第26話 新たな仲間が全然見つからない



奴隷商では俺の望む奴隷が見つからなかった。

このまま闇雲に探しても、見つかる可能性は低いだろう。

そこで俺は秘密兵器に頼ることにする。


《つまり俺のことだな》


もちろんコピー様だ。

このまま無駄に探す展開なんて、大邪神も望んでいないはずである。

だから俺たちの探し求める奴隷について、導いて欲しい。


《まず最初に言っておくが、先程の奴隷商はかなり誠実な対応をしていた》


というと?


《値段は適正な価格を示していたし、お前に紹介できる奴隷を隠してもいなかった。

 お前について『大邪神の加護』で少し不快を感じていたが、接客面はまともな部類と言える》


なるほど。そういわれると、扱いはまともだったか。

トモエの呟きのような質問に対しても、キチンと答えてくれていたしな。


《まずお前の求めるような魔法使いの奴隷は、存在しない》


えっ!?


《そもそもこの世界の魔法使いは、ほとんどが人間だ。

 わずかにいるのが獣人の魔法使い。後は魔族だな。

 魔族は論外とすると、人間か獣人になる》


そこは俺も理解している。だから俺は獣人の魔法使いを探していた。


《魔法使いになるような獣人が奴隷になっているケースは、ほぼない。

 あったとしてもお前に手が出せるような値段ではない。

 適性がある奴隷についても、同様だ》


ならどうすればいい?


《魔法使いを求めるなら、人間の奴隷だろう》


しかし俺には『大邪神の加護』がある。


《『眷属化』をすればいい。

 そうすれば『大邪神の加護』の問題は解決する》


『眷属化』?


《そうだ。『眷属化』すれば、『大邪神の加護』の不快感は消える。

 ついでに不老化もついてくる。ただしお前とは違い、不死ではない》


何か問題はないのか?『眷属化』によるデメリットは?


《……そうだな。お前と同様に子を成す能力が、消え去るくらいか》


えっ!?俺、子供作れないの?


《不老不死だからな。必要ないだろ?

 ずっと生きていけるなら、子供は必要ではない》


……でも俺のマジカル〇〇〇からは、〇〇が出るぞ?


《マジカル〇〇〇の能力として確かに出すことはできる。

 でも種なしだ。子供は作れない。

 ……そういえば、トモエとマリアはどうする?

 眷属にするか?》


えっと……。

俺は悩んだ。どうするのが正解だろうか?


《当人に聞いたら眷属して欲しいそうだから、眷属しておいたぞ》


えっ!?


「ご主人様。私は死ぬまでご主人様にお仕えいたします」


俺はとりあえず泊まった宿屋の部屋の中で、ベッドの上に腰かけている。

トモエは上から俺を覗き込むようにして、俺の前に立っていた。

その隣にはマリアもいる。


「主様。私も同じ気持ちです。

 どこまでもお供いたします」


二人から真っすぐに見られて、俺は少し照れる。それに二人の気持ちがすごく嬉しい。

俺はそれを誤魔化すように二人の手を取ると、ベッドの上へ二人を引っ張る。

その後は媚薬を使いながら、二人が気を失うまで攻め続けるのであった。



******



それで結局のところ、人間の奴隷を買うしかないということか?

意識が覚醒した俺は、心の中でコピーに話しかける。


《そうだな。それが一番だろう。

 買った人間の奴隷をマリアに改造させる。

 それが最善だと俺は思う》


……うーん。何か釈然としないが、他に方法もないか。

今日は人間の奴隷を見て回ることにしよう。

俺はそう決意して、目を覚ますことにした。

左右を見れば、二人の柔肌が見える。

外はまだ暗いように見えた。うっすらと光が見えたが、気のせいにしておく。

俺は両手で色々楽しんだ後に、もう一度眠ることにする。

やはり二度寝は最高だ。

俺は幸せの海に飛び込むことにした。



******



俺たちは人間奴隷を扱う店にいた。

今回の奴隷商は少し痩せ形の犬獣人の男性だ。犬種は何だろう?かなり毛深い犬の獣人で、両目が隠れているように見える。


「……いらっしゃい。何の用だい?」


人間の奴隷商よりも言葉遣いが優しいように思える。

『大邪神の加護』の影響は、やはり大きいのだなと感じた。


「奴隷を買いに来た。

 創造神を信仰している者は除いてくれ。

 出来れば大邪神を信仰している奴隷がいい」


俺はトモエたちと話し合って決めた奴隷の条件を、奴隷商へと伝えた。

やはり創造神を信仰している者は、仲間にすることは厳しい。

『眷属化』も嫌がるだろう。

媚薬とマジカル〇〇〇で言うことを聞かせることはできるが、最終的に信用することが出来ない。

俺たちの邪魔をする可能性があると思ってしまう。

そのため創造神信仰を持つ者は、絶対に奴隷にはできない。


「分かった。それで予算はどれくらいだ?」


「金貨200枚。出来れば女性の奴隷が望ましい」


「……少し待て。在庫を見てくる」


そういうと、奴隷商は奥へと入っていく

店番として同じ犬種の若い犬獣人の男性が、俺たちの前に残されていた。


「……少しお待ちください。

 お客様が気に入る奴隷が、きっと見つかると思います」


犬獣人の表情は少し分かり難かったが、きっと営業スマイルを浮かべているのだと思う。


「……ああ、ゆっくりと待たせてもらうよ」


そういうと俺はトモエとマリアへと向き合った。

待っている間に何を話していいか、全く分からない。

トモエとマリアを見て時間を潰そうと、俺は考えるのであった。


「お待たせしました。準備が整いましたので、ご案内します」


俺は戻ってきた奴隷商に連れられて、奴隷を見に行くことにした。

しかしそれが失敗であった。

俺は『大邪神の加護』を持っている。そのため人間の奴隷たちは、俺から不快感を感じていた。

奴隷たちはそのことを隠すことなく、俺と対応した。


「……悪いがあんたの奴隷はなる気はない。

 他のやつを当たってくれ」


これがマシな対応である。奴隷を見に来た俺が、奴隷から罵詈雑言を浴びていた。

奴隷商も最初は驚いていたが、同じことが続くと俺のことを怪しんだ。


「……お客様。何かご事情があるようですね。

 一度外で話しましょう。

 ここだと奴隷たちが騒ぎ出しそうです」


奴隷商は笑っているが、有無を言わせないような凄みを感じる。

俺はその様子から、首を縦に振るしかなかった。



******



「……なるほど。『大邪神の加護』持ちですか。

 勇者ではないが、持っているということですね。

 ……それであのような対応ということですね」


奴隷商の犬獣人が大きく頷いていた。

俺は正直に『大邪神の加護』を持っていることを話した。

獣人である奴隷商が、創造神を信仰しているとは考えにくい。

特に問題もないだろう。


「……それで大邪神を信仰している奴隷はいるか?」


俺はまだ奴隷を見つけることをあきらめていない。


「難しいですね……。

 私たちは奴隷を仕入れるときに、信仰を確認しませんから。

 先程確認しましたが、特に大邪神信仰の奴隷はいませんでした。

 何も信仰していない者を何人か連れてくることは可能ですが、先程の様子ですとあなたの奴隷になることを酷く嫌がるでしょう」


奴隷商は言外に売る奴隷は無いと言っている。

確かに奴隷が拒絶しても、その奴隷を買うことはできる。

しかしそんな奴隷は使い物にならない。

こちらに対して反抗的な奴隷は、戦闘奴隷として役に立たないのだ。


《媚薬とマジカル〇〇〇なら屈服させることが出来るぞ》


コピーがそういっているが、俺はこの奴隷商から奴隷を買う気が起きなかった。

それが全てだ。

俺たちは別の奴隷商の元へと、行ってみることにした。



******



俺たちは複数の奴隷商を尋ねたが、あまりいい結果にならなかった。

人間で大邪神を信仰するのは、かなり珍しい。そのため大邪神を信仰している奴隷は、見つからなかった。

ついでに俺たちが買いたいと思えるような奴隷もいなかった。

人間以外に対して、差別的な奴が多い。男性だったり、年齢が高い奴だったりした。

決め手に欠ける奴らばかりであった。


「……そんなに大邪神を信仰している奴に会いたいのなら、教会に行ったらどうだ?

 奴隷じゃないが、大勢いるぞ」


最後に訪れた奴隷商が、そのようなことを言っていた。

奴隷商巡りも飽きてきたところである。

俺たちは大邪神信仰の教会に向けて、歩いていた。


「……教会には孤児院が併設されている場合が多いです。

 もしかしたら、有望な魔法使いの卵がいるかもしれませんね」


トモエが希望的にな言葉を口にする。

俺たちは少し疲れていた。

回復魔法で回復しているのだが、なかなか見つからない状況で少しウンザリしている。

トモエも見つかって欲しいという希望を込めて、口にしているのだと思う。


「そうだな……。

 少し奴隷に拘り過ぎていたのかもしれないな」


俺たちは大邪神を信仰している教会へ向けて歩いている。

ここで一番気を付けないといけないことは、創造神を信仰している教会と間違えないことだ。

間違えれば俺は確実に襲われる。かなり酷い目にあうので、そこが一番の注意点だろう。

目的の教会が見えてきた。辺りには人間ではない種族が多くいる。

どうやら間違っていないようだ。

俺は大きくため息を吐いた。



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