
マリアは無表情のまま、トモエを見る。
「コガネはあなたが改造した魔物でも獣人でもない存在。
コガネ自身よりも、あなたのほうが詳しいのではないですか?」
確かにそれは一理ある。話の話題となっているコガネ自身は、トモエとマリアを見て慌てている。
そんな様子を見れば、コガネよりもマリアに質問するもの当然だろう。
ちなみにコガネは狐獣人、俺の理想とする狐獣人の姿である。
より背徳感を増す姿にするために、首には奴隷であることを示す首輪をつけている。
「そう考えるのも仕方ありませんね。
一応言っておきますが、コガネ自身の力をコガネは理解しています。
その程度の知識は与えています。
その上でコガネの魔法使いとして実力ですが、主様と協力すれば国レベルの魔法も使用可能です」
「国レベル?」
「魔法の威力の目安ですね。
倒せる対象を具体化したものです。弱いものだとゴブリンレベルとかゴブリン以下とか言われます」
……その例えでいうと、コガネは国を亡ぼすレベルの魔法が使えるということか?
俺はコガネを見る。
「使徒様。確かに最大威力なら、それも可能です。
しかし発動までに時間がかかり過ぎます。7日間魔法の詠唱を行う必要があります。
無詠唱や通常範囲の詠唱で使えるのは、せいぜい村レベルくらいです」
コガネはそういってニッコリと笑った。
……村を滅ぼす程度の魔法を、使えるだけで十分に恐ろしい。
かなりの実力者ということにならないか?
トモエを見ると、トモエも声を出せずにいる。
「……それでも十分に強いと思うな」
俺は何とか声を絞り出す。
「そうですか?
……そうかもしれませんね。
僕自身が改造によって、少し変わってしまったのかもしれませんね」
ニッコリと笑うコガネのことが、少し恐ろしいと思えた。
「それで……こいつらはどうしますか?」
コガネの足元には複数の冒険者がいる。彼らの目的は、簡単に言えば金と女である。
つまり俺たちが冒険者ギルドで手に入れた金貨と、俺の奴隷であるトモエたちが目的で襲ってきた。そして返り討ちにあっている。
恐らく冒険者ギルドから、俺たちの情報が洩れているのだろう。
ついでに言えば俺たちが訪れた奴隷商も、俺たちの情報を流していると思う。
特に奴隷商に口止め料を払っているわけではない。なら奴隷商は俺たちの情報を売っていても、おかしいことは何もない。
帝都内部での襲撃が無かったのは、時間が足りなかったのと俺たちが動き回っていたからだろう。もしかしたら町の治安を守る兵士に対しての根回しが、間に合わなかったからかもしれない。
「……マリア。どうしたい?」
俺にとってこいつらは、ただの敵である。しかしマリアにとっては資源となり得る。
ならマリアが処分方法を決めるべきだろう。
トモエも口を挟んでこないところを見ると、特に異論はないようだ。
「……そうですね。改造して王国へ送り付けましょう」
こうして彼らの運命は決まった。魔物に変えられて、王国に侵入。内部での破壊工作が、彼らの仕事だ。
「帝都から一刻も早く離脱するべきですね」
先程まで固まっていたトモエが口を開く。
「……どういう意味です?」
マリアはトモエを見る。
「彼らは冒険者でも下っ端ですが、帝国の貴族が混じっています。
彼らを始末した以上、帝国か冒険者ギルドがそれなりの戦力を送ってくる可能性が高いです」
それを聞いてマリアが考え込む。
「……なら彼らの姿はそのままにして、嘘の情報を流させるようにしておきましょう。
見破られる可能性もありますが、時間稼ぎにはなると思います」
そういうと早速マリアが倒した冒険者たちを改造し始める。
「僕としてはもう少し魔法の練習がしたいですね」
今回の襲撃は妖精が大部分を倒していた。残りはマリアとトモエで倒してしまった。
そういう意味ではコガネはまだ敵と戦っていない。
どの程度の魔法が使えるのか実際に確かめる意味を込めて、魔物との戦いを経験するのもいいだろう。
「とりあえず当初の予定通り、エルフドワーフ連合国に向かうということでいいか?
その途中でコガネが中心に魔物と戦うということにしよう」
俺が提案した方針は、特に異論も無く仲間に受け入れられた。
******
帝都からエルフドワーフ連合国に向かう街道から外れた森の中で、俺たちはゴブリンと遭遇していた。
「『炎よ』」
「!『水』の妖精よ!」
コガネの声を聞いた後に、慌ててトモエが妖精の力を借りる。
俺はコガネとトモエの魔力を回復させながら、結果を見る。
ゴブリンはコガネの魔法の炎によって、塵も残さず燃え尽きていた。
ついでに森の木々も萌えていた。
少し遅れて発動したトモエの妖精の力によって、森の火災は消火される。
「……コガネ!正座!」
トモエの怒りの声が森に響いた。
コガネはいわれた通り、森の中で正座を行う。ただし自分の尻尾を下に敷いて、足の負担を減少させていた。
「なんですか、あの火力は!
ゴブリン程度に使うような火力じゃないですよ!?
しかも森まで燃やしています!」
トモエはコガネを叱ると、マリアを見た。
「……ドラゴンと戦う予定だったからね。
かなり強い火力を出せるようにしたんだ。
ただちょっとばかり、火力が強過ぎたようですね」
マリアは苦笑いをしていた。
「……コガネの魔法は威力があり過ぎですね。
しかも『火』だと強い場合の危険が大きい。
他の属性は使えないのですか?」
怒られて俯いていたコガネが顔を上げる。その虹色の目に涙を浮かべていた。
「他の属性は使えます。尻尾と同じ九属性の魔法が使えます。
……ただ出力はどれも同じように強力です」
コガネの言葉に、トモエはマリアを見た。
「……折角だし、かなり強力な改造をしました。
私たちの仲間になるのですから」
マリアの言葉を聞いて、トモエは少し顔が引き攣っていた。
「……ものには限度というものがあるでしょう」
トモエはガックリと肩を落とした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます